「病気」を意味する言葉も多いですが、使われやすい傾向があるもののネイティブスピーカーはほとんどの場合で入れ替えて使います。
「disease」「illness」「sickness」「disorder」の4つの病気に関連する言葉の違いをご紹介します。
事前のお断りとして、まず地域によっては違いが見られる点があります。
また医学用語・医療の世界では厳密に定義されているケースがありますが、ここでは一般人のネイティブスピーカーの日常会話+アルファ(ニュース文など)ではどう使うのかの傾向としてご紹介します。
◎はベストな表現、言葉遣いです。〇は一般的な表現です。△はこのような表現をする人がいても不思議ではないレベル、極端に変ではありません。×と赤色の囲み枠は明確に間違いだといえます。
この記事の目次!
illness / diseaseの違い
どちらも同じで、身体的な、もしくは精神的な問題、一般的な病気を指します。illnessはかなりよく見られる表現で、健康状態が悪いことに使われます。
diseaseは例えば心臓や腎臓などの身体の器官がうまく機能しない病気に使われることが多く、心臓病(Heart disease)やパーキンソン病(Parkinson’s disease)などで見られる表現です。
発音は以下の音声ファイルを参考にしてください。デジーズと濁るのは注意が必要です。
disease【dizíːz】
illness【ílnəs】
○ AIDS is a terrible illness.
○ AIDS is a terrible disease.
エイズはおそろしい病気だ。
どちらも可能な表現です。
精神的な問題に対してはillnessの方がよく使われますが、diseaseもときどき使われます。
○ Schizophrenia is a terrible mental illness.
△ Schizophrenia is a terrible mental disease.
総合失調症はつらい精神的な病気だ。
下段のdiseaseの例文はあまり使いませんが、可能な表現です。
sicknessの意味と使い方
病気だという気持ち、心の状態です。実際に病気でなくても使えるため、乗り物酔い(motion sickness)や、つわり(morning sickness)といった体調の悪さに対しても使われます。
発音は【síknəs】なのでそのままシックネスです。
◎ His absence was due to sickness.
○ His absence was due to illness.
○ His absence was due to disease.
彼の欠席は病気のためだった。
illnessもdiseaseも可能な表現ですが、diseaseは少しフォーマルな響きになります。
またsicknessは実際に問題があるかどうかははっきりしていませんが、気分が悪いなどの状態だと考えられるのでsicknessがベストな表現です。
逆にいえばsicknessは日常のちょっとした体調の悪さなどには使いやすい表現だといえます。メールなどで遠くの知人などに不必要な心配をかけない意味では言葉を選んでもいいと思います。
△ AIDS is a terrible sickness.
illnessやdiseaseと比べるとそこまで良い表現ではありませんが可能な表現です。
mental illnessとmental sicknessの違い
mental illnessとmental sicknessはどちらも精神的な病気を意味しますが、大きな違いがあります。
mental sicknessが意味するところは、邪悪な何かや非論理的なことを考えているような状態、しかしそれは実際に医学的に診断されるような病気とは少し違い「心の病、心が病んでいる」ぐらいの意味です。
Racism is a mental sickness that some people have.
人種差別は何人かの人々が患っている心の病です。
A:How was the horror movie?
B:Disgusting! The person who made it must be [mentally] sick!
A:ホラー映画はどうだった?
B:ひどかったよ! 制作者は(倫理的な観点から心が)病気に違いないさ!
同じ例文で違いを比べてみます。
○ Schizophrenia is a terrible mental illness.
△ Schizophrenia is a terrible mental sickness.
総合失調症はつらい精神的な病気だ。
どちらも可能な表現ですが、sicknessの例文は実際の病気ではないように聞こえるのでおすすめしません。
disorderの意味と使い方
通常の機能に影響を及ぼす精神的な問題、もしくは身体的な問題がある状態です。日本語では「障害」と訳されることが多いです。
発音は【disɔ́ːrdər】です。
生じさせている原因がはっきりしないときに特にこの表現が使われる傾向があります。
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)や摂食障害(Eating disorder)などで見られます。
以下の例文はいずれも「彼女はパニック障害を患っている」です。
○ She has a panic disorder.
△ She has a panic sickness.
disorderはベストな表現です。sicknessはおそらく可能ですが、実際の病気ではないように聞こえるのでおすすめしません。
× She has a panic illness.
× She has a panic disease.
illnessとdiseaseは原因がはっきりしていないので使えない表現です。
またdisorderは、その症状が人の健康に害を及ぼさない場合において特に使われる傾向があります。
以下の例文は「彼はまれな皮膚の病気/不調を患っている」です。違いを確認してください。
○ He has a rare skin disorder.
disorderだと健康状態は良いけれども、おそらく皮膚の色や表面が違うという意味です。健康を害しているわけではないため走る、食べるなど普通の生活には支障がないケースもあります。
○ He has a rare skin disease.
