英語の大文字と小文字の表記ルールと使い分け

capital-letter
 

公開日: 最終更新日:2020.09.23

ニュースで「COTON」や「AQUA」といった名前の商品が発売された記事を書いたとき、ネイティブスピーカーが書いたニュース文では「Coton」「Aqua」と小文字になっていました。

企業が決めた正式な商品名・ブランド名が大文字の「COTON」「AQUA」ならば、ニュース文も大文字にした方が良いのではないかと提案しました。

しかしネイティブからの回答では「COTON」の表記は「noisy」と言われました。文中で大文字で書かれると、すごく邪魔で気になってしまうそうです。

以前にもアプリ「ざっくり英語ニュース!StudyNow」の中でジャニーズのTOKIOの記事を書いた時に「TOKIO」が「Tokio」と表記されていました。日本人としては逆にTokioの表記は違和感があります。

以下、固有名詞の大文字・小文字の使い分けとルールについて興味深い話が聞けたので、ネイティブにヒアリングした結果をまとめたものを記載します。

文章・センテンスの中ですべて大文字で表記するケースはほぼない

頭の文字を並べた単語(PTA / USA / IBM / NASA / NATOなど)を除けば、普通は文章の中で固有名詞がすべて大文字で表記されることはありません。

コンピュータ会社のIBMはInternational Business Machinesの略なので、こういう名称がIBMと大文字で表記されることはあります。

しかしFacebookやGoogleのような会社が文中ですべて大文字でFACEBOOKやGOOGLEのように書かれることは普通はありません。

例文

IBM is a big company.

I work at HMV.

普通は書かない表記

GOOGLE is a big company.

I have a FACEBOOK account.

I have an ASUS computer.

USAとNASAの違い(initialismとacronym)

頭の文字をとった略語(頭字語)でも扱いが2つに分かれます。

USAやIBM、PTAのような「ユー・エス・エイ」「アイ・ビー・エム」と個々のアルファベットで発音するタイプの略語(initialismまたは頭文字語と呼ばれます)はすべて大文字表記です。

逆にいえば「Usa」「Ibm」「Pta」「Fbi」と書くことはありません。

その一方で、頭文字をとって1つの単語として発音できるもの(acronymまたは頭字語といいます)は、場合によっては小文字で書くケースもあります。

NATOは「エヌ・エイ・ティー・オー」とは発音されずに普通は「ネイトー(ナトー)」と呼ばれます。「NASA」は「エヌ・エイ・エス・エイ」ではなく「ナサ」です。

このような単語の場合は文章でNATO / Nato、NASA / Nasaのような両方の表記が可能性として考えられます。

ロゴなどのデザイン

「固有名詞の最初の文字は大文字にする」というのは、我々が学校で習った英語のライティングのルールで間違いではありません。

ただしロゴのデザインとして考えた場合は、より「絵」に近いものなので「すべて大文字」「すべて小文字」「先頭だけ大文字」などさまざまなケースが考えられます。文章・ライティングのルールの外の話です。

アメリカを代表する企業の公式ロゴを並べてみます。

アメリカの企業ロゴ

facebookやtwitterのようにロゴをすべて小文字で表記するのが、ここ最近のIT企業・スタートアップ企業のトレンドになっているようですが、グーグルは先頭が大文字のGoogleになっています。昔ながらの伝統的な企業は筆記体になっていたり、けっこう流行に左右されるようです。

参考資料ですがイギリスを代表する企業のロゴをピックアップしたものです。ロゴに関しては大文字と小文字の使い分けは自由ですね。

イギリスの企業ロゴ

先に書いたように文章の場合は「固有名詞の最初は大文字」というルールが一般的で、たとえ「facebook」「twitter」「amazon」のように公式ロゴがすべて小文字で表記されていても文章中では先頭のみが大文字になります。

その逆も同様で公式のロゴがすべて大文字であっても先頭のみが大文字で書かれます(IBM、HMV、HTCなどを除く)。

ニュース記事でも、もちろんFacebook、Twitter、Amazonと表記されます。

いくつかの例外

基本的なルールはすでに書いた通りですが、特殊な大文字化をしている商品・企業名がそのままニュース文などで使われるケースがあります。

代表的なものが「iPhone」です。またオークションサイトの「eBay」もニュース文では「eBay」と書かれるケースが圧倒的で「Ebay」の表記はあまり見かけません。他にも送金サイトのペイパルもやはり「PayPal」と表記されるケースが多いです。

iPhoneが文章の先頭に来た場合に、どう書くべきか(IPhone? iPhone? Iphone?)は悩ましい問題で英語圏のライターでも意見がわかれていました。厳格なライティングのルールよりも読みやすさが優先される傾向があります。

