produce(プロデュース)の意味を考える場合には、音楽業界と映画業界の用語としてのproduce(プロデュース)またはproducer(プロデューサー)は別に考えたほうがわかりやすいと思います。
一般的にはproduceは「make」に近い意味で何かを作り出すこと全般に対して広く使うことができる単語です。producerも農家などの農作物の生産者を表すこともできます。
まずは一般的な動詞・名詞でのproduceの使い方を紹介しています。その後でカタカナの「芸能人の〇〇さんプロデュース」や映画や音楽のプロデュースについてまとめました。
この記事の目次!
produceの動詞での意味と使い方
produceは動詞で「生み出す、生産する、製造する」という意味を持ちます。けっこう広範囲の物事に対して規模の大小を問わずproduceを使うことができ、意味としては「make」にかなり近いです。笑いを生みだすなど物理的でないものにも用いられます。
音楽と映画のproduceについては少し特殊な感じもあるので別にまとめています。ここでは一般的なproduceの使い方です。
名詞と動詞で発音・アクセントの位置が少し変わります。
produce【prədúːs】動詞
produce【próuduːs】名詞
This company produces car parts.
この会社は車の部品を生産する。
He wasn’t producing enough results so we fired him.
彼は十分な結果を生み出していなかったので、私たちは彼を解雇した。
That jokes always produces laughter.
あのジョークはいつも笑いを生み出す。
My kid produced a diorama.
私の子供がジオラマを作った。
Speakers are boxes that produce sound.
スピーカーは音を生み出す箱だ。
Shiga is known for producing funazushi.
滋賀は鮒ずしを作っていることで知られている。
Mitsubishi produces a lot of different things.
三菱は多くの異なるものを生産している。
また状況や使い方によっては「何かを見せる」「取り出す」といった意味を指します。日本語訳では「(証拠や文書などを)提示する」という訳し方になります。
You need to produce some kind of evidence that you are not guilty.
あなたは有罪でないという何らかの証拠を提示する必要があります。
He produced a license from his pocket.
彼はポケットから免許を取り出して見せた。
カタカナのプロデュースとの違い
カタカナのプロデュースが具体的に何をするのか? といった問題は後に触れますが、英語でproduceといった場合はmakeになるので少し意味が異なります。
He produced a new app.
彼は新しいアプリを作った。
上の例文ではカタカナでイメージされる「彼がプロデュースした」ではなく、プログラム・コードなどを書いて本当に「作った」の意味になります。以下の例文を比較してみます。
They produced this new car.
彼らはこの新しい車を作った。
He produced this new car.
★ 彼はこの新しい車を作った。
上のtheyは複数人なので会社などと考えることができるので自然ですが、下段の例文は1人(彼)なので彼が車を作った(build)したことになります。それが事実なら間違いありませんが普通はひとりで車を作るのは難しいです。
そのままカタカナのプロデュースの意味にはなりにくく、後半部分で取り上げています。
produce(名詞)での使い方
名詞で「produce」が使われている場合は、野菜や果物などの「農産物」の意味を持ちます。これはスーパーの野菜売り場に山積みにされているような、たくさんの農産物を表す総称です。
不可算名詞の扱いになるので「a produce」や複数形には基本的にはなりません。
写真に書いてある文字「Fresh Local Produce」は「新鮮な地元の農産物」といった意味になります。よそからもってきた農作物ではなくその土地で収穫されたものです。
You can find tomatoes in the produce section.
トマトは青果コーナーで見つかります。
I buy produce at a farmer’s market.
農家の市場で農産物を買う。
producer(プロデューサー)の意味と使い方
producer(プロデューサー)についても音楽、映画などの「製作者、興行主、プロデューサー」といった意味もありますが、農作物などの生産者、生産業者の意味もあります。
He is the producer of this movie.
彼はこの映画のプロデューサーだ。
He is the producer of this tomato.
