「I’m fine, thank you. And you?」と今でも教科書で習うのか? ネイティブは言わないのか?

「I’m fine, thank you. And you?」と教科書で本当に習うのか? ネイティブは言わないのか?
 

公開日: 最終更新日:2021.08.19

「How are you?」「I’m fine, thank you. And you?」のやり取りは、最近は「ダメな教科書英語の見本」みたいな扱いを受けるケースがあります。ネイティブはそんな挨拶しないよといった意見です。

今回は「How are you?」「I’m fine.」をとりまく意見の中で前半部分では「本当に今でも中学校で習うのか?」を入手可能な教科書を買って調べてみました。

後半部分では「ネイティブスピーカーはI’m fineとは言わない」という部分を検証してみました。

中学校の教科書で本当に「How are you?」「I’m fine.」を教えているか?

中学校の教科書で本当に「How are you?」「I’m fine.」を教えているか?

「How are you?」と聞かれた場合に「I’m fine, thank you.」あるいは「I’m fine, thank you. And you?」みたいな受け答えを中学校の頃に英語の初歩の初歩として習ったかもしれません。

「Thank you」が何に対しての「ありがとう」なのかといえば「Thank you for asking.」のことであって「尋ねてくれて、気遣ってくれてありがとう」みたいな意味です。

ここでは「I’m fine / Fine」の部分を中心に取り上げてみます。

例文

A:How are you?

お元気ですか?

B:I’m fine, thank you. And you?

元気です。ありがとう。あなたはどうですか?

「ダメな教科書英語の見本」みたいな扱いをされますが『「How are you?」「I’m fine, thank you.」と中学校で基本として習う』というのは事実なんでしょうか? 教科書も進化しているので古い時代の記憶の産物ではないのか? といった疑問があります。常識的に考えて教科書もネイティブのチェックが入っているはずであって、もしも「I’m fine」がよほど時代錯誤な表現ならば校正されるはずです。

これについては各教科書を調べればわかるので買ってきて調べてみました。それぞれ2019年の中学1年生向けの教科書です。中学1年生の英語は「出会い」がテーマになっているので、どうしても挨拶関係からはじまっています。

NEW HORIZON(ニューホライゾン)/ 東京書籍

まずは定番中の定番である東京書籍の『NEW HORIZON』のEnglish Course 1です。私もニューホライゾンを使っていた記憶があります。ちょっと前にこの教科書に登場するアメリカ人のエレン先生がかわいいと評判になっていましたが絵柄も現代的になっています。

「I’m fine, thank you.」を調べてみるといきなり登場していました。4ページ目です。

ニューホライゾン

4ページ目にいきなり登場とかわいいと評判のエレン先生

こういうのをまさに「教科書通り」というのではないでしょうか。定番中の定番のやり取りが一字一句違わずに載っていてちょっと驚きました。

エレン先生ではないですが、以前の『NEW HORIZON』の登場人物のその後を勝手に描いた毒のあるスラング中心の英語テキスト『DARK HORIZON』も発売されています。

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NEW CROWN(ニュークラウン)/ 三省堂

こちらも定番の教科書である三省堂の『NEW CROWN』です。この教科書に限りませんが、英語圏以外の外国も扱われており、中国やインドからの転校生がいたりと国際色が豊かになっています。

NEW CROWN /ニュークラウン

60ページとかなり中盤に登場します。

少し考慮すべきは、ニューホライゾンが状況設定なしの会話だったのに対して、ニュークラウンでは中国人の留学生メイリンと岡先生との廊下での会話である点です。先生と生徒で少しフォーマルな場面だとはいえます。

「I’m fine」と「Fine」は、一般的には「I’m fine」と答えたほうが丁寧です。

ニュークラウンの状況は先生から生徒への返事なので「Fine」だけになっています。日本だけに限らず、アメリカでもカナダでも先生と生徒の関係は友達ではないので生徒が答えるならば「I’m fine」が無難だといった意見でした。

『NEW CROWN』を見てて全体的に実用性に力を入れている感じがしました。別のセクションですが普通は無難な自己紹介で終わるはずの部分でも、本文の会話にいきなり「Pardon?」が入ってて、名前が聞き取れなかった場合での対処方法が盛り込まれています。

