memory(メモリー)は何かの出来事の「思い出・記憶」の意味と、物事を覚えておく「記憶力」の2つの意味があります。
複数形(memories)になるのか、単数形になるのかといった問題を含んで、「思い出」なのか「記憶力」なのかの判断の仕方について見ていきます。
この記事はネイティブスピーカーにヒアリングを行いながら作成しています。
思い出・記憶
何か楽しい出来事や嫌な記憶も含めて「高校時代の思い出」「昨日のパーティーの記憶」といった覚えている状況を指しています。
何かの場面や情景など過去に体験したものです。この場合には可算名詞で単数形・複数形どちらも使われます。
したがって高校時代に良い思い出が複数あれば、それはmemoriesと複数形になります。
He has many great memories of high school.
彼には高校でのたくさんの素敵な思い出がある。
My best memory of that vacation is when we ate at the five-star restaurant.
休暇の一番の思い出は私たちが5つ星レストランで食べたときだ。
The memories we share will last a lifetime.
私達が共有した記憶は生涯続くだろう。
記憶力・覚えておく能力
物事をおぼえておく能力としての「記憶力」の意味ならば、通常は単数形で使われることが多いです。
こちらは可算名詞・不可算名詞の両方のケースがありますが、通常は数えられない不可算名詞でとるケースが多いです。
My memory gets worse every year.
毎年、記憶力が悪くなっている。
I want to improve my memory.
記録力をもっと良くしたい。
Eating certain foods is good for your memory.
ある食べ物を食べることは記憶力のために良い。
This computer has a lot of memory.
このパソコンは多くのメモリを持っている。
最後のパソコンのメモリの話は少し性質が異なりますが、いわんとするところはPCと人間の違いだけで似たような概念を指しています。
ただ、この「記憶力」の意味であっても可算名詞として「a」をつけることも可能です。この点が少し複雑になります。
① I have good memory.
①-1 We have good memory.
①や①-1のように書くと不可算名詞なので「記憶力がいい」となります。
② I have two good memories.
②のように書くと2つと数えているので可算名詞であり「2つの良い思い出がある」となります。
③ I have a good memory.
③-1 We have good memories.
③-2 Do you have a good memory?
問題は③や③-1、③-2のように書くと両方の解釈が可能であり「記憶力がある、覚える能力がある」と「思い出」の両方で読み取ることが可能です。文脈で判断するしかありません。
memoryは思い出か記憶力か?
「思い出」なのか「記憶力」なのかの判断が難しいことがときどきありますが、その場合はたいてい文脈で判断することになります。
① I have a terrible memory of last night.
①の場合にはどちらなのか判断が難しいですが、おそらくは「記憶力」の意味で使われていて「昨夜のことはほとんど覚えていない」と解釈するネイティブスピーカーが多いです。
② I have a terrible memory from last night.
②もどちらなのか判断が難しいですが、おそらくは「思い出」の意味で使われていて「昨夜、起こったひどいことを覚えている」を表します。
①と②の例文はどちらもmemoryが単数形のため、意味を判断するのが難しいです。
違いとしてはmemoryの後ろにきているof / fromですが、そこが判断基準になるのかをスティーブに尋ねてみましたが、判断の助けにはなるものの、必ずしも判断できるものではないとのことです。
単数形か複数形かによる判断についてもですが、やはり文脈でどちらの意味かを読み取ることがメインになります。
いずれにせよ文脈を読めばたいていの場合は判断がつくと言っていました。
また②の例文をもう少し意味をはっきりさせるために書くとすれば以下の形になります。
I have a terrible memory from last night.
=I have a memory of something terrible that happened last night.
昨夜のひどい思い出がある。
もう1つ少し文脈のある例文をあげておきます。
I drank too much and have a terrible memory of what happened last night.
飲みすぎたので昨夜、起こったひどいことをあまり覚えていない。
飲みすぎたと言っているので、おそらく昨夜のことを覚えていない状態です。
複数形を使えば、どちらの意味かをはっきりさせることができます。
以下の例文はmemories(複数形)になっているので、迷うことなく「思い出」です。
I have terrible memories of last night.
=I have terrible memories from last night.
複数形なので「思い出」となり、「昨夜のひどい思い出がある」という意味になります。
また相手に対して質問する時も聞き方を工夫すれば意味がはっきりします。
Do you have any good memories?
(過去の思い出について聞いている)
Are you good at remembering things?
(記憶力について聞いている)
memorize
動詞はmemorizeで「暗記する、記憶する」です。単語などをおぼえる暗記なども含まれます。使い方は例文を参考にしてください。
発音はméməràiz(メモライズ)です。
I can’t memorize more than ten words at a time.
一度に10個以上の言葉を記憶できない。
I memorized all of the prefectures in Japan.
私は日本の全部の県を暗記している。
似た言葉で「memorialize(メモリアライズ)」があり、こちらは記念するの意味ですが亡くなった人への追悼の意味で使われます。
特にカタカナにもなっているmemorial(メモリアル)が亡くなった人への追悼を意味することが多いのでカタカナと使い方が少し違う言葉だといえます。
以下の記事にメモリアルをまとめています。
in memory of
ニュースでもよく登場する「in memory of」は「~に敬意を払って」の意味ですが、多くは亡くなった人に対して使われる表現です。「~を追悼して」と考えても問題ないと思います。
This movie was made in memory of the soldiers of World War II.
この映画は第二次世界大戦の兵士達に敬意を表して製作された。
この「~に敬意を払って、記念して」は類似の表現も多いので以下の記事にまとめています。
retentionとmemoryの違い
どちらも「記憶」ですが少しニュアンスが異なります。retentionは覚えようとして覚えた記憶であり、memoryは特に意識せずに覚えている記憶です。
〇 I have no memory of my fourth birthday.
4歳の誕生日の記憶がない。
× I have no retention of my fourth birthday.
小さな頃の誕生日の記憶は覚えようとしたわけではないと思うので、この場合はmemoryです。
また以下のような文章の場合は意味合いが変わってきます。
The students have poor retention of the lessons.
The students have poor memory of the lessons.
授業で習ったことを覚えていない、覚えが悪い、記憶力が悪い場合はretentionを使います。授業内容は覚えようとして覚えることです。
memoryになると「授業に行くこと、教室がどこかをおぼえてない」「どんな先生だったか覚えていない」「誰が出席していたか覚えていない」といった本来は自然に記憶しているはずのことを覚えていないという意味になります。