カタカナで「アメリカ(America)」といえばアメリカ合衆国を指すケースが多いですが、世界にはそれを嫌う人がいることも覚えておいて損はないかもしれません。
結論としてはアメリカ大陸の一部を「アメリカ合衆国」として使っているにすぎず「アメリカ(America)」だけで合衆国を指すことを嫌う人がいます。
この記事の目次!
アメリカ=合州国を嫌う理由
特にカナダ人などで顕著に出るそうですが「カナダもアメリカ大陸の国」なので、USAといって合衆国を指すにはかまわないけど、Americaといって合衆国を指すとイラっとするという話です。おそらく南米やメキシコの人も同様のことを感じているでしょう。
感覚的に日本人にはわかりにくいですが、例えば来年に中国が「アジア人民共和国」に改名したとします。
そうなった日に欧米の人々が「アジアって万里の長城があって素敵だよね」「アジアの首相は習近平だよね」と言ったり、中国の人々が「アジアを再び偉大な国にする!」など国名を省略して会話をしたとしましょう。
そうなると日本人としては「いや、日本もアジアなんで、その言い方やめてくれない?」となりますよね。
感覚としては想像するとこのような感じで「アメリカ」といっても、様々なものを指すのでご紹介します。
あくまで一帯の地域を指す名称でしかない点に注意が必要でアメリカという言葉も細分化が可能です。
さまざまな「アメリカ」
学校などで地理の時間に習うかもしれませんがまとめてみます。
America
総称であって、さまざまなものが含まれています。USAだけではないので、先に書いたようにアメリカ合衆国に限定で指して使うことを嫌う人がいます。
North America
ノースアメリカは北米のことで「アメリカ」「カナダ」あたりを指します。カナダとアメリカの英語に違いはもちろんありますが、広い視点で見ると「北米の英語」として同じグループです。
メキシコを北米にいれるのかどうかはちょっと議論があるようです。
South America
南米のことで、ブラジル(ポルトガル語)やアルゼンチン、パラグアイ(スペイン語)などの地域があります。
言葉としてSouth Americaといった場合はブラジル・ペルーなど指しますが、southern Americaといえばテキサス、フロリダあたりを指す違いがあります。
これは方角の使い方として別の記事にまとめています。
Latin America
アメリカ大陸の中でも、かつてのスペインとポルトガルの植民地だった地域で、ポルトガル語、スペイン語を公用語とする国々を主に指しています。ここにはメキシコが入ります。
ラテンアメリカの用語は地理や社会の教科書で習ったかもしれません。ただ、定義論争があるようなので、どこからどこまでの国とは断定は避けます。
南米とかなりかぶっていますが、南アメリカ大陸北東部(ブラジルの上あたり)にあるスリナム(Suriname)は元オランダ領で公用語が今でも南米で唯一オランダ語です。またその西にあるガイアナ(Guyana)はイギリス連邦の加盟国で公用語が英語です。このような国は南米であるけれどラテンアメリカには一般的には含まないとされています。
反対にカナダ・アメリカ、かつてのイギリスと関係の深い英語を話す国を「アングロアメリカ」とも呼びます。
Central America
中央アメリカのことで、パナマやホンジュラスのような国を指します。広い意味では西インド諸島のキューバやジャマイカを含む場合もあるようです。
The Americas
主に北米と南米の2つの大陸(あるいは中央も全部含んで)を指してこのような表現がされることがあります。
The United States of America
地理的には、このようなさまざまな「アメリカ」があった上で、その一部分に「アメリカ合衆国」という国があるにすぎません。
日本人にとっては細かい話に感じますが、America=USAでないのは頭の片隅に入れておいて損はない考え方ではないでしょうか。
かつては「亜米利加」と書いたのでそこから今でも漢字では「米国」という文字が使われています。
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アメリカ合衆国の名称
いろいろあるので好きなものを使ってください。合衆国と呼ぶか、アメリカ合衆国と呼ぶかの違いでしょうか。the United States of Americaのように完全な形でいうのは政治的な場面やスピーチなどが多いです。
“the USA”
“the US of A”
“the US”
“the States”
“the United States”
“the United States of America”
“the United States of America”は中国をわざわざ「中華人民共和国」と呼ぶような感じなので、日常会話では長いのであまり登場しませんがフォーマルな文章・発言では見かけます。
カナダ人のスティーブとオーストラリア人のカールに「アメリカに行ったよ」といった会話の場合には、何も考えなければどれを使うか? と確認してみました。
2人ともI went to「the US」「the States」「America」ぐらいだろうといった意見でした。
アメリカ人のスコットは昔は「America」と言っていましたが、カナダ人などが「カナダもアメリカ大陸だよ」と指摘することは知っているので最近は「the US」を使うことが多いそうです。
いちおう世の中にはメキシコ合衆国(The United Mexican States)のように他にも「合衆国」が存在しています。
