「wake(目が覚める、人を起こす)」の過去形である「woke」は、古くから差別問題や人権問題などに対して「意識している、自覚している、目覚めている」といった意味でスラングとして使われてきました。
しかし、近年になって「過度に意識が高い人々」「差別問題や人権問題に対して過剰に意識する」といったネガティブ、否定的な意味でも使われるようになっています。簡単にですがスラングとしてのwokeの使われ方を整理してみました。
本来の意味での「目覚める」については『wake up / awake / awakenの意味の違いと使い方』をご覧ください。
この記事の目次!
wakeの過去形としての「woke」
基本的には「wake(目が覚める、人を起こす)」の過去形と考えられます。
wake upのように「up」を入れてもOKです。wake upとするほうがより一般的で、ないと少しフォーマルに感じるといった差です。
〇 The loud noise woke me.
= ◎ The loud noise woke me up.
大きな音が私を起こした。
〇 After I woke, I brushed my teeth.
= ◎ After I woke up, I brushed my teeth.
起きた後で、歯を磨いた。
wakeの過去形と過去分詞
wakeの過去形と過去分詞は2パターンあります。
過去形をwokeまたはwakedとするパターン、過去分詞をwokenまたはwakedとするパターンです。
①wake【wéik】 – woke【wóuk】 – woken【wóukn】
②wake – waked – waked
何人かのネイティブスピーカーに確認しても①が主流です。このサイトでは①を採用しています。この「目が覚める、人を起こす」の本来の意味でのwokeの使い方については以下の記事にまとめてあります。
スラング:woke(気が付いている、目覚めている)
近年はこの「woke」が形容詞として、「気が付いている、目覚めている」などの意味で、特に社会的な不平等に気が付いているといった意味で使われるのが目立っています。
He thinks he’s woke because he read one book by Malcom X.
彼は彼自身をWOKE(気づいている)と考えている。なぜならマルコムXのある本を読んだからだ。
He is hoping more people become woke about police violence against minorities.
彼はより多くの人がマイノリティーに対しての警察の暴力についてWOKEになればいいと思っている。
「stay woke」は直訳すると目覚めている状態で居続ける、つまり社会的な不平等や差別、人権問題、環境問題などに対して意識を高く持ちつづけるといったスローガンです。
ウィキペディアによれば1930年代までに黒人英語として登場していたそうですが、近年になって広く使われるようになっています。
Woke(ウィキペディア)
批判的な意味でのWoke
Wokeはさらに近年になって、主に右寄りの人々から、マイノリティや少数派に対して過度に肩入れする人々を否定的な意味で指して使われています。
社会的不公正、人種差別、性差別などに対して過度に意識が高い人をネタにして「あいつらはWokeだ」といった感じで呼ぶ光景が見れます。
日本ではちょっと前は「意識高い系」といった表現でからかっている感じでしたが、方向性・考え方としては似ています。
She said she would vote against President Biden and his woke policies.
彼女は、バイデン大統領とそのWokeな政策(意識高い系な政策)に反対票を投じるといった。
He quit social media because he said it was full of “woke libs”.
彼がSNSをやめたのは、SNSが「Wokeのリベラル」でいっぱいだと言っていたからだ。
wokeは基本的には良い意味で社会問題に意識が高いことですが、それがネタとして「過度に意識が高いやつら」といった否定的に使われているケースもあって、どっちの意味で使われているのか判断するのが難しいです。
実際にどんなものがwokeなのか?
映画や音楽あるいは人を指して「あれはWokeだね」「彼女はWokeだね」といった感じで使うのだと思いますが、スティーブに聞いてみたところけっこう若者寄りの言葉であり、自然にどのように使われているのかははっきりしないそうです。
ネイティブだからといって全員が全員なじみがある言葉かといえばちょっと違うそうで、使わない人はまったく使わないのかもしれません。左派より言葉として使われている感じがありました。
そして、近年のソーシャルメディアを中心に「意識高いやつら」といった感じでWokeがポジティブに使われることよりも、否定的な意味合いで用いられることが多い感じもあります。ポジティブな意味でWokeが使われているケースを探すのがちょっとむずかしいぐらいです。
2022年にバスケットのスーパースター、レブロン・ジェームズがWokeをポジティブな意味で使っていますが、以下の記事の取り上げ方を見てもポジティブな意味でのWokeがちょっとスタンダードではなくなっている感じもあります。
LeBron James Reveals If He Thinks He’s ‘Woke’(The Spun)
“Anti-woke”なサービス
アメリカでは「Woke」に対して反発するようなサービスも立ち上がっており、うまくいきませんでしたが「グロリフィ(GloriFi)」と呼ばれる「アンチ・ウォーク」を掲げる金融スタートアップもありました。
Anti-woke banking startup GloriFi shuts down(Finextra)
保守派や銃規制反対派などの中には「社会的不公正、人種差別、性差別などに対して過度に意識が高いこと = Woke」に反感を抱く人もおり、そういった「アンチ・ウォーク」の旗印を挙げた銀行サービスでした。
アメリカの金融街ウォール・ストリートで働く多くの人がリベラルであり、そういったウォール・ストリートとはちょっと違う立ち位置の銀行サービスという意味でもありました。
とはいえ、業務的に特定の人種にはお金を貸さない、といった人種差別的な銀行サービスではなく、単に保守派をターゲットにした銀行といった立ち位置でした。銃の薬莢と同じ材質でクレジットカードを作る計画などがありましたが太すぎてクレジットカード端末に通らないといった理由から断念されていました。
こういったWokeに対して明確に反対をしたり、過度の配慮された感じでの映画やドラマ、作品、政策などに対して「Woke」とはっきりとネガティブな意味で呼ぶ傾向が強まっています。