典型的な日本人の英語としてとりあげられるのが「mansion(マンション)」です。和製英語ではなく、英語では「大邸宅・豪邸」を意味する言葉なので、カタカナからイメージする建物とは大きく異なります。
またapartも言葉としては存在していますが、建物を指すならば省略せずにapartment(アパートメント)と言う必要があります。
日本独自に使われてしまっている英語ですが、あらためて整理してみたいと思います。
この記事の目次!
mansion(マンション)
mansion(マンション)という英単語は確かに存在していますが、英語では「大邸宅、豪邸」を指す言葉になります。
Rich people live in mansions.
お金持ちの人々は豪邸に住んでいる。
Many successful Hollywood actors live in mansions.
多くの成功したハリウッド俳優はマンションに住んでいる。
何部屋もありプールなどもついている、ちょっとしたお金持ちレベルではなく、セレブが住むような大邸宅です。グーグルの画像検索を使えばイメージがつかみやすいです。

「mansion」での検索結果
日本では不動産業者などが「アパート」についた賃貸住宅や高級感のないイメージを嫌って1960年代から言い換えとして「マンション」を使い始めた背景があるようです。
日本に住んでいたイギリス人の友達とロンドンで会って住宅の話をしていた時に、自然とマンションという言葉が出てしまうので「Japanese mansion」と言ったら少しうけていました。日本の事情を知っている人には、mansionとマンションの言葉が持つギャップが小ネタにはなっている感じがあります。
日本に来る留学生のために”マンション”を用意しておいた、といったやり取りの後で来日してがっかりされる笑い話もよくあります。
tower mansion(タワーマンション)
タワーマンションは言葉としては成立しますが、グーグルの画像検索にかけてみると本当に「塔」のついた豪邸の写真が出てきます。
もしくは「Tokyo」などの説明がついたページで、日本の不動産業界が使う用語としての港区などにある「タワマン、タワーマンション」が出てきます。
そもそもmansionの意味が違いますが、ある程度は日本での独特のmansionの使い方が認知されている感じはあります。
condominiumとapartmentの違い
カタカナのマンションにあたるのは英語では「apartment(アパートメント)」または「condominium(コンドミニアム)」です。集合住宅の意味で、私たちが想像するカタカナのマンションに近いものです。
注意点としてはカタカナのように「apart」と省略すると「離れて、離ればなれで」といった副詞や、「a part」のように別の単語になってしまうので、apartmentとちゃんという必要があります。
一般的にapartmentは賃貸しているものに対して、condominium(略してcondo/コンドー)は分譲して所有しているものに使う違いがあります。
She lives in an apartment.
She lives in an apartment building.
彼女は(賃貸の)集合住宅に住んでいる。
また正確にはapartment buildingが建物を指し、apartmentは個々の部屋を指しています。文脈によっては使い分けが必要になります。
She lives in a big apartment in a small apartment building.
彼女は小さな集合住宅の建物の大きな部屋に住んでいる。
○ He owns a ten-story apartment building downtown.
○ He owns a ten-story apartment downtown.
彼は繁華街に10階建のアパートを所有している。
10階建と書かれていて建物全体を指していると分かりやすいため、apartmentのみの表現でもオッケーです。
○ A fire broke out in an apartment building north of the city.
○ A fire broke out in an apartment north of the city.
火事がその都市の北のアパートで起こった。
どちらも可能ですが、apartmentだけだと建物全体が火事になったのか、その建物の一部屋だけが火事になったのかがはっきりしません。
condominium / condoの意味
英語のcondominium(コンドミニアム)、略してcondo(コンドー)は個々に分譲することを前提に作られた建物のグループで、それぞれに所有者がいるものを指します。
発音・読み方は以下の音声を参考にしてください。
condominium【kɑ̀ndəmíniəm】
condo【kɑ́ndou】
基本的にcondominiumとは建物の形の問題ではなく、どのように作られてどう売られているかの形態を指しているといえます。
一般的に以下のような目的・条件で建てられたものを指します。
・一人の人間(会社)によってまとめて作られ売買を目的とした建物群
・それぞれ個々の部屋・建物に所有者がいる
・似たような部屋、建物が並んだグループ
これらの条件を満たしていればコンドミニアムになりえます。ちょうど日本語の「分譲住宅・分譲マンション」に近い考え方です。
基本的にはcondominiumは契約や目的の概念であって、外から建物を見ただけではわからないものです。日本語でも「分譲」と「賃貸」の差は関係者の説明がないとわからない話です。
She lives in a condo.
She lives in a condominium.
彼女は自分で所有するコンドミニアムに住んでいる。
Eventually she bought a condominium.
ついに彼女はコンドミニアムを買った。
日本の「分譲マンション」と思っても間違いではないと思いますが「個々に所有者がいること(賃貸ではない)」と「似たような建物・家のグループ」であることなどが条件なので、日本のマンションタイプではなく、英語ではtownhouseと呼ばれる建物もコンドミニアムの一種になりえます。
I live in a townhouse complex.
私はタウンハウスに住んでいる。