彼はこのトマトの生産者だ。
producerには生産地や生産国も含まれてくるので、訳す場合には産地や栽培農家などさまざまな日本語をあてることができます。
音楽・映画・商品のproduce / producer
音楽や映画におけるプロデューサーやプロデュースや、日本では特定の商品にYoshikiプロデュースといった宣伝文句が見られます。
これらが何をしている人なのか? という部分を英語本来の意味で、英語圏(主にアメリカ)の視点から考えてみます。
これはdirector(ディレクター)にもいえますが日本の業界用語と英語での使い方に差があるように見られます。カタカナ・日本の業界用語としての定義はよくわからないので他サイトをご覧ください。
映画のプロデュース
映画業界におけるproduce a movie(映画をプロデュースする)が何を指すのか? といえば、この場合は映画を作るためにお金・資金を出している、出資する行為を前提にしていると考えることができます。一人の場合もあれば、複数人の場合もあると思います。日本語だと「興行主」と考えるのが近い感じがします。
監督はプロデューサーが選ぶケースが多く、どこまで脚本やキャスティングには触れるのかはその人次第ですが、お金を出しているので自然とそれなりの注文が出る傾向があるみたいです。
日本のプロデューサーは制作全体を統括するポジションみたいになっていますが、少し英語だと意味が変わります。
direct a movie(映画を監督する)だと、どう映画を撮影するのか? 具体的なところでシナリオ、キャスティングなどを決める監督の役割を指しています。映画関係の英文で「Director」と出ていたら、日本訳は「監督」とするのが自然だとは思います。
例えば人気のスパイ映画『ミッション:インポッシブル』のシリーズを例に出してみます。
このシリーズは1からトム・クルーズがプロデュース(produce)しているので、トム・クルーズがお金を出して映画を作っているのだとわかります。
しかし、監督(direct)はその後のシリーズではジョン・ウーやJ・J・エイブラムス、ブラッド・バードなどその時の人気監督を採用しています。
そしてシリーズでは主演(star)はトム・クルーズ自らが行っています。
別の作品になりますがトム・クルーズ主演・プロデュースの映画で、渡辺謙の出演でも知られる『ラストサムライ』で監督を務めたエドワード・ズウィックが来日時のインタビューで以下のように答えています。
『ラスト サムライ』(2003)に続いて主演兼プロデューサーのトムと仕事をしたズウィック監督は「彼は、監督が作りたい映画を作れるように助けるプロデューサーになりたいと思っているのだと思う」と分析する。「やりたいことに資金足りなかったら、彼は一緒になってスタジオと闘ってくれる。時間が足りなかったら、どうすればその時間を作り出せるか一緒に考えてくれる」と監督のビジョンを何よりも優先してくれるのだという。
この話の内容から考えてもプロデュースしているトム・クルーズが金銭的な負担、権限を持っているのがわかります。
日本語の映画のサイトなどではproduceは「製作」という訳があてられていますが、日本の映画業界における「製作」と、英語の映画業界におけるproduceがどこまで同じなのかは不明です。
音楽のプロデュース
音楽のプロデュースやプロデューサーについてはわりとカタカナのイメージが近いと思います。音楽やテレビ番組に対して統括的なポジションから作るような人です。
おそらくカタカナのプロデュース / プロデューサーの使い方はこの意味から広がっているのだと思います。
He produced Taylor Swift’s album.
彼はテイラー・スウィフトのアルバムをプロデュースした。
Taylor Swift produced her own latest album.
テイラー・スウィフトは彼女自身の最新アルバムをプロデュースした。
この場合の仕事は「もうちょっとテンポを速くしてみようか」や「ホーン系の楽器入れてラテンっぽいアレンジにしてみようか」といった指示を出しているのだと思います。
少し注意が必要なのは「曲をプロデュースした」のようにあくまで「曲」「アルバム」単位を目的語にする必要があります。下の例文のように書くとずっと彼がプロデュースしているようにも感じます。
He produced Taylor Swift.
△ 彼はテイラー・スウィフトをプロデュースした。
これももっと具体的に書けるならば「曲を書いた、作曲した」「作詞した」のように表現することができます。
He wrote that song for Elton John.
彼はエルトン・ジョンにあの曲を書いた。
He wrote those lyrics for Elton John.
彼はエルトン・ジョンに作詞した。
He wrote the music for Elton John.
彼はエルトン・ジョンに作曲した。
しかし作詞・作曲をしたからといってイコールでプロデュースしているわけではありません。
商品のプロデュース
日本では「芸能人の〇〇さんプロデュース!」の宣伝文句をよく見かけますが、この使い方が最もカタカナ・和製英語っぽい使い方になります。
実際に何をやっているのか? がよくわからないし、あえてわかりにくくしている感じもします。
人によっては制作に大きく関わっているケースもあると思いますが、想像するに2,3個のサンプルを出して「どれがいいですか?」「どんな色が好きですか?」みたいな意見を取り入れるレベルだと思います。もしくは完全に「名前貸し」のようなケースも考えられます。
これはすでに紹介したようにそのままproduceを使って英語にすると「作った」の意味になります。
He produced this new car.
★ 彼はこの新しい車を作った。
Michael Jordan produces Air Jordans.
★ マイケル・ジョーダンはエア・ジョーダンをプロデュースしている。
上のように書くと本当にマイケル・ジョーダンが1から靴を作り上げたことになってしまいます。
ではどう表現するのがいいのか? といえば候補はいくつかありますがsupervise(監修する、監督する、指揮する)あたりが実態に近いと思います。
Yoshiki supervised the creation of the bathrobe.
YOSHIKIはバスローブ作成を監修した。
Yoshiki was the supervisor of the bathrobe.
YOSHIKIはバスローブの監修者だ。
Merchandise such as an original T-shirt and Egashira supervised instant curry will be sold.
オリジナルのTシャツや江頭2:50が監修したレトルトカレーなどのグッズが発売されるだろう。
上の例文の場合はYoshikiがバスローブを作り上げたわけではなく、色や素材を監修したのだとはっきりわかります。
他にもlicense(許可を与える)やdesign(デザインする)といった表現や、be involved in the production of(制作に関わっている)といった言い方もあります。結局は何を具体的にしているのか? といった問題になります。
また香水に関してはbyのような表記が一般的で、この使い方は他の分野でもまれに見られます。
Battre Sang by Yoshiki
YoshikiのBattre Sang(香水)
日本語のページだと「Battre Sang produced by YOSHIKI」と書かれ「produced」になっていますが、香水の場合は単にbyだけを入れるのが一般的です。
結論としてはproduceという単語を商品に対してはあまり使わない、見かけないということになります。ほかにもコラボする、タイアップするといった言い方も可能です。