TOTAL ENGLISH(トータルイングリッシュ)/ 学校図書

あまり知らない教科書でしたが、パラパラと見た感じは絵も内容も無難でオーソドックスな印象です。冒頭には世界のこんにちはがあり、クラスルームのイングリッシュなどが紹介されています。

「How are you?」「I’m fine, thank you.」を調べてみると155ページ中の45ページ目に出てきます。

45ページ目ぐらいに登場します。

特筆すべきはHow are you?の返事で『「Not bad.」は親しい間柄で使われる表現です』と注釈が入っている点でしょうか。

ネイティブに意見を聞いてみると確かに路上の英語のような感じもあるねといった意見や、広く使われているのであまり「親しい中でしか使ってはいけない」みたいな気遣いは特にないといった話がありました。

路上で使う場合には「Not bad」のnotがはっきり聞こえなかったりすると誤解されるので少し注意してもいいかなぐらいの意見でした。

SUNSHINE(サンシャイン)/ 開隆堂出版

絵柄も古くもなく、現代に寄せているわけでもなく無難な感じです。特徴としては読む・聞く・話す・書くの4項目での進捗が測れる「英語でできるようになったことリスト」がついている点です。

また英語カルタのように切り離して遊んだり暗記したりできるような、立体的な教科書になっています。

6ページ目に登場しています。

6ページ目に登場していて「How are you?」「Fine, thank you.」のほかに答え方のバリエーションとして「Not bad / I’am OK / So-so」が紹介されています。特に親しい間柄で使われる表現だといった指摘はありません。

「So-so」については「良くも悪くもありません」とはっきりいっている状態です。「I’m fine」にも良いとも悪いともいえない曖昧な要素がありますが、少なくとも言葉の上では「良い」と言っています。「So-so」は言葉の上でも「良くも悪くもない」と明言していることになります。

日本語の「まあまあ」「ぼちぼち」とは使われる言葉の感覚が少し違って、無難に終わる挨拶であえて「So-so」を選択すると暗に悪いことをほのめかしている、相手に心配されてしまう要素もある答え方だといえます。知り合いのイギリス人は「So-so」はあいさつの返事としてはあまり使わないといっていたので、使わない人は使わないんだろうと思います。

「I’m OK」は「I’m fine」よりも同じぐらいかほんの少し上の感じもありますが、近い意味で使われている表現です。

ONE WORLD(ワンワールド)/ 教育出版

絵柄はわりと現代に寄せている感じの教科書です。赤い下敷きで隠せる形式の問題集がセットになっており、教科書本体と切り離せるのが特徴です。

2ページ目にさっそく登場しています。

2ページ目でオーストラリア人のキング先生と日本人の男の子の会話の並び替え問題になっています。以下の選択肢を流れにあうように並び替えます。

「Good morning, Kenta」「How are you?」「I’m fine.」「Thank you.」「How are you, Ms King?」「I’m fine, too.」「Thank you」

結果的に先生も日本人の男の子も「I’m fine」と言っていることになります。

COLUMBUS 21(コロンブス21)/ 光村図書

この教科書は絵の面積は大きく、見開きでドンと登場したり迫力があります。また絵も少しアートな感じがしてデザインとしては独創的な教科書です。

主要人物に韓国人の男の子がいたり、ガイド役にうざぎと猫のキャラがいたりと、特徴が出ています。「How are you?」「I’m fine.」はさまざまな挨拶の中の1つで紹介されています。

5ページ目の挨拶で登場

SUNSHINE(サンシャイン)の教科書もそうですが、カナダ人のスティーブはこの教科書のように生徒全体・教室全体に対して「How are you?」と呼びかけて、生徒全体が「I’m fine, thank you. And you?」と画一的に同じ答えを返すような状況が奇妙だといっていました。

外国語の練習のクラスなら話は別ですが、普通の授業だと「Good morning」みたいな挨拶が普通であって、「How are you?」で聞いたらいろんな答えが返ってきてカオスになるといった意見です。

結果的に6つの教科書を総合すると「今でも教科書で『I’m fine, thank you. And you?』と習うのか?」という問いについては、「習っている」と結論しても問題ないと思います。

ネイティブは「I’m fine.」と言わないという批判

ネイティブは「I'm fine.」と言わないという批判

カナダ人のスティーブに意見を聞いてみると「How are you? 」「I’m fine.」は、一般的には挨拶としてはかなりフォーマルな部類で、普段の会話、友達との会話ではあまり使わないといった意見でした。このあたりは多くの人が指摘する通りだと思います。

