英語で「客・顧客・お客様」を表す英単語はかなり多く存在しており、業種との相性やその性質により使い分けされています。
一般的には「customer(カスタマー)」「client(クライアント)」「guest(ゲスト)」「visitor(ビジター)」のどれかを使えば、ほとんどのタイプのお客さんを言い表せると思います。
しかし日本語にも「乗客」「観光客」「観客」といった言葉があるように、英語でもより具体的、より的確に表せる言葉遣いも存在しています。どちらでも使えるといった重なり合う部分も多いですが一般的な使い分けを記載します。
記事後半では、どの言葉を選ぶかは人によって変わってくるので、ネイティブスピーカー二人に写真を描写してもらい適切な「お客さん・客」の英単語を選んでもらいました。
この記事の目次!
customer(カスタマー)の意味
一般的にcustomer(カスタマー)は商品を売っているビジネスで使われる言葉です。小売店で物を買うようなタイプから、レストランのお客さんまで幅広く指すことができます。
customer【kʌ́stəmər】
サービスを利用する人にも使えないこともなく、わりと幅広い印象の単語です。基本的には「モノ・サービスを買う人」です。
Our supermarket had about 1,000 customers today.
我々のスーパーマーケットでは今日、およそ1000人の顧客があった。
This restaurant gets a lot of customers.
このレストランは多くのお客さんがいる。
His business lost customers ever since the scandal.
スキャンダル以来、彼のビジネスは顧客を失った。
customer baseといえばビジネス用語で「顧客ベース、顧客基盤」のことです。抱えているお客さんの集団といった感じです。
Our company has a large customer base in Indonesia.
我々の会社はインドネシアに大きな顧客基盤がある。
We lost much of our customer base after the tainted chicken scandal.
我々は腐った鶏肉のスキャンダルの後に、多くの顧客基盤を失った。
常連客
常連客を英語でいうにはいくつか候補がありますが「loyal customer(ロイヤル・カスタマー)」「regular customer(レギュラー・カスタマー)」などが広く使われています。
I’m a loyal customer of Royal Host.
私はロイヤルホストの常連客だ。
He is a regular customer.
He is a loyal customer.
He is a faithful customer.
He is a supportive customer.
彼は常連客だ。
言葉本来の意味ではloyal(忠実な、誠実な)、regular(いつもの、習慣的な)、faithful(信頼できる)、supportive(支持する)といった違いはありますが、上の表現はほぼ同じで「彼は常連客だ」といった意味です。
shopper(買物客)
shopper(ショッパー)とはいわゆる「買物客」のことであり、あるタイプのcustomer(カスタマー)だといえます。通常は小売店、お店の買物客を指して使います。
There were no shoppers in the store when the fire started.
火災が起こった時に、店内に買い物客はいなかった。
They want to attract shoppers with big discounts.
彼らは大幅な値引きで買い物客を引き付けたがっている。
Many shoppers are looking for good bargains.
多くの買い物客がいいバーゲンを探している。
diner(飲食客)
diner(ダイナー)は飲食店のお客を指す言葉であり、こちらもある特定のタイプのcustomerだといえます。
通常は席のあるようなレストランの客を指すので、あまりマクドナルドなどファストフードには使わないかもしれません。
Some diners complained that the music was too loud.
何人かの飲食客は音楽がうるさすぎると不満をいった。
The restaurant chain closed some location because of a decrease in diners.
その飲食チェーンは飲食客の減少のためいくつかのお店を閉店した。
また飲食店の営業形態の1つとしてのdiner(ダイナー)もあるので少し混同しやすい要素があります。
client(クライアント)の意味
client(クライアント)はサービスを提供するタイプの業種のお客さんに使われます。ある程度、期間があるような継続性を持った取引が多い業種、コンサルティング会社や弁護士、会計士、税理士のような業種の顧客が代表的です。「依頼人」といった意味もあります。
client【kláiənt】
しかしWEB系のサービスの場合、例えばFacebookやGoogleの場合は「user(利用者)」といったほうが適切です。新しい業種ほど呼称に対して少し曖昧な部分が残ります。
The lawyer lost all of his clients after the scandal.
その弁護士はスキャンダルの後ですべての顧客を失った。
He is a big Hollywood agent. His clients include all the top actors.
彼はハリウッドの大物エージェントだ。彼の顧客は全員トップ俳優だ。
これらは一般的な分類でありおそらく例外も予想されますが、それでも以下の例文のように書くと間違いとは言い切れないものの少し自然さに欠けます。
The lawyer lost all of his customers after the scandal.
