upsetは大きくわけると日常会話では相手を困惑させる、動揺させるなど、不愉快な気持ちにさせること全般を指して使われます。日本語でぴったり合う言葉が見つかりにくいです。
もう1つはスポーツ関係での「番狂わせ、波乱」といった使い方で、負けると思われていたチームが勝ってしまうこと、優勝候補と思われていたチームが負けることです。
この2つの意味での使い方があるので、例文に整理しています。
この記事の目次!
upsetの意味と使い方
upset(アプセット)は悲しい、怒り、悪い、不快な気持ち、困惑、動揺などネガティブな感情をすべて含む概念です。
日本語で完全にぴったり合う言葉を探すのが難しいところですが「気が動転して、取り乱して、ろうばいして、イライラして」ぐらいの訳があります。
以下はグーグルの画像検索の結果です。いろいろなネガティブな感情の人が現れますが、これだという決まったものがつかみにくいです。
また「動揺させる(動詞)」「動揺した、困惑した(形容詞)」「動揺、イライラ、困惑(名詞)」など、3つの品詞で使うことができます。
Don’t upset the children.
子供たちを動揺させるな。
He upsets Taiwanese.
彼は台湾人を怒らせる。
I was upset after my dog ran away.
犬が逃げ出してから困惑した。
You look upset. Is everything OK?
困惑しているようにみえる。大丈夫?
ただし名詞での「困惑」での意味はあまり見かけません。名詞では次に紹介する「番狂わせ」の意味が多いです。いちおう名詞での例文も書いておきます。
I’m sorry for causing you so much upset.
たくさん不快なことを引き起こして申し訳ない。
bugにも同じような意味があります。
upsetの過去形・過去分詞
upsetは過去形も過去分詞もそのまま「upset」で変化がありません。したがってシンプルな文章を書くと、形容詞なのか受動態なのか、過去形なのか現在形なのかわかりにくいケースがあります。
He was upset.
不快だった? 不快にさせられた?
「彼は困惑していた、不快だった」と「彼は(誰かによって)困惑・不快にさせられた」の両方の解釈が可能です。使い方によっては文章を不明瞭にさせてしまうのでご注意ください。
upset stomach(胃のむかつき)
少し独自の組み合わせになるのはupset stomachのような表現で、胃のむかつきのような意味になります。
特に深刻なわけでも、痛いわけでもないのですが、むかむかするような不快な感覚です。
Seafood always gives me an upset stomach.
海産物を食べると、いつも胃のむかつきがある。
I went home early because I had an upset stomach.
家に早く帰った。なぜなら胃のむかつきがあったからだ。
スポーツの番狂わせ・波乱の意味でのupset
upsetはスポーツ関係のニュースなどで「番狂わせ、予想外の結果」の意味でよく使われます。順当に勝つと思っていた本命・強豪が負けてしまう試合のことです。
もともとは順番が狂うことに由来するそうですが、スポーツで使われるようになった背景には相撲の「番付」つまり格下の力士が横綱などの格上を倒してしまうことの影響も強いようです。
英語のupsetは名詞でも動詞でも使うことができますが意味は同じです。過去形か現在形か見分けるのが難しいですが三単現の「S」のあるなしなどで判断してください。
The underdog upset the champion.
伏兵がチャンピオンを番狂わせで倒した。
Japan upset South Africa.
日本が南アフリカに番狂わせの勝利をした。
Japan beat South Africa in an upset.
日本が南アフリカに番狂わせで打ち破った。
名詞で使った場合は「in a major upset」のようにmajorを入れて番狂わせから「大番狂わせ」のように強調した表現にもなります。
Japan beat South Africa.