ちなみにうちのアプリ「スタディナウ」の英語表記は「StudyNow」の1単語、スペースなしでSとNが大文字の「PayPal」と同じ表記です。自分たちで書くときはStudyNowとしていますが、他のサイトで紹介していただくときに「Studynow」のように書かれることも普通にあると思います。

eBayやPayPal、iPhoneのような特殊な表記が文章の中で使われるのは、人々の読みやすさや習慣的なもの、知名度などさまざまなものが影響しています。うちのアプリも誰もが「StudyNow」だと認知してもらえるぐらいになりたいです。無料なのでぜひダウンロードしてください・・・。

ざっくり英語ニュース!StudyNow

ボタン・パーツの大文字・小文字のデザイン

アプリやWEB制作をされている方で英語のボタンをどう表記するかは悩むケースもあるかもしれません。この場合は「文章として英語を書く」と「デザインとして英語を使う」は切り離して考えてもいいと思います。

例えばアプリ用のボタンを作る場合でも以下のパターンが考えられます。結論からいえば「どれでもOK」となります。

ボタンの大文字・小文字

アイコンやボタン、看板もそうですが「文章」というよりは「デザイン・絵」なので、見やすければどう書いても問題ありません。街中でも「HOTEL」「STATION」といったすべて大文字で書かれた看板がありますが、あれもデザイン・絵なので見やすく伝わるならばどんな書き方でもかまいません。

もちろん一般論として「先頭だけ大文字にする」というボタンデザインのルールを決めたならば、他のボタンも統一させたほうがデザイン的にもいいと思います。

また下のようなボタンでも「Share on Facebook / Follow us on Twitter」など文章・センテンスになっているものは、文章としての性質を帯びてくるので先頭を大文字にするといったライティングのルールが適用されがちです。

ただし、企業名の部分をロゴとして扱うならば、それは全体としての絵の性質が強くなるのでどんな表記も考えられます。(右側)

logo2

基本的に単語を組み合わせた長い文字列ほど「文章」としての性質が強くなるので、通常のライティングのルールを適用すべきだという話です。しかし、1単語程度のボタンやバナーに関しては「文章・ライティング」とは少し違う世界なので自由に作ることができます。

以下の観点からライティング・文章としてのルールを適用するか? デザインとするか? で大文字にするかどうかの目安になります。

・単なるボタン程度の単語か? 
・見出し、看板のような性質か?
・文章と呼べるものか?
・人間からのメッセージか? コンピューターが言っている性質のものか?
・アラートのようなものか?

単なるボタンは「絵」に近いものですが、ポストカードに書かれた「Happy Birthday」のような文字は少し文章としての性質が上がりますが、まだ見出しとしてデザインの要素も強いです。さらに長い文章になると文章としての色合いが濃くなります。文章に近づくほど学校で習った文章表記のルールを適用したほうが、読む人とのコミュニケーションがとりやすくなります。

例えば以下のような短いメッセージの場合はどちらでもOKだといえます。

例文

Please press Enter.

PLEASE PRESS ENTER.

(エンターキーを押してください)

3単語なので文章と判断して先頭を大文字にするのもOKです。またこの場合は人間ではないコンピューターによるメッセージのような性質なので全部大文字でもいいという判断です。

状況にもよりますが、全部を大文字で書いた文章からコンピューターが話しているように感じるのは、私たち日本人が全部カタカナで書かれた文章を読む感覚に似ているのかもしれません。

また大文字で書くと目がいくので警告文には大文字が使われる傾向があります。

例文

Warning: Memory is low.

WARNING: MEMORY IS LOW.

しかし人間が書いているメッセージ、人間が発している文章はやはりすべてを大文字にするのは避けたほうが無難です。まず長い言葉の組み合わせは基本的には文章なので、文章・ライティングのルールを適用すべきだという話があります。

例文

Thank you for using StudyNow every day.

(スタディナウを毎日使ってくれてありがとうございます)

これぐらいの文章で明らかに作者やキャラクターが話している内容ならばライティングのルールにのっとった形が適切です。

例文

THANK YOU FOR USING STUDYNOW EVERY DAY.

