文化の盗用(cultural appropriation)の意味は?

cultural appropriation

cultural appropriationは「文化の盗用」と訳されることが多いですが、意味としては「文化の私物化」ぐらいが近く、勝手に縁もゆかりもない文化を借りてくるような行為として批判されます。

ここ数年でcultural appropriationとして話題・論争になった事件やニュースなどを事例としてご紹介します。

行為そのものが単独で切り離して批判されるわけではなく、その背景や状況までセットになっているケースが多いです。また誰が誰を批判するのかといった問題もあります。

cultural appropriationの意味

最近よくニュースでも聞く言葉が「cultural appropriation(カルチャル・アプロプリエイション)」です。

「文化の盗用」「文化の剽窃(ひょうせつ)」と訳されることが多いですが、appropriationには「私物化」といった意味もあり、たいてい相手の許可なく勝手に使うようなことを指します。したがって「文化の私物化」と訳したほうが近いと思います。

stealing(盗むこと)と重なる部分も多いですが、「盗用」とは微妙なニュアンスの差があります。

例えば寿司、侍、忍者などの一般的に日本の文化だと言われているものを「それはわが国の文化です!自分たちの文化です!」とすることは「文化の盗用」だといえます。

cultural appropriationはそこまではいっていなくて、勝手に使っているだけであり、別に起源や元祖であるとまでは主張している感じでもありません。

cultural appropriationが批判されるのは特に自分にまったく縁もゆかりもない文化を、ただエンターテイメントや目立ちたいため、商売の道具として私物化するケースです。

誰が批判するのか?

誰が批判するのかも問題で、例えばまったく日本にゆかりのないアメリカ人が着物を着てインスタにあげるとcultural appropriationだと批判されるケースがあります。

この場合は主にアメリカ人側からパクった人に対して「それは他国の文化の私物化だ、文化の盗用だ」と批判するケースが目立ちます。

日本人側も反応が2つ考えられ「日本の文化を紹介してくれてありがとう」みたいなポジティブな反応もあれば、「いや、あなた日本に関係ないでしょ」といった批判も想定できます。

意見が割れたケースには、アメリカの高校生がチャイナドレスを着てツイッターにあげた事例があります。けっこう古くからある指摘ですが、いくつかここ数年で話題になったものなどを事例として取り上げてみます。

文化の盗用として論争になった例

事例

上の写真のように京都に来た外国人観光客がレンタルで浴衣や着物を着ることをcultural appropriationと呼ぶ人はほとんどいないと思います。

それがcultural appropriationにあたるのかどうか、誰が判断するのかといった問題が常にありますが、ネットを中心にここ数年でcultural appropriationの例として話題・論争になったものをご紹介します。

例えば同じ「日本の着物を身に着ける」という行為であっても、中国人が着る、白人が着るでも状況が変わり、日本で行うのとアメリカで行うのではまた意味が異なります。

有名人の場合ならば仕事でやるのと、プライベートのインスタやツイッターに写真をあげるのでも状況が異なります。

友人がいる、過去に訪れたことがあるなど当事者がどれほどその文化とつながりがあるのかも関係します。

行為単独ではなく、文化的な背景やそこにいたる文脈、その社会におけるマイノリティーとマジョリティーの関係などが総合的に判断される傾向があります。

ただし、もっと深い部分では「cultural appropriation」なるものが本当に存在するのかや、文化とは誰かの所有物なのかといった根源的な問いも存在しています。他国の文化の影響をまったく受けないのは不可能であり、なぜ今の時代になって目立って取りざたされるのかといった問題もあります。

ミランダ・カーと着物

数年前にオーストラリア人のミランダ・カーが雑誌「vogue」の表紙で、日本文化にインスパイアされた衣装を着たときも、英語の文化圏から「cultural appropriation」だと批判されていました。

着物や鎧武者、初音ミクにインスパイアされた衣装で「Vogue Japan」の表紙を飾っています。

ミランダ・カー

日本人からするとあまり悪い気はしませんが、こういう行為をよしとしない意見が広くあります。

この場合、批判があったのは海外からであり、日本側からは文化の盗用の面ではあまり文句を言う人はいませんでした。その初音ミクのコスプレどうなん…といった意見は確かにありましたが。

この場合は明らかに仕事でありミランダ・カーもやりたいと思ったのか、実は嫌がっていたのかは不明です。ただネットでは写真のみが出回るので、そういったバックグラウンド、事情が失われ写真単独で判断されがちです。

イスラエル人シンガーとバカ・招き猫

2018年の音楽コンテスト「ユーロビジョン」の優勝者Netta Barzilaiさんが日本文化のcultural appropriationだと批判を受けていました。

着物風の衣装を着ており、背後には金色の招き猫が並べられています。この曲『TOY』の歌詞には「BAKA(バカ)」が頻繁に登場しています。実際のパフォーマンス映像を見ることができます。

これも日本人が批判するというよりも、海外からcultural appropriationの声があがっていました。

日本人側からはそういった指摘に「くだらないことにマジになりすぎじゃない」といった声もありました。確かに真剣に怒る人もいるかもしれませんが「なんだこりゃ」といった反応も多そうですね。