日本が南アフリカを破った。
beatだけだと普通に「勝った・勝利した」のニュアンスしかありません。upsetは明らかにどちらかが格下、実力が落ちる場合にのみ使います。
ジャイアント・キリング
たまに「giant killing(ジャイアント・キリング)」という表現で番狂わせが語られることがありますが、この表現はそこまで英語圏のニュースでは見かけません。
ひょっとしたら地域差はあるかもしれません。日本でもツジトモさんのサッカー漫画になっているので知名度のある表現です。
意味は「巨人を殺す」で旧約聖書の巨人兵士ゴリアテを羊飼いの少年ダビデが倒す話が元になっています。ここから「David-and-Goliath」の表記は見かけることができます。
以下はかなり前のニューヨーク・タイムズの記事です。
“On Internet, David-and-Goliath Battle Over Instant Messages”(The New York Times)
「ネット上でインスタントメッセンジャーを巡るダビデとゴリアテ」といった見出しで、小さな会社がAOLという巨大な企業を打ち負かす番狂わせがあった話です。「David-and-Goliath」は発音が英語式になっているので「ディヴィッドとゴライアス」です。声に出すときは注意してください。
どちらにしろ、このような番狂わせを表現するには「upset」がもっとも頻出の表現といえますね。
favorite / dark horse / underdog
これらもupsetに関係してニュースによく登場します。favoriteはお気に入り以外にも「本命」の意味があり、その場合にはthe favoriteになります。
The Blue Jays are my favorite team.
ブルージェイズは私のお気に入りのチームだ。
The Blue Jays are the favorite team.
ブルージェイズは優勝候補だ。
dark horse(ダークホース)は別に弱いわけではなく実力がわからない人を指しています。
There are a few dark horses in this year’s tournament.
今年のトーナメントには何人かのダークホースがいる。
underdogはそもそも勝ちそうにない人を指しています。日本語では伏兵、大穴といった感じでしょうか。underdog victoryも「番狂わせの勝利」としてupsetの名詞と同じ意味になります。
The underdog upset the champion.
伏兵がチャンピオンを番狂わせで倒した。
基本的にはunderdogは勝ち目がない人全般に使うことができます。これはスポーツ以外でも使えます。
In this match the undefeated team have become the underdogs.
この試合では、あの無敗のチームが、アンダードッグになる。
He is a successful lawyer, but he’s an underdog in the world of politics.
彼は成功した弁護士だが、政治の世界ではアンダードッグだ。
アンダードッグになる人は普段から負けているので「負け犬」と考えても近いです。
しかし、地域で無敗の強豪アマチュアチームでも、トッププロと試合するとアンダードッグになってしまう可能性もあるので「負け犬」とは少しニュアンスが違うのかなという感じもあります。
シンデレラストーリー(Cinderella story)
シンデレラの話は様々な示唆を含んでいるのでよく引き合いに出されます。カタカナにもなっているシンデレラストーリー(Cinderella story)は英語でも同じ概念として使えます。
特に最も下にいる人が、最も上にたどり着くといった意味で男女の性別関係なくスポーツなどでも使われます。これも一種の番狂わせだといえます。
The team’s victory in the championships was a real Cinderella story.
チャンピオンシップでのチームの勝利は本物のシンデレラストーリーだった。
upsetと番狂わせの語源
upsetがなぜ「番狂わせ」を意味するようになったのかは以下の英語の記事が詳しいです。
Origin of the Word Upset(Forbes)
アメリカの競馬の歴史に残る最強の名馬マンノウォー(Man O’ War)が、1919年のサラトガ競馬場で行われたレースで、同じレースに出場していた馬Upsetに負ける大波乱がありました。
マンノウォーにとって唯一の公式戦の敗戦(21戦20勝)で、ここからupsetが「場狂わせ」を意味するようになったとする説が信じられていました。
後に研究者が1877年にはこの用法が存在していたことを突き止めており、この説は誤りだといっています。しかし、この競走馬のupsetが広く「番狂わせ」の意味でスポーツ界で使われるようになったことに大きく影響を与えているのは事実だと書いています。
日本のガッツポーズの由来も似たような話がありますね。