(ダメな書き方)

このように長いメッセージ的な文章を大文字ですべて書くと、まず人間の場合は叫んでいるように感じる点があります。映画の英語字幕でも怒鳴るセリフなどは大文字で書かれるケースがあります。

またキーボードの扱いも知らない、小文字の出し方を知らない人のような未熟な印象を与えがちです。単純に読みにくいという問題もあります。

こういった人間が出しているメッセージ・文章を意図的にすべて大文字で書くのは、例えば伝統的にすべて大文字で書くアメコミの世界観を再現したアメコミ風のアプリを作っている、表示文字が限られていたファミコン時代を再現したホームページを作っている、といった特殊なケース以外は避けるのが無難です。

日本語でいえば全部ひらがな、全部カタカナで書くといったケースはありますが、あくまで何かを意図した特殊なケースです。文章や長いメッセージを全部大文字で書くのは何か意図がなければやらないほうがいいかもしれません。

アメコミなどでは伝統的に全部セリフが大文字になっていたりしますが、これは例外的な書き方です。

アメコミのセリフ画像(Googleイメージ)

普通名詞と固有名詞で同じ言葉

普通名詞(一般名詞)と固有名詞で同じ単語になっているものがいくつかあります。代表的なのは「Earth / earth」や「Moon / moon」などです。

一般的に大文字でEarthと書くと我々が住むこの地球を指します。会話ではそこが大文字か小文字かはわからないので、theをつけたほうがわかりやすいです。

似たような表記がいくつかあります。

例文

We live on Earth.

We live on The Earth.

We live on Planet Earth.

我々は地球に住んでいる。

まれにearthは植物が育つ「土、土壌(soil)」の意味でも使われるので、その際には小文字で表現されます。

例文

The earth here is very rich and good for growing crops.

=The soil here is very rich and good for growing crops.

この土壌はとても豊かで、農作物を育てるのによい。

moonとthe Moon

同様にMoonにも同じことがいえて、私たちがお月見をする夜空の月は大文字です。

例文

The Moon is beautiful tonight.

今夜は月が綺麗だ。

もしそれが惑星をまわる「衛星」としてならば小文字になります。土星にはタイタンやエンケラドスなどの60を超える衛星(月)が存在しています。

例文

Saturn has many moons.

土星は多くの衛星がある。

例文

Our moon is called The Moon.

我々の衛星は「月」と呼ばれている。

The Holocaust

他にも固有名詞と普通名詞で同じ単語になっている言葉はたくさんあります。

例えば大文字でthe Holocaust と書いた場合は、第二次大戦中にナチスによって行われた大量虐殺を指します。

例文

My grandfather survived the Holocaust.

祖父は(ナチスによる)ホロコーストを生き延びた。

例文

We visited a Holocaust memorial in Berlin.

私たちはベルリンのホロコースト記念館を訪れた。

小文字でholocaustと書いた場合は大災害、大惨事、破壊、全滅など人や物事の大規模な死や破壊を意味します。ニュースの文章ならば大文字と小文字で、会話ならば「the」の有無で何を指しているのかを判断する必要があります。

例文

Governments are working together to avoid a nuclear holocaust.

政府は一体となって、核による大惨事を避けようと取り組んでいる。

例文

If we continue to pollute the air, it may result in a major holocaust.

もし我々が大気を汚染し続ければ、大規模な壊滅の結果になるかもしれない。

他にもリンゴを意味するならばappleですが、iPhoneなどを製造しているアップルコンピューターを指すならばAppleです。こういった言葉は山のようにありますね。

例文

American tech giant Apple’s logo is an apple.

アメリカのテック大手アップル社のロゴはリンゴだ。

Navigator / Superstar

企業や団体などが普通名詞を特殊な意味や独自の使い方で使用しているケースがいくつかありました。

例えばFMラジオ放送局 J-WAVEでは自局のDJを『ナビゲーター(Navigator)』と呼んでいます。ショーン・Kさんがやっていたやつです。

navigatorはもともとは船の航海や飛行機に対して方向やルートを示す人を指します。車のカーナビも同じことです。

カタカナの「ナビゲーター」は案内役といった感じでさまざまなものに使われていますが、このままカタカナを英語にしてしまうと「ラジオのナビゲーターってなに?」と違和感が出ます。

本来はDJが自然だとは思いますが、J-WAVEがDJを「ナビゲーター」と呼称する以上は、こちらで勝手に名称を変えるわけにもいきません。ここでは大文字にすることで特定の意味、固有の意味で使っていることを表します。

例文

Talks by some Navigators of the FM radio station J-WAVE are also scheduled for the event.