townhouse
横の家とつながっており、同じ構造の家が並ぶ形です。ここでのcomplexはシネマコンプレックスなどと一緒で複合を意味します。
日本の分譲住宅は個々には一軒家ですが、同じような家がその一帯・区画に建てられてそれぞれ分譲されることがあります。
一般的にはhouseでいいと思いますが「ある1人の不動産業者によって、同じ構造の建物がいくつか売買目的で建てられ、それぞれに所有者がいる」という意味ではコンドミニアムだともいえます。
また「timeshare condo」と呼ばれる形式もお金持ちの間ではあり、別荘のような感じで共同所有するコンドミニアムです。交代で使います。
I have a timeshare condo in Aspen, Colorado.
私はコロラドのアスペンにタイムシェア・コンドーを持っている。

timeshare condo
日本でいう「別荘・ロッジ」に近い感じの建物です。ちょっとバカンスに行った際に、そこで休暇を過ごすことができます。
ここに書いた説明は英単語の話であり、日本の不動産業界、旅行業で用いられる「コンドミニアム」の定義とは別の話です。旅行業界で用いられる宿泊施設の「コンドミニアム」はこの「timeshare condo」の意味に近く、ホテルの部屋と違いキッチンなどがあるロッジ風の家などを指しているようです。
houseとhomeの違いについては以下の記事をご覧ください。
apartmentをhouseと呼ぶのは不可能でも、homeと呼ぶことは可能です。
イギリス英語のflat
イギリスでは集合住宅を指してflatが使われるのも有名です。
She lives in a flat.
集合住宅に住んでいるといった意味になります。なぜflat(平ら)というのかといえば、キッチンやトイレ、部屋などが同一の平面にある、階による段差がないからという説がありました。
flatには平らであること以外に、タイヤのパンクを表すなどいくつかの意味があるのでまとめています。
Google画像検索による比較
グーグルの画像検索を使えば、おおよその建物のイメージをつかむことができます。参考までに掲載しておきます。

「apartment」による検索結果

「condominium」による検索結果

「flat」による検索結果

「house」による検索結果
世界の「apartment(アパート)」
上の画像検索のhouseを見ても、海外のhouseと日本のhouseでは住宅事情もあって外観からして違います。日本の都内でいえば豪邸レベルのhouseになっています。
同じように「apartment + 都市名」で検索してみると、世界各国の都市の住宅事情が垣間見えて面白いですね。全体的に広告用の大手サイトの目立つ物件が検索で拾われている可能性も高いので標準的なアパートだとは思えませんが、内装などや窓から見える景色にもお国柄が出ます。
日本の都心部は決して広いとはいえませんが香港などは都市国家で面積が狭いため東京よりも住環境は悪いといわざるをえません。

ニューヨーク

パリ

ロンドン

香港

東京

ドバイ
アメリカでは独身者が住むような集合住宅には「bachelor apartment」や「studio apartment」があります。日本でいう「ワンルームマンション」に近いものですが、住宅事情が違うので「ワンルーム」でもかなり違います。
こういった住宅の広さを表す場合には日本ではLDK表記が用いられますが、英語圏ではベッドルームの数などで広さや規模を簡易的に表現します。
これについてはroomの解説ページにまとめています。roomには「部屋」の意味もありますが、「スペース・余地」の意味もあるので注意が必要です。