日本文化というか衣装や髪型を見ると中国やベトナムあたりが交じり合っている感じもあります。また彼女への批判は政治的なイスラエル批判と一緒になっている部分もありました。

チャイナドレスを着たアメリカの高校生

2018年にアメリカのユタ州の高校生が、高校で最後に開かれるダンスパーティーのプロム(Prom)にチャイナドレスを着ていったことで批判を受けています。

ある中国人の「白人のあなたに自国の文化をそのように使ってほしくない」といったコメントから論争は広がっています。手を合わせているポーズなども批判の対象になっていました。

中国人側からの意見で「素敵なドレスですね、似合ってますよ」と好意的なものも多いですが批判的な意見もあります。

特に中国人がアメリカ社会ではマイノリティーである点や、白人である女子高生との関係なども含めていろんな背景が取り巻いています。

彼女自身は素敵なドレスだったので着たと説明しており、むしろ中国の文化に敬意を払っているつもりだったので驚いている様子でした。不愉快に思った人には申し訳ないと思うけれど悪いことをしたとは思わないのでツイートは消さないとコメントしています。

インディアンスのロゴ

スポーツ関係でもずっと指摘があるのがMLBのクリーブランド・インディアンス(Cleveland Indians)のロゴに使われているネイティブアメリカンのイラスト(Chief Wahoo:ワフー酋長)です。

結果的に2019年シーズンからこのロゴを取りやめるそうです。長年親しまれてきたロゴで、映画『メジャーリーグ』の舞台となったチームなので知名度も高いです。

インディアンス

アメフト(NFL)のワシントン・レッドスキンズ(Washington Redskins)にも同様の抗議があります。

クリーブランド・インディアンスの場合は名称はあまり問題にされず、マスコットの赤い肌や目の造形などが外見を揶揄しているといった指摘があります。レッドスキンズは名称そのものが争点になっています。

この場合はcultural appropriationの意味もありますが、もう少し差別問題によった論争だといえます。

このアメリカの問題については「インディアン・マスコット(wikipedia)」にまとめられていました。

三国志・西遊記

孫悟空

日本でも中国の古典である三国志は大人気で古くは吉川英治の小説や横山光輝の漫画、ゲームではコーエーテクモゲームスの三國志シリーズや三國無双シリーズなど大人気です。アニメでも三国志をモチーフにした女性キャラクターが活躍する『一騎当千』などもあります。

また西遊記は堺正章、夏目雅子が主演だったテレビシリーズやドラゴンボールのモチーフになっています。

こういった中国の古典作品を利用しているのでcultural appropriationにあたるといった指摘もあります。

三國志シリーズや三國無双シリーズは本場でも人気ゲームで中国の人々も楽しんでいる反面、いきすぎた改変などには不満の声があがることがあります。古くは三蔵法師のキャスティングが女性になっていたことなど、日本人には受け入れられることでも、中国から違和感や反発の声があったと聞きます。

オーストラリアの靴「uggs(アグス)」

オーストラリアの靴「uggs(アグス)」

オーストラリア・ニュージランドでは100年以上にわたって、羊の皮で作った靴を「uggs(アグス)」と呼んでいました。

1978年にオーストラリア人の青年が、ブーツタイプのアグスをアメリカに持ち込み、ニューヨークとカリフォルニアで販売を開始すると人気を博します。オーストアリア人の青年はこのブランドを母国にちなんで「UGG Australia」と命名します。

今日、日本でアグといえば、この「UGG Australia」ブランドを一般的には指します。後に「UGG Australia」社は大手のデッカーズ社の傘下になります。

今でもオーストアリアに行けば、さまざまなお店でさまざまな伝統的な「uggs(アグス)」が販売されています。しかし、デッカーズ社はオーストラリア人に対してアグスを海外で売ることを差し止めてきました。

無理に日本に例えてみると、どこかの日本人がアメリカに渡り、ニューヨークで「ゲタ」を販売します。たまたまセレブの間で大ヒットします。その日本人は「GETA : JAPAN」というブランドを作ります。

後にGETA : JAPAN社はNIKEに買収されてNIKEの参加になります。ここでNIKEが日本各地のゲタ製造会社に対して「ゲタって名前を使うのはやめろ!海外でも販売禁止」と言ってきているような感じなのが、オーストラリアとアメリカの論争です。

オーストラリア人のカールとソリに聞いてみましたが、冬にはこの靴をよく履いていたそうです。むしろアメリカでこのお店をみつけてびっくりしたそうです。この名前を使うなというのは「スニーカーっていうな」や「ゴミ箱って名称は使うな」レベルの話なので、さすがにありえないといっていました。

以下は文化の盗用とセットで語られることも多い「ホワイトウォッシュ」「ホワイトウォッシング」については以下の記事をご覧ください。映画のキャスティングで原作などを考慮すると他の人種が演じるべき役柄を白人が代わってキャスティングされるケースなどで話題になります。広い意味でのcultural appropriationと考えることもできます。

   


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