「遅い」「遅れる、遅刻する」のような日本語を英語で表現する場合には「delay」「late」「slow」などが言葉選びの候補になります。
スピード・速度の話をしているのか? 時間の話をしているのか? 遅れる原因が自分であるのか? といった部分で言葉を選ぶことができます。
日本語では成立している表現でも、そのまま英語にできなかったりするので、それなりにややこしい話です。1つ1つネイティブの意見を聞きながら例文にまとめてみました。
この記事の目次!
lateの意味と使い方
lateは基本的には「時間」に対して使われる言葉です。lateの意味はいっぱいありますが、時間に関するものでいえば大きく2つの意味で考えることができます。
まず「遅い、遅刻の」といった使い方です。何かの予定していた時間に対して遅れているといった意味合いです。
前提としてlateは動詞ではありません。品詞としては「形容詞」または「副詞」の扱いです。以下の例文のようにbe動詞と一緒に使うことが多いです。
He is late.
彼は遅刻だ。
Students who are late will be punished.
遅刻した生徒は罰せられるだろう。
I’m sorry I’m late.
遅刻してすみません。
I can’t be late to my company’s orientation.
会社の説明会に遅刻はできない。
He got a warning not to be late again.
彼は二度と遅刻しないよう警告を受けた。
I was late so I combed my hair quickly.
遅刻したので急いでクシで髪をといた。
It’s too late to submit the application.
申込書を提出するには遅すぎた(期限切れ)
上の例文の場合はそもそも予定していた時間は不明ですが、それに対して遅れているので「遅刻している」といった意味になります。
Too little, too late.
小さすぎるし、遅すぎるし。
これはこういう表現というか、そのままの意味で映画のセリフなどでも登場します。「遅すぎるし(手遅れ)、小さい(足りない)」といった意味です。辞書には「今更これだけではどうにもならない」「手遅れである」みたいな訳がありました。
例えば私がすごくお腹がすいたといったのに、6時間後に飴玉を1つ与えられたら「足りないし、遅すぎるし」といった感じです。「遅すぎてダメ」と「足りな過ぎてダメ」がダブルで重なる瞬間って確かに人生にはあるんだと思います。ぜひ使えるタイミング探してください。
夜遅くに、夜遅くまで
もう1つが「夜遅くに、夜遅くまで」といった意味です。
映画のレイトショーなどがありますが、あれは何かに対して遅刻している、遅れているショーではなく、単に遅い時間(夜、深夜)に上映されるショーだという話です。
It’s late.
It’s getting late.
もう遅い時間だ。
A:Sally went to McDonald’s.
B:She’s only seven! It’s too late for her to go out by herself.
A:サリーはマクドナルドに行ったよ。
B:彼女はまだ7歳だ! 一人で外出するには夜遅すぎる。
夜の何時ぐらいを「late」とするのかは「夜遅く」が何時なのかと一緒でけっこう感覚的で曖昧です。
「遅刻」なのか? 「夜遅く」なのか?
lateの「(予定時刻より)遅れて、遅刻して」と「夜遅くに」は文脈で判断するしかなく、短い文章だとどっちでもとれます。
The concert started late.
= コンサートは夜遅くに開始した?
= コンサートは遅れて開始した?
The concert’s beginning was late.
= コンサートの開始は夜遅かった?
= コンサートの開始は遅れていた?
以下の文章ですら2パターンで読むことは可能です。けっこう言い方や前後の文脈にもよるので、なんともいえない部分があります。
It’s too late to submit the application.
= 申込書を提出するには遅すぎた(期限切れ)
= 申込書を提出するには夜遅すぎる(窓口が閉まっている)
いきなりある部分だけ切り取られて、それだけで判断するのはネイティブスピーカーでもちょっと無理があるといった話です。
日本の「遅れている」からの翻訳の問題
日本語だと「プロジェクトが遅れている」「コンサートが遅れている」といった言い方をしますが、これをそのまま英語にできません。
Our project is late.
(意味がはっきりしない)
The concert is late.
(意味がはっきりしない)
プロジェクトもコンサートも普通は開始と終了の時間があって、だいたい数時間から数日間など期間がある程度は続きます。
「プロジェクトが遅れている」「コンサートが遅れている」と日本語で書いても同じ疑問が浮かびますが「プロジェクトの何が遅れてるのか?」となります。開始なのか、終了なのか、進行度合いなのか、はっきりしません。
文脈によってわかる場合もありますが、場合によってはほかの言いまわしで情報を補う必要があります。
The party will start later than planned.
パーティーは予定より遅れて開始するだろう。
Our project is behind schedule.
私たちのプロジェクトはスケジュールから遅れている。
lateの後期、後半、故人の意味
今回の本題ではありませんがlateはほかにも「故人」を表したり「後期、後半」といったいろんな意味があります。
My late father loved chocolate.
亡くなった父親はチョコレートが大好きだった。
これも同じく読み違える問題が起こりうる可能性があります。
Late students will be punished.
遅刻した生徒は罰せられるだろう。
上の例文も普通はそうは読みませんが文章としては「亡くなった生徒は罰せられる」と読めなくもないです。もしこういった誤解を招くならば書き換えてもいいと思います。
Students who are late will be punished.
遅刻した生徒は罰せられるだろう。
他にもあるので以下の記事もあわせてご覧ください。
slowの意味と使い方
lateが時間(hour)につながっている概念に対して、slowは速度(speed)につながっている概念です。わりと考え方としてはわかりやすいです。
His car is slow.
彼の車は遅い。
A turtle is slow.