しかし教科書が「I’m fine, thank you. And you?」を掲載しているのは事実ですが、その場面の多くは「生徒と先生」の状況です。

ネイティブが「I’m fine.」を使わないわけではなく、友達の普段の気軽な挨拶ではあまり使わないだけであって、ビジネスのシチュエーションや教科書の生徒・先生の状況ならば、友達の場面よりは登場頻度は高くなると思います。

教科書が「I’m fine, thank you. And you?」をオールラウンドな、あらゆる状況で使える定番の挨拶だと誤解させているような側面はありますが、実際はもうちょっと堅苦しい返事だという話です。

その意味では日本語の「お元気ですか?」「ごきげんいかがですか?」と「ええ、おかげさまで」に近い位置づけの挨拶だと考えてもいいかもしれません。言わないことはないけれど、友達には普通は言わない部類の挨拶です。

オールラウンドであるといった誤解にくわえて、この返事以外のバリエーションがない、唯一無二の返事かのような誤解も生まれているのかもしれません。

ネイティブは「How are you?」にどう返事をするか?

ネイティブスピーカーがHow are you? に対してどう返事をするのかはYouTuberをはじめ、テレビ番組でも特集されていました。

以下はNHKの「知りたガールと学ボーイ」からです。

外国人は How are you? と聞かれた時、I’m fine, thank you. とは言わない?! | 知りたガールと学ボーイ | NHK for School

他にもYouTubeで検索するといっぱい出てきますが、有名なのはHapa英会話の『アメリカ人は「How are you?」にどう答えるか実験してみた(YouTube)』などです。

どれもフォーマルなシチュエーションではなく、親しい同僚やストリートで見知らぬ人に声をかける状況です。ビジネスシーンでどう答えるか同じ実験をやってほしいですが、なかなかカメラを回すわけにもいかず難しいのでしょうね。

上のNHKの動画に登場するアメリカ人の2人が返事のランクをつけています。上から「①GREAT」「②GOOD」「③FINE」「④BAD」「⑤TERRIBLE」の5段階です。このランク設定にはカナダ人のスティーブも同意していました。OKを入れるならfineと同じぐらいの位置で、5段階評価の真ん中になります。

返事としての「I’m fine.」の使い方について

How are you?の返事以外にも、何かの返事としてI’m fineは使われます。

アメリカ人のダイアンは「fine」は本音を避ける場面でよく使うといっていました。したがって自分が「I’m fine.」を使うときは、その話題について話したくないと暗に伝えている感じがするそうです。

受け答えとしては良くも悪くも「無難」に使われる感じもあり、日本語でいう挨拶ならば「調子どうですか? お元気ですか?」に対する「おかげさまで」みたいな返答に通じるものがあります。本当に良かったらもっと別の言葉をいっていたりします。

文脈によって少し指している内容が変わる感じもあります。

例文

A:Do you need some help?

助けはいりますか?

B:I’m fine.

上の例文の場合は「私は大丈夫です」の意味であり、助けに対しては「いらない、必要ない」と断っていることになります。

例文

A:That cough sounds bad.

悪そうな咳だね。

B:I’m fine.

この場合のI’m fineは「大丈夫だよ、心配しないでいいよ」ぐらいの返事になります。

fine with

fine withは「困らない、別にかまわない、嫌じゃない」といった意味になります。

例文

I’m fine with staying home tonight.

今夜、家にいるのはかまわない。

例文

His mother was fine with him going to the party.

彼の母親は、彼がパーティーに行くのはかまわないと感じていた。

「fine with」は心理的な「かまわない」を伝えていますが、これを「good with」「bad with」「great with」に変更するとスキルの程度を表す表現になります。このあたりは挨拶の場合の変化とは使い方が違います。

例文

I’m good with computers.

私はコンピューターが得意だ。

例文

She’s really bad with money.

彼女は本当にお金に対してひどい。

OK withは「まあまあ」ぐらいで、これを使うと「困らない、別にかまわない、嫌じゃない」と「そこそこ使える」といった両方の解釈ができます。

例文

I’m OK with computers.

私はコンピューターが問題ない。

例文

His mother was OK with him going to the party.

彼の母親は、彼がパーティーに行くのはかまわないと感じていた。



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