enoughは「十分な」という意味で量や程度が足りているといったポジティブな意味でとれます。しかし、文脈や表現によっては「もうこれ以上はいい」といった拒絶や辞退のような否定的な感覚で使われるのは日本語の「十分」と同じです。
少し語順などに特殊な要素があり使い方にややこしい点があるので順番にご紹介しています。
また「enough is enough」のように熟語、イディオム、決まり文句になっている表現も多いのでご紹介しています。
この記事の目次!
enoughの形容詞での使い方
「十分な〇〇」は「enough time(十分な時間)」「enough money(十分なお金)」のように名詞の前に置いて使うことができます。
必要とする物量や程度に対して十分である、不足がないといった意味になります。
この使い方はシンプルな形容詞としてのenoughなので特に難しい要素はありません。発音は以下の音声ファイルを参考にしてください。カタカナではイナフぐらいでしょうか。
enough【inʌ́f】
He has enough money.
彼は十分なお金を持っている。
She has enough time.
彼女は十分な時間がある。
He has enough pens.
彼は十分なペンを持っている。
He has enough sense not to do that.
彼はそれをやらない十分な感覚がある。
enoughがかかる名詞は可算名詞は複数形(books, pens)となり、不加算名詞ならばそのまま単数形(time, money)になります。
代名詞としての使い方
enoughには代名詞として「十分な量」といった使い方もあります。これはitが「それ」だとするならば、enoughは「十分なそれ / 十分な量のそれ」と考えることができます。
I had enough to buy it.
私はそれを買うのに十分な量を持っていた。
この場合の「十分な量(のそれ)」とは十分な量のお金、資金だと考えることができます。
これはenoughだけではなくitやtheyなどの代名詞すべてにいえますが文脈がはっきりしていないと何を指しているのかよくわからなくなることがあります。
She said enough.
彼女は十分に言った。
= 彼女は十分な量の言葉を言った。
I had enough to eat.
I had enough to drink.
私は十分に食べた / 飲んだ。
「I had enough to eat.」などは普通は「十分な量を食べた(おそらくお腹いっぱいで満足している)」と解釈されますが、例えば山で遭難しかかった時の話などで上の例文を使うと「十分な量(の食糧や飲物)を持っていた」と解釈することは可能です。
enoughの副詞での使い方
「good(良い)」「bad(悪い)」「hot(熱い)」「rich(お金がある)」「crazy(おかしい)」などの形容詞に対してenoughを使う場合(= 副詞として使う)には、後ろ側にenoughが来ます。
「enough hot」「enough good」ではなく、「hot enough(十分に熱い)」「good enough(十分に良い)」のようにenoughが後ろになります。
He is strong enough.
彼は十分に強い。
This knife is not sharp enough.
このナイフはあまり良く切れない。
(十分に鋭くはない)
It’s hot enough.
十分に熱い。
ただし、上のような例文は「何に対して十分なのか?」という部分が抜けています。彼は何と戦うのに十分に強いのか? ナイフは何を切るのに十分ではないのか? 魚を切るのか? 豆腐を切るのか? 熱さも部屋の気温なのかコーヒーの温度なのかの情報がありません。
上の例文でも通じるだけの文脈があればOKですが、文脈・コンテクストがないと成立しにくいです。
A: I got 70% on the test.
テストで70%とったよ。
B: That’s good enough.
十分にいいじゃないか。
このような会話の流れを作る必要があります。もしくは次に紹介するようにセンテンスの中で「何に対して十分なのか?」を説明する必要があります。
形容詞(動詞) + enough to + 動詞
この形で「◯◯するには十分な△△だ」みたいな表現ができます。実際に例文があるので使い方の参考にしてください。
It’s hot enough to wear shorts.
ショートパンツを履くには十分に暑い。
He is strong enough to lift a fridge.
彼は冷蔵庫を持ち上げるのに十分に屈強だ。
I want to be rich enough to buy a plane.
飛行機を買うのに十分なお金持ちになりたい。
I’m not young enough to go surfing.
私はサーフィンするほど十分に若くはない。
She isn’t fast enough to escape the police.
彼女は警察から逃げるほど十分に速くはない。
He worked enough to retire early.
彼は早期引退をするほど十分に働いた。
She didn’t run quickly enough to catch the train.
彼女は電車に間に合うほど十分に速くは走らなかった。
Only she is crazy enough to do that on TV.
彼女だけはそんなことをTVでやるのに十分なほどいかれている。
(そんなことをテレビでやるのは彼女だけだ)
kind enoughの意味と使い方
kind enoughは何か手助けをお願いする時に使う丁寧な表現です。
Would you be kind enough to drive me to work?
職場までおくってもらえますか?