亀はのろい。
Evolution is a slow process.
進化はゆっくりとしたプロセスだ。
The local train is slow.
各駅停車は遅い。
△ His work is slow.
彼の仕事は遅い。
He works slowly.
彼はゆっくりと働く。
上のように「彼の仕事は遅い」は日本語だと問題ありませんが、そのまま英訳するよりは、この場合は副詞のslowlyを使い動詞のworkとあわせて「彼はゆっくりと働く」としたほうが自然な英語になります。
時計が遅れる
「時計が遅れている」は英語でどういうかといえばslowを使います。はやくなるのはfastです。
My watch is slow, maybe I should change the battery.
時計が遅れている。たぶん、電池を変えるべきだろう。
I set my alarm clock five minutes fast.
目覚まし時計を5分はやく進めている。
My watch is late.
(この言い方をしない)
日本人の考え方だと「時計が遅れている」となるのでlateを使ってしまいそうですが、英語では「時計の針の動く速度が遅くなっている(slow)」という感覚でとらえているという話です。
これは二人で一緒にジョギングをやろうみたいな状況でも同じです。同じペースで走るから遅れるなよといった場合にはslowです。
Don’t be slow.
遅れるなよ。
Don’t be late.
遅刻するなよ。
一緒にジョギングして走っているならば「Don’t be late. (遅刻するなよ)」は変です。日本語に訳すといけそうなんですが、英語では無理です。
delayの意味と使い方
基本的には「〇〇を遅らせる、〇〇を延期する」の使い方だと考えていいと思います。他動詞での使い方です。
何か他の物体・人間などを「遅くする」であって、「(自分が)遅れる」には基本的には使わない言葉です。
A storm delayed her flight.
嵐が彼女のフライトを遅らせた。
I delayed my decision until I could learn more about it.
私はそれについてもっと分かるまで、決定を延期した。
「(自分が)遅れる、ゆっくり進む、先延ばしになる」のような使い方もできますが、それは以下のような形です。
これらは本質的にはdelay oneself(自分自身を遅らせる)の「oneself」の省略のような性質であって、結局は「〇〇を遅らせる」に戻ってきます。
You can’t delay any longer. They need an answer now.
もうこれ以上、先延ばしにはできないよ。彼らは今、答えが必要なんだ。
Order now! Don’t delay!
今すぐご注文を! グズグズしないで!
広告などで使われるような表現です。自分自身を遅らせないでといった感じの解釈になります。
(be) delayed
be delayedのような形で書くと、受動態・受け身の文章に読まれる可能性が高く、何かによって「遅延させられた」といった意味を含んできます。
He is delayed. (by something)
彼は遅らせられている(何かによって)
実際に交通機関では「(be)delayed」が使われることが多いそうで、暗に「(天候などほかの要因によって)遅らせられた。(俺たちは悪くない)」と伝えていることになります。
〇 The next train will be late.
次の電車は遅刻しています。
◎ The next train will be delayed.
次の電車は(何か外的な要因によって)遅らせられる。
電車が定刻通りに到着しないことに変わりはなく言っていることは同じですが印象が変わります。
遅れている時間、遅延時間(名詞)
名詞では何かが遅れている間の時間を指し「遅れている時間、遅延時間」を意味します。
I spent the delay reading a book.
私は本を読みながら遅れている時間を過ごした。
There was a three-hour delay for the train.
電車に3時間の遅延があった。
experience a delayは普通の人はあまり使いませんが「遅れる(遅延を経験する)」の丁寧な表現です。電車や飛行機などの交通機関のアナウンスでは使われることが多いので、注意深く聞いてみてください。
Our flight is currently experiencing a delay due to bad weather.
フライトは現在、悪天候のために遅延が発生しております。
普通の言い方でも十分に意味は伝わります。友達などに伝えるには以下の形で十分です。
My flight is delayed because of the weather.
天気のせいでフライトが遅れてる。
late、delay、slowの違い
それぞれ品詞が違うので何も考えずに単純に置き換えることができません。最低限の文法の正しさを整えたうえでネイティブスピーカーが感じる違いを比べてみます。
He is late.
彼は遅刻している。
He is slow.
彼は(動きなどが)遅い。
He delayed me.
彼は私を遅らせた。
He is delayed.
彼は遅らせられている。
彼は(何かによって)遅刻している。
lateは単に彼が遅刻しているだけです。be delayedで書くと受動態のようになって「何かによって遅らせられた」といった感じになります。
例文によるlate、delay、slowの使い分け
もう1つ表現を比べてみます。
My car is late.
車が遅刻している?
(これだけでは意味がわからない)
車が勝手に遅刻はしないので、もう少し文脈が必要です。
My car is slow.
私の車は遅い。
slowは最もまともな例文で車のスピードが遅いという意味です。
My car is delayed.
車が遅らせられている?
(これだけでは意味がわからない)
またdelayedで書いても「何によって?」といった疑問が浮かびます。もう少し前後の文脈がはっきりしていれば見かけるかもしれません。
さらにもう1つ表現を比べてみます。
Don’t be late.
遅刻するな。
「Don’t be late.」はお母さんや先生、上司がいうことです。
Don’t delay.
ためらうな。
Don’t delay. は「ためらうな」であり、広告などによく使われる表現です。
Don’t be slow.
遅れるなよ。
上の例文だと速度を遅くするなといった意味で、一緒にジョギングするような場合にはあるかもしれません。もしくはスラングでslowには「頭が悪い」みたいな意味があるので「バカなことやるな」みたいな解釈をされるかもしれません。