○ He has a rare skin illness.
diseaseとillnessはどちらも可能な表現で、皮膚ガンなどのような健康に影響する悪い種類の病気だと示しています。
× He has a rare skin sickness.
最後のsicknessの例文は変な表現です。
こういった大まかな分類・傾向があったうえで以下のように相互に置き換えが可能なケースも多いです。
○ Dementia is a terrible disorder.
○ Dementia is a terrible illness.
○ Dementia is a terrible disease.
△ Dementia is a terrible sickness.
認知症はひどい病気だ
いずれも可能な表現ですが、sicknessは他の3つほど良い表現ではありません。しかし間違いとも言い切れません。
clinical(クリニカル)をつけて強調する
日本語でもそうですが「私、LINE中毒なんだよね~」みたいな使い方をすると、本当の病気ではなく「個人的な意見、勝手にそう呼んでいる」みたいな感じがします。
これは英語でも似たような感覚になるケースがあります。
He is a gaming addict.
彼はゲーム中毒だ。
こう書くと、まるで個人が勝手に決めた意見のように見えます。
WHO(世界保健機関)は定期的に「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」と呼ばれる資料を出しており、ここで最近になって「gaming disorder(ゲーム障害)」が新たに掲載されました。
gaming disorderも普通の会話で言うと「スマホ中毒」「LINE依存症」みたいな、今のところその人の造語、単なる意見のような印象を少し与えます。英語のニュースサイトでも「gaming disorder」はイライラした親が勝手につけたみたいな名前だという声がありました。
こういったケースとの混同を避けるために医療の専門家から正式な認定を受けている、ある程度の信頼がおけるものだという意味で「clinical(臨床の、病床の、臨床治療の)」をつけて強調されることがあります。
「臨床」とは患者に接して診察・治療を行うことを指しています。わかりやすくいえば、身近な医学・医療の問題であるとするのが「clinical(クリニカル)」です。
勝手な意見や造語ではなく医者によってお墨付きがある医療的なものだという観点からclinicalを付け加えるとはっきりします。
He has a gaming disorder.
He has a clinical gaming disorder.
彼はゲーム障害がある。
これは「depression(沈んでいること、気が沈むこと、落ち込み)」などにも当てはまります。この単語だけでうつ病を指すこともありますが、必ずしもそうとは限りません。嫌なことがあれば誰でも落ち込みます。それも「depression」でありますが病気ではありません。
He fell into depression when he lost his job.
仕事を失ったときに、彼は落ち込んだ。
病気としてのうつ病だと明確にするためにはclinical depressionと書かれるケースがあります。
複数形と単数形について
illness、sickness、diseaseなどは可算名詞、不可算名詞どちらも使えます。
It can prevent a variety of illness (=illnesses).
それは様々な病気を防ぐことができる。
He often misses work because of sickness(=sicknesses).
彼はしばしば仕事を病気で休む。
上の例文のようなケースでは複数形・単数形(不可算名詞の扱い)のどちらでも可能です。
ただし、ある特定の病気1つについて言及しているときは可算名詞の扱いにする必要があります。
The common cold is a sickness that can be found all over the world.
風邪は世界中で見られる病気だ。
Many hope that AIDS will become an illness that has a cure.
多くの人はエイズが治療可能な病気になることを望んでいる。
syndrome(シンドローム)
カタカナでもシンドロームと聞かれますが「症候群」のことです。身体的もしくは精神的に悪い状態のことで、その状態の名前のなかで使われることが多いです。
She has a brother with Down syndrome.
彼女にはダウン症候群の兄がいる。
The police thought the hostages were suffering from Stockholm syndrome.
警察は人質たちはストックホルム症候群に苦しんでいると思った。
ストックホルム症候群とは誘拐事件などの被害者が犯人との間に心理的なつながりを築き、共感や同情といったプラスの感情を抱いてしまう状態です。
辞書ではsyndromeは医学的な問題にのみ使われると書かれていますが、医学的ではない有名なシンドロームに「チャイナシンドローム(一般財団法人環境イノベーション情報機構)」があります。
これは原子炉のメルトダウン事故の深刻さを誇張して表現した言葉で、アメリカから地殻を突き抜けて地球の反対側まで達するぐらいの深刻さを表しています。
しかし、これ以外に医学的ではないシンドロームに思い当たるものがないため、基本的には医学用語だと考えて問題ないと思います。チャイナシンドロームは映画のタイトルとしてもよく知られています。
Experts were worried the explosion at the power plant might cause a China syndrome.
専門家らはその発電所での爆発がチャイナシンドロームを引き起こすかもしれないと懸念していた。