Would you be kind enough to get me a drink?
飲み物をとってくれますか?
これはそのまま、手助けやお願いに応じてくれた相手にも使えるのでkind enough toで「親切にも~する、わざわざ~する」といった意味になります。
He was kind enough to lend me the money to buy a car.
彼はわざわざ車を買うお金を私に貸してくれた。
Everyone was kind enough to donate to my charity.
みんなが親切に私のチャリティーに寄付してくれた。
so kind as to
kind enough toはso kind as toでも同じ意味になります。以下の例文はすべて先に書いたkind enough toと同じ意味になります。
Would you be so kind as to drive me to work?
職場までおくってもらえますか?
Would you be so kind as to get me a drink?
飲み物をとってくれますか?
He was so kind as to lend me the money to buy a car.
彼はわざわざ車を買うお金を私に貸してくれた。
Everyone was so kind as to donate to my charity.
みんなが親切に私のチャリティーに寄付してくれた。
enough is enoughの意味と使い方
enough is enoughは「もういい、もう十分だ、うんざりだ」といった意味ですがニュアンスとして怒っている感じがでます。
したがってビールをもう一杯どうですか? ご飯をもっと食べますか? と勧められた時の返事として使うのはちょっと雰囲気が異なります。
会話では「enough is enough」だけで単独のセンテンスで用いられることが多いです。
Enough is enough. I quit!
もういいよ! やめた!
以下はチョコレートのゴディバが新聞広告で「もう義理チョコの習慣はやめよう」と伝えたニュースからです。
The Belgian chocolate maker Godiva has said enough is enough with Japan’s practice of women giving male coworkers giri-choco or “obligation chocolate.”
ベルギーのチョコレート製造会社ゴディバは、女性が男性の仕事仲間に贈る日本の義理チョコの習慣はもうたくさんだと言っている。
「have had it」も同じ意味の「もううんざりだ」ですが、こちらは後ろにwithを使って対象を指定することもよく見られます。
I’ve had it with this job. I quit!
この仕事はもういいよ! やめた!
ただenoughだけでも言い方によっては「もういい!」の意味になります。これはデモなどでも見られます。
She said “Enough!”
彼女は「もう十分!」と言った。
have had enough of
「~はもうたくさんだ、~にはうんざりした、~にはこりごりだ」といった意味で、悪い意味で十分なことです。
あまり他の時制では見られず「have had enough of」の形が残っているケースが大半です。
I’ve had enough of video games for one day.
今日はもうゲームはたくさんだ。
She said she’d had enough of my complaining.
彼女は、私の不満にもうこりごりだといった。
Let me know when you’ve had enough of my cooking.
私の料理がたくさんだってときには教えて。
fair enough
会話表現では「Fair enough(十分にフェアだ)」といった返事をされるかもしれません。
条件や提案を持ちかけた時に、最高ではないにしろ、OKが出せるぐらい十分に公平な取引・条件だから同意するの意味です。特にセンテンスにならず「Fair enough.」だけで使われることが多いです。
「いいだろう」「よかろう」ぐらいの感じの同意です。
A:I’ll give you $20 for your DVD.
20ドルをあげるから、あなたのDVDをくれるのはどうか?
B:Fair enough.
十分にフェアな取引だ。
oddly enough
妙な話だが、奇妙なことに、など予想しなかったことが起こった場合に使うことが可能です。
Oddly enough, she wasn’t angry when he stole her money.
奇妙なことに、彼が彼女のお金を盗んでも、彼女は怒らなかった。
She wasn’t angry when he stole her money, oddly enough.
(上と同じ意味です)
little enough
ちょっと考え方がややこしいですが「十分に小さい、十分に少ない」といった意味です。「十分」に「少ない」は日本語もすこし言葉の組み合わせとしてひっかかりがあるかもしれません。
以下のようなケースに使うことができます。「(今でも)十分に少ないのに、もっと何かをやれなんて無理です」みたいな流れで使います。
A: Can you work late tonight?
今日、夜勤で働ける?
B: No, sorry. I get little enough sleep now.
いいえ、すみません。今でも十分に寝ていません。(夜勤なんてなお無理です)
すでに小さい、少ない状態(十分に少ない)で、もっと何かをやれといわれた場合に「little enough」となります。
他にもenoughを使った表現はまだまだあると思いますが、見つけ次第書き加えていきます。
suffice
sufficeは「十分である」という動詞なので、「be enough」と同じ意味です。
You don’t have to read the whole book. The first two pages will suffice.
本を全部読まなくてもいい。最初の2ページで十分だ。
I’m not sure how much a new sofa is, but $500 should suffice.
新しいソファがいくらかわからないけど、500ドルで十分間に合うはずだ。