He is a big Hollywood agent. His customers include all the top actors.
(あまり一般的ではない表現)
しかしclientとcustomerの違いは、ネイティブスピーカーでも見解がわかれる微妙な部分があります。後半の写真の描写を参考にしてください。
visitor(ビジター)とguest(ゲスト)の違い
文脈なしの普通の状況ではvisitorは招待状などを持たずに、ある場所にやってくる誰かを指し「訪問者」を意味します。
I was talking on the phone when a visitor came to the door.
訪問者がたずねてきたとき、私は電話で話していた。
セールスマンや友達などが突然やってきたような状況です。
イベントや博物館・美術館などの来場客などを指すこともできます。
Visitors to our museum have been increasing.
我々の博物館への訪問者は増えている。
一方でguestは招待されてくる人「招待客、ゲスト」を表します。
I was talking on the phone when a guest came to the door.
ゲストがたずねてきたとき、私は電話で話していた。
自分が招待していた人が来た状況です。
厳密に言うと、レストランなどのお店に行く人は招待を受けているわけではないのでvisitorにあたりますが、よりウェルカムで丁寧な表現になるので販売員はお客をguestと呼ぶのも一般的です。しかし従業員同士の会話ではおそらくvisitorもしくはcustomer(顧客)を使っている可能性も十分に考えられます。
Susan, can you tell Tom to bring some tea for our guests?
スーザン、ゲストにお茶を持ってくるようにトムに伝えてくれる?
Be my guest.
どうぞご自由に。
直訳では「私のゲストになってください」ですが、「ご自由に、ご遠慮なく」といった表現です。
Be my visitor.
(この表現はできません)
ホテルは常にguestを使う
例外としてホテルではいつも来訪者を「ゲスト」と表現します。このように業種によっては伝統、慣習的に呼称がある程度決まっているケースがあります。
Our guest in room 214 requested towels.
214号室のお客様がタオルをリクエストしました。
There has been an increase in foreign guests at this hotel.
このホテルでは外国のお客様が増えています。
patron(パトロン)の意味
「patron(パトロン)」はカスタマーともクライアントとも分類しにくいような幅広い、ほぼすべての業種に使えてしまう便利な言葉です。
patron【péitrən】
いろんな客全般を表せる便利な反面、もっと的確に表せる単語が他にあるなどの理由で言葉選びの第一候補になりにくいといった意見がありました。
There are lots of patrons in this restaurant.
このレストランには多くの客がいる。
This consulting firm has lots of patrons.
このコンサルティング会社は多くの顧客がいる。
Patrons of this shop get a discount on parking.
このお店の客は駐車場の割引を受けられる。
カナダ人のスティーブはあまり使わない言葉だといい、一方でアメリカ人のブランディの書いた記事ではケンタッキーフライドチキンの客もカスタマーではなく「patron」と表現していました。もちろんcustomerと書いても問題なく、けっこう好みがわかれる言葉だといえます。
オーストラリア人のカールは、ファストフードなどでお店側が自らの客を呼ぶ際に使うとちょっと偉そう、気取り過ぎな感じの嫌味ったらしくなるケースがあるといっていました。
KFC Japan has opened its all-you-can-eat restaurant in Tokyo’s Machida district, offering patrons a buffet with 50 menu items and unlimited soft drinks for 80 minutes.
KFCジャパンは、東京の町田エリアに食べ放題のお店をオープンした。顧客にビュッフェ形式で50の商品と飲み放題のソフトドリンクを80分間提供する。
支援者
カタカナの「パトロン」は支援者みたいな意味がありますが、英語でも使えます。芸術系の支援者に使われていましたが古臭い感じの言葉です。
She was known as patron of da Vinci’s.
彼女はダビンチのパトロンとして知られた。
Wealthy people such as him are often patrons of the arts.
彼のようなお金持ちはしばしば、芸術のパトロンだ。
passenger(乗客)
ある業種などではもっと特定の言葉で言い表すことができます。例えば交通機関であれば「乗客・パッセンジャー(passenger)」といった言葉があります。電車、飛行機、船などの乗客のことです。
passenger【pǽsəndʒər】
All the passengers were evacuated from the train.
すべての乗客は電車から避難させられた。
A flight attendant attends to passengers’ needs.
客室乗務員は乗客の必要なものを世話する。
You cannot bring food on the train, however, there is a dining car where passengers can buy water and snacks.