このため何か1つを特定できる役割を持つ定冠詞の「the」が抜けた形で使ってしまうと、文章・言葉としては「どこのstatesを指してるの?」と理屈の上ではなってしまいます。
名著として知られるマーク・ピーターセン著『日本人の英語 (岩波新書)』の冒頭でも触れられていますが、日本人は「Song for U.S.A.」のようにtheが抜けた形で使うことが、ネイティブスピーカーには奇妙に感じるようです。
たとえば、the United States of America(あるいはthe U.S.A)という表現を、日本では「Song for U.S.A」などのような、theが抜けた極めて異様な形でよく見かけるが、英文法書を見ても、どういう理屈でthe United States of America のtheが必要であるかは説明しない。
Song for U.S.A.はたぶん懐かしのチェッカーズのヒット曲を念頭に置いての発言だと思います。いい歌ですね。アメリカをテーマにした曲はけっこうあってDA PUMPの「U.S.A.(原曲はJoe YellowのUSA)」などもあります。
あらためて聴くと藤井フミヤの発音がうまいというか、フレーズだけですが明らかに英語の発音意識してるように感じます。特にRの発音など練習したのではないでしょうか。
このtheが必要になる理由などについては別記事にまとめていますが、はっきりしたことはよくわかりません。
un-American
ちょっと変な言葉で「アメリカ(合衆国)的ではない」の意味ですが、では「アメリカ的とはなんだ?」という話にもつながります。
自由の国アメリカといった一般的なイメージもありますが、文脈にもよりますが、合衆国の憲法に違反している、合衆国の憲法の理念にそぐわないの意味だと考えられます。
カナダ人のスティーブがいうには「un-Canadia」「un-Japanese」など他の国に使うケースは聞いたこともなく、よく聞く言葉だけどアメリカにだけ使うちょっと変わった表現ではあるそうです。
あまり気が付きませんが、アメリカだけに見られるような習慣もいくつかあります。
Middle America(ミドルアメリカ)
ミドル・アメリカは少し特殊な言葉で、もちろん地理的な中部アメリカ(イリノイ州やミシガン州あたり)を指しています。
そこから転じて、西海岸、東海岸は力強い、お金持ちのイメージがあるのに対して、アメリカの中部に住む中流・中産階級のアメリカ人みたいな感じで「文化・文化圏」の総称、カテゴリーとして使われるケースがあります。
平均的なアメリカ人像で、田舎でも都会でもない中部の「郊外」に住み、アメリカの大部分を占める中心的な意味合いを持ちます。
She lives in Middle America.
彼女はアメリカ中部に住んでいる。
上の場合は合衆国の中部の州に住んでいるといった地理的な意味です。もしくはアメリカ大陸の中部(メキシコなど)の可能性もあります。
Hilary Clinton appeals to Middle America.
ヒラリー・クリントンはミドルアメリカにアピールしている。
こう書くと、中部の州の人にアピールをしたというよりも、中部に住んでいるような典型的な中産階級のアメリカの人々にアピールしたといった側面が強くなります。
日本語で近い概念を探してみると、指しているものの種類は少し違いますが、考え方としては「東京の下町」みたいな考え方と似ています。
東京の下町は足立区、葛飾区みたいな地理的な意味合いもありますが、同時に港区や渋谷区に住むような裕福でおしゃれな層と違った、平均的な東京の人々です。
それでいて文化として漠然とした形でも特有の価値観があります。これをアメリカに置き換えた場合に成立するのが「ミドル・アメリカ」といった考え方です。
「安倍首相が下町にアピールした」は、実際に葛飾区あたりに行くとは思いますが、同時に平均的な庶民、庶民の文化にアピールしているといった文脈が生まれます。
Middle America(ウィキペディア)
Merica / Murica
辞書にも掲載されていますが”Merica”という表現もいちおうアメリカを指しています。
ただし、合衆国以外の人が使うとちょっとバカにしたような典型的、ステレオタイプなアメリカを指して用いられる言葉です。
いわゆる愛国心にあふれたアメリカが一番!みたいな感覚を持つ人々の国としてのアメリカです。
そういう人々は、よくこもったような声で力強くAmericaというので、それがMerica(メリカ)あるいはMurica(ムリカ)のように聞こえるためです。
アメリカ合衆国か? 合州国か?
古くからアメリカ合州国ではないか? といった誤訳の指摘があります。
States(州)がUnited(結ばれた、連合した、団結した)しているならば「合州国」のほうが正しいのではといった指摘です。おそらくこれを有名にしたのは本多勝一さんの1981年の著作『アメリカ合州国 (朝日文庫)』だと思います。
ただしこの本多勝一さんの説に反論もあり「合衆」とは日本語解釈の人々(民衆)が集まっているわけではなく、元々の中国語の「合衆」では「独立して自治権を持った各邦が一致協力して経営する国家」を意味するのであるから、合衆国で合っているといった説です。
微妙すぎてよくわかりませんのでご判断はおまかせします。現在、日本語で合衆国が用いられているのはアメリカ合衆国とメキシコ合衆国の2つが存在しています。
USAは大国ですが、外から見るとけっこう奇妙な部分も多い国です。このサイトにはけっこうアメリカ文化にもついて書いているのであわせてご覧ください。