FMラジオ放送局 J-WAVEの”ナビゲーター”を迎えてのトークイベントもまた開催される予定。

またアメリカのプロレス団体WWEでは所属選手のことをレスラー/プロレスラーとはいわず「スーパースター(Superstar)」と呼んでいます。

あまり知名度のない売れていない新人選手も、トリプルHやストーン・コールド・スティーブ・オースチンのような超人気選手もスーパースター(Superstar)です。

この場合、同じ言葉でもやはり書き分ける必要があります。

単に人気者だという普通の名詞の意味ならばsuperstarですが、プロレス団体WWEに所属する選手を指す固有名詞ならばSuperstarです。

例文

There are many WWE Superstars in the game.

試合の中に多くのWWEの”スーパースター”がいる。

例文

Stone Cold Steve Austin is a wrestling superstar.

ストーン・コールド・スティーブ・オースチンはレスリングの人気者だ。

このように一般名詞でも大文字になっていることで、何か固有の使い方、特殊な使い方をした固有名詞になっているのだとわかります。

トランプ大統領の英語でたびたび指摘されているのはツイッターでの「必要のない大文字化」です。なぜか普通名詞を不必要に大文字化する癖が見られます。

人名と大文字

人名も固有名詞なので先頭が大文字になります。かなり特殊な事例だと思いますが、人名と固有名詞を勘違いして読み間違えそうになったことがあります。

アプリ内のニュースで韓国のパク・クネ大統領の事件を扱ったときの文章です。

ニュース文より

President Park has apologized for her involvement and is cooperating with investigators.

(朴大統領は彼女の関与を謝罪し、捜査当局と協力していく)

文章の書きだしは大文字になり、人名も最初は大文字になります。

President Parkは、韓国の政府機関を指す「大統領庭園」のような専門用語、固有名詞があるのかとずっと探していましたが、これはPark Geun-hye(朴 槿恵/パク・クネ)を意味する言葉です。

President Parkは「朴大統領」です。

そもそも、なぜ大文字と小文字があるのか?

素朴な疑問ですが『英語の素朴な疑問に答える36章』に書いてありました。

要約すると小文字が完成されたのはフランク王国のシャルルマーニュの時代(742年-814年)です。

この時代は文芸、芸術活動が盛んで多くの知識人たちが書きものをしましたが、当時は紙がなく「羊皮紙」とよばれる羊の皮をつかったものに書き残していました。

しかし、どんどん書くので羊皮紙が足りず書いては消しを繰り返していました。そこで考案されたのが文字そのものを小さくする方式です。

これによって書ける量が増えて、スピードもあがるといったメリットがありました。本当はもう少し複雑な歴史があり、ちょっとずつ考案されたようですがシャルルマーニュの時代に完成された経緯があります。

しかし、それは英語の話ではなく当時使われていたラテン語やフランク語の話です。これらが派生して現在のアルファベットを使う言葉の大文字、小文字の概念に引き継がれています。

英語の素朴な疑問に答える36章

英語の素朴な疑問に答える36章

若林 俊輔
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全部大文字で書く手書き

スティーブの手書きの文字をはじめて見た時に、彼が小文字をいっさい使わないことにびっくりした記憶があります。

手書き文字

このように文章の先頭や固有名詞など大文字にすべきところを「大文字で大きく」書き、私達が小文字にする部分を「大文字で小さく」書いています。

これは先に紹介したアメコミやダメなメッセージの例にあった「全部を区別せずに大文字で書く」とは種類の違う話です。すべて同じ大きさの大文字ではなく、文字の大きさで区別しています。

「この書き方は読みにくいし間違ってるから正しく書いて欲しい」と言ったのですが、間違ってないし正しいよと何度も説明されました。

私も日本の教育、学校では先頭は大文字、後は小文字といったルールが正しい英文の書き方だと習ったと伝えました。

彼はカナダで大学まで出ていますが、この書き方で小学校から注意されたことなんてないし、正しい書き方だと説明してくれました。

彼以外にも英文をすべて大文字で書くネイティブにも何人も出会いました。

手書きだと大文字ですべて書く人がいる、しかも、それも正しい書き方であって決して相手が間違ったことをしているわけではない、ネイティブは全部大文字でも別に読みにくいとは思っていない、と頭の片隅に置いておくといつか役に立つかもしれません。

あるサイトでこの件に関して、ネイティブに対して読みにくいし正しく書けと、怒っている日本人がいらっしゃいましたが、ちょっと危うい感じもしますね。

以下、大文字・小文字に関連するライティング系の話題をまとめています。



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