電車に食べ物を持ち込めません。しかしながら、乗客が水や軽食を買える食堂車があります。
カタカナでは電車の乗客に対して「ライダー」とはいいませんが英語ではriderでもかまいません。
There are many riders on the Yamanote Line.
There are many passengers on the Yamanote Line.
多くの乗客が山手線にいる。
commuter(通勤客)
commuterは通勤する人、通勤客なのでpassengerの中の1つのタイプになる可能性があります。
commuter【kəmjúːtər】
電車などに乗っている人の中で、職場に向かっている人はcommuter(通勤客)といえます。旅行中の人ならtourist(ツーリスト・観光客)と呼ぶことができます。
The old bridge posed a threat to commuters.
その古い橋は橋を通る通勤者に脅威をもたらした。
The beauty of its islands has been drawing tourists to Thailand for many years.
その島々の美しさは、旅行者を何年にもわたってタイにひきつけている。
user(利用者)とviewer(視聴者)
WEB系のサービスを含めてuser(利用者・ユーザー)は幅広く使うことができます。しかしAmazonは物販なのでcustomerともとれるし、サービスのuser(利用者)とも考えられます。
ネットフリックスのような動画配信サイトの場合にはuser(利用者)でもあり、番組単位のviewer(視聴者)といった表現も可能になります。ゲーム関係ではplayerなども該当します。
このあたりの厳密な使い分けはなく、曖昧になるケースが多いです。無料で誰でも使えるのではなく、専門性が高いサービスなどではWEB系でもclientが使われているケースもあります。
Facebook has billions of users.
フェイスブックは数十億のユーザーを抱えている。
Amazon users must register first.
Amazonのユーザーは最初に登録しないといけない。
StudyNow has lots of users.
スタディナウは多くのユーザーを抱えている。
viewer(視聴者)はテレビなどの視聴者数によく使われます。
The show has gotten a lot of viewers this season.
その番組は今シーズン、多くの視聴者を獲得した。
The show had less viewers in its final season.
その番組の最終シーズンの視聴者はより少なかった。
audience(オーディエンス)とspectator(スペクテイター)
ほかにも演劇やコンサートのお客さんはaudience(オーディエンス)やspectator(スペクテイター)といった表現も可能になってきます。
spectatorはスポーツなどの「観客」のことです。spectacle(スペクタクル)にも通じる言葉で「視覚」によった言葉なので、オーケストラのような純粋に聴くタイプの観客にはあまり使いません。
The event had a record number of spectators.
そのイベントは記録的な観客数だった。
One spectator threw a bottle at the pitcher.
ある観客がピッチャーにボトルを投げた。
言葉としてはspectatorはそこまで使われる感じでもなく、カナダ人のスティーブはかなり限定された状況でないと使わなさそうな言葉遣いだといっていました。
audience(オーディエンス)は「聴衆・観客・観衆」と考えてもいいかもしれません。audienceは語源としては「hear」の意味にいきつきます。ただしスポーツの観客をaudienceと呼ぶのも問題ありません。
注意点としてはspectatorが個々の人間を指すのに対して、audienceは大きな集団になるのでaudienceで全体を指すことになります。
The audience cheered at the end of the game.
観客は試合の終わりに喝采した。
Someone in the audience forgot to turn off their phone.
観客の中の誰かが電話の電源を切るのを忘れた。
He bowed to the audience.
彼は観客におじぎをした。
その他の客を表す言葉
すでに紹介した「customer(カスタマー)」「client(クライアント)」「visitor(ビジター)」「guest(ゲスト)」「patron(パトロン)」あたりを使えば、ほとんどのケースで会話や文章が成立すると思います。
細かい分類をしていけばけっこう広い範囲をお客さんに含めることができます。他にも広い意味では医者の場合は「患者(patient)」がお客さんを表しています。
I am not a patient of that doctor.
私はあの医者の患者ではない。
consumer(コンシューマー)は消費者ですが広い意味では「客」の一種だといえるかもしれません。映画館に行くような映画好きをmoviegoerと呼んだり、より細かい言葉を探せばまだまだ「客」を表せる言葉もあると思います。
お客さんの写真をネイティブに描写してもらう
ネイティブスピーカーであるカールとスティーブに写真を見てもらい「お客さん」「お客様」を意味する単語を使いながら場面を描写してもらいました。
どの言葉がぴったりなのか参考にしてください。意見がわかれるケースも多かったので、境界線は曖昧なケースがあります。
自動車の販売員とお客さん
おそらくこの女性は自動車の販売員、ディーラーで車体の色のサンプルを顧客に見せているような状況です。この場合は明確にモノを買っているので「customer」です。
She is showing a customer color samples.
