英語のstretch(ストレッチ)は伸びる、伸ばすことであり、カタカナのストレッチ運動などと同様に準備運動的なものに対しても使えます。
しかし、英語のstretchのほうがその「伸びる、伸ばす」の意味がカタカナよりも広く、ストレッチ運動以外にも伸ばすこと全般に使うことができます。
根本にあるイメージは伸びることにあるので、そこまで日本人が想像するものより意味がかけ離れた使われ方をしているわけではありません。
ストレッチ体操
カタカナで使うストレッチ、柔軟体操のような動作を指してstretchを使うことは可能です。伸ばすことを表す動作なので、縮む意味が特に含まれてはいません。人間の身体の場合は伸ばした筋肉は縮みますが伸ばすことを主にした表現です。
He took a break for a minute to stand up and stretch his legs.
彼は立ち上がって足をストレッチするために1分間休憩をとった。
She started her workout without stretching first.
彼女はトレーニングを最初にストレッチをせずに始めた。
動詞:伸びる、伸ばす
カタカナとの違いはストレッチ運動以外の、伸ばすような動作を全般的に表せる点です。
たとえばテーブルの向こうにある塩に対して、手を伸ばして取った場合などにも使えます。
I stretched across the table to reach the salt.
私は塩を取ろうとテーブルを横切って手を伸ばした。
この例文では足の可能性も否定できませんが普通は手でしょう。stretch acrossは熟語というよりもacrossの意味がそのまま使われています。
また人間以外のものに対しても使えます。例えば伸縮性のあるものに対して用いることができます。
This steel plate won’t stretch.
この鉄のプレートは伸びないだろう。
We used a material that stretches well, like rubber.
私たちはゴムのような、よく伸びる素材を使った。
My wallet is all stretched out because of my many cards.
私の財布は多くのカードのためのびきってしまった。
革の財布などがべろんべろんに伸びてしまうことを意味しています。
似た概念として弾力があることについてはelasticityが用いられます。
The elasticity of rubber is high.
ゴムの弾力性は高い。
道路や線路が伸びている
そのまま道路や線路が伸びていることを表す動詞にもなります。もちろん勝手に道路が伸びるわけではなく誰かが建設したからですが、日本語に近い「東京まで道路が伸びている」の感覚で英語でも使われています。
This road stretches to California.
この道路はカリフォルニアまで伸びている。
This road stretches on and on.
この道路は長々と続いている。
ほかにも何かとても長いモノに対して使うことができるので例文をあげておきますが、道路に対して使われることが圧倒的に多いです。
The bridge stretches for five kilometers.
その橋は5キロにわたって伸びている。
The border stretches from the Pacific Ocean to the Atlantic Ocean.
国境は太平洋から大西洋まで広がっている。
道路(stretch of road)
stretchはたびたび道路や線路に対して使われます。言い換えればsection of roadであり、道路のある部分、場所などを指します。
競馬場や陸上競技のゴールラインがある直線を「home stretch(ホームストレッチ)」と呼びますが、これも同じ考え方でトラック、コースの特定の区間を指して使われます。
しかしstretch of roadといった場合には、特に直線である必要はありません。ホームストレッチも別に直線でなくてもかまわないと思いますが、競技特性や見栄えを考慮すると最後は直線にならざるをえません。
なかなか日本語に訳しにくい概念かもしれません。
There is a 10 meter stretch of this road where many accidents happen.
この道路には10メートルの頻繁に事故がおこる場所がある。
Parts of the exploded truck could be found all along a stretch of highway 61.
爆発したトラックのパーツが、高速61号道路のある部分のいたるところで見つかった。
実際のニュースから表現を拾ってみます。
島根で自動車走行中に起こった落石の記事ですが「島根の道路を走っているとき」などのように書くと島根の道路の全域を指してしまうので、ある特定の道路の区間であることを指しています。
The victim, a native of Hiroshima, was driving along a stretch of road in Oonan, Shimane, when her car was crushed in a landslide caused by strong winds.
この犠牲者は広島出身で、島根県の邑南(おおなん)町で車で道路を走っていた時に、車が強風によって引き起こされた山崩れにぶつかった。
a bit of a stretch(こじつけ・無理やり)の意味
これはよく見られる表現で根本の考え方は「ちょっと伸びすぎている」みたいな意味で、物事が少し強引にこじつけられたり、言い過ぎである時に使われます。
例えばアプリ「ざっくり英語ニュース!StudyNowは世界で最高の教育アプリなんですよ!」といった場合、確かにそう思ってくれる人もいると思うので完全な嘘とは言い切れません。
しかし冷静に見ると世界には良いアプリが多いので、客観的に見てさすがにそれは言い過ぎだとなります。この2つの物事の距離が伸びてしまっていることを表しています。
It’s a bit of a stretch to say that StudyNow is the world’s best educational app.
= It’s a bit of an exaggeration to say that StudyNow is the world’s best educational app.
スタディナウが世界最高の教育アプリだというのは少し強引だ、こじつけだ。
この場合は「誇張すること、誇張表現(exaggeration)」に近い意味になります。
またギャグや2つの物事をひっかけてうまいこと言うときに、遠すぎる場合にも使えます。
アメリカのジョークサイト投稿サイトからのやり取りを拝借しました。
What does the egg say when she found out she’s pregnant? “Omelette”
もし卵が自分が妊娠していることに気が付いたらなんていう? 「オムレツ」
You mean like “I’m late”? In my tongue that is a bit of a stretch.
それって「遅れてる」ってこと? 僕の舌じゃ、それはちょっと強引だな。
これは女性の生理が遅れているを意味する「I’m late」と「Omelette」をかけたジョークですが、この2つの距離が伸びきっていて遠すぎるといった意味です。
音としては似てないこともないけど、ちょっとジョークとしては苦しい感じ、強引、こじつけです。こういうのを「a bit of a stretch」と呼びます。
前者のケースは誇張表現ですが、後者のジョークの例は誇張しているわけではありません。
どちらも共通するのは、指し示している2つの物事の結びつきが伸びてしまって、組み合わせとしては弱くなっていることを意味します。
Isn’t that a bit of a stretch?
それはちょっとこじつけでは?
言い過ぎ、強引、こじつけなど日本語訳はいくつか考えられますが、根本にあるのはこのような考え方です。
大阪弁では強引なこじつけのギャグやダジャレに対して「それ遠いな!」「えらいとっから持ってきたな」といった表現をしますが、考え方としては同じです。