彼女は客に色の見本を見せている。
カジノのお客さん
カジノでカードゲームをする人達です。スティーブは以下のように「player」「gambler」をあげています。
The players are enjoying a game of poker.
The gamblers are enjoying a game of poker.
プレイヤー / ギャンブラーはポーカーを楽しんでいる。
カールは「patron(パトロン)」を使っています。
The patrons are enjoying a game of poker.
すでに紹介したようにpatron(パトロン)は後援者、賛同者の意味もありますが「客」を表せる幅広い言葉です。
スティーブはpatronはあらゆる客を指せる幅広い感じになるため、どんな業種にでも使えてしまうためベストな選択になりにくいといっています。
コミコンの参加者
Comic-Conとはコミックのconference(会議・集まり)であり、コミックファンなどの集いだと思ってください。海外・国内でも大規模なものが行われています。
この場合の参加者がお客さんにあたりますが以下のパターンが考えられます。
The conference had more participants this year than last year.
今年の集会は去年より多くの参加者がいた。
この集まりにおいて出店する、販売するなどの役割を担った人々のニュアンスが強いなら「participant(参加者)」が使えます。
ただそこにいるお客さんの性質ならば「attendee(出席者)」が使えます。しかしイベントはみんなで作るものなので境界線は曖昧です。
The conference had more attendees this year than last year.
今年の集会は去年より多くの出席者がいた。
銀行の客にローンの説明をする
後ろに「ビジネスローン」の文字が見えるので、おそらく銀行などの金融機関でローンの説明をしている状況です。
She’s explaining loan options to a client.
She’s explaining loan options to a customer.
彼女は顧客にローンのオプションを説明している。
この場合は意見がわかれましたがどっちでもいけるそうです。特に銀行は物を買っているイメージはありませんが「customer」が使える状況です。
「ビジネスローン」という商品を購入する、あるいはサービスを利用する両方の側面があります。
清掃業者の客
この人たちはプロの清掃業者で顧客のオフィスなどを掃除しているのだと思いますが、その場合の客についてです。
They’re cleaning a client’s office.
They’re cleaning a customer’s office.
彼女たちは顧客のオフィスを清掃している。
カールはclientがベストだといっていますが、スティーブはcustomerでもOKだといっているので意見がわれています。どっちでもいける状況です。
お客さんの自動車修理
自動車修理をしている場面ですが、これもcustomerとclientの両方が使えます。
They are fixing a customer’s car.
They are fixing a client’s car.
彼らは顧客の自動車を修理している。
clientを使うと大規模なトヨタなどの工場で頻繁に修理業務をやっているような印象になります。これが町の自動車屋さんのレベルならば「customer」だろうという意見でした。
レストランで喧嘩をする客
レストランで喧嘩をする2人のお客さんの写真です。これもcustomerで十分です。カールは「patron」でもOKといっていました。
Two customers are arguing in front of a staff member.
Two patrons are arguing in front of a staff member.
ふたりの客がスタッフの前で口論をしている。
歯医者・美容整形の患者
歯科医と患者の写真です。基本的には医療関係の客は「patient(患者)」です。
She is giving a patient a check-up.
彼女は患者に検診をしている。
しかし美容整形や歯医者の中でもホワイトニングなど医療よりも美容によったものならばclientでもいいのではないかといった意見でした。
また美容整形などではまさに今、施術を受けているような客は「patient(患者)」になりますが、それ以降についてはclientの性質が強くなります。
お客さんに荷物を届ける宅配業者
最後に最も意見がわかれた写真です。宅配業者がお客さんに荷物を届けてサインをしてもらっている状況です。
この宅配業者は荷物を届けるサービスの提供者であり、この女性に物を売っているわけではありません。配送業者と女性には金銭取引はないので、clientと呼ぶのも微妙な感じです。カールとスティーブで話し合っていました。
He is delivering a package to a customer.
He is delivering a package to the recipient.
customerでもOKですが、recipient(受領者、受益者、受賞者)といった単語があるので、これが正確に描写しているのではないかといった結論になりました。
このようにネイティブスピーカーでも意見がわかれたり断定できないような分類なので、よほど変な言葉遣いは別としてもあまり気にせずに使っていいのではないでしょうか。