カタカナでもよく聞く「memorial(メモリアル)」は辞書で調べると「記念の、追悼の」の意味があるように、よく亡くなった人への思い出などに使われる傾向があります。
このため使い方を間違えると「(亡くなった人への)思い出・記念の」といった意味で伝わってしまうことがあります。
確かに名詞のmemoryには「思い出・記憶力」の意味があるので、その延長で混同しやすい言葉だといえます。例文を用意してもらい整理してみました。
名詞の「memory(メモリー)」については『memory(メモリー)は「思い出」なのか「記憶力」か?』を参照してください。
memorial(メモリアル)の意味
memorial(メモリアル)には確かに「記念の」の意味はありますが、混同しやすい原因として亡くなった人への追悼イベントとして「memorial service(メモリアルサービス)」と呼ばれるものがあるからです。
日本語でいう追悼式、告別式のような式典であり、この意味でも「追悼の」の意味で受け止められる可能性があります。またmemorial service(告別式、慰霊祭)を略してmemorialとも呼ばれます。
A large memorial service was held for Fidel Castro.
フィデル・カストロの大規模な追悼式が行われた。
There was a memorial for Muhammad Ali.
モハメド・アリの追悼式があった。
これは亡くなった人への追悼するイベントの形式の問題であって、一般的な式典の場合は「service」になりますが、コンサート形式での追悼の仕方などもあります。
There was a memorial concert for Freddie Mercury.
フレディ・マーキュリーの追悼コンサートがあった。
このように書いてしまうと「追悼の」の意味で受け止められる可能性があります。追悼の形を式典で行うか、コンサートで行うかの問題であって、基本的には亡くなった人に使われる言葉です。
アメリカにはMemorial Day(戦没者追悼記念日)が5月の終わりにあり、これは戦没者を追悼する日と定められています。
Today is our memorial day.
(何を指すか意味がよくわからない)
上の文章をカナダ人のスティーブに読んでもらいましたが、何を指しているかよくわからないそうです。まずアメリカのMemorial Dayとの混同があります。
また結婚した日や何かが思い出に残る日なら、もっとanniversary(アニバーサリー)などを使って具体的に書くのが一般的です。この意味でカタカナのように「記念の」の意味で使うのが一般的ではありません。ただし文法上は問題ありません。
英語圏でも葬儀関係の式典は種類がいろいろとあるのであわせて参照してください。
memorial album(メモリアル・アルバム)
したがってアーティストなどが周年のイベントに発売する記念のアルバムなどを「memorial album(メモリアル・アルバム)」とするのは一般的な表現ではありません。
「そのバンドは30周年の記念アルバムをリリースした」は以下のような表現が可能です。間違いとは言い切れないですが、誤解を受けやすいため一般的に使わない表現があります。
▲The band released a 30th anniversary memorial album.
(あまり一般的でない表現)
△The band released a 30th anniversary commemorative album.
(より一般的な表現)
〇The band released a 30th anniversary album.
そのバンドは30周年の記念アルバムを発売した。
このように「commemorative」や一般的にはカタカナにもなっている「anniversary(アニバーサリー)」などを使うのが無難です。
また亡くなった人への尊敬の念や追悼を込めて作成されるアルバムは「tribute」もよく用いられます。
A Prince tribute album was made.
プリンスのトリビュート・アルバムが作成された。
これらの違いは「~を記念して開催される」みたいな表現でもin honor ofは広く様々なことに使えるのに対して、in memory ofは亡くなった人に対してしか使えない表現になるといった部分に通じています。
They held a concert in memory of the victims of the plane crash.
彼らは飛行機の墜落の犠牲者に追悼の意を表してコンサートを行った。
このあたりの違いもmemorialに関連する言葉になります。
記念碑、記念館
memorial service(告別式、慰霊祭)が省略されてmemorialになるケースもありますが、本当に「記念碑、記念館」の意味もあります。
上の写真はワシントンDCにある「リンカーン記念堂 (Lincoln Memorial)」の写真です。この場合は亡くなった人なので追悼の意味も多少はありますが、どちらかといえば歴史の偉人の功績を「記念する」ものです。
We took a trip to see the Lincoln Memorial.
私たちはリンカーン・メモリアルを見に旅行に行った。
We visited a Holocaust memorial in Berlin.
私たちはベルリンのホロコースト記念館を訪れた。
memorialize
動詞には「memorialize(メモリアライズ)」があり、これは暗記する・記憶するの「memorize(メモライズ)」とは別の言葉です。
memorializeも「~を記念する」の意味がありますが、やはり追悼として亡くなった人への記憶として使われる言葉です。
以前にフェイスブックが亡くなったユーザーに表示される文言のテストを間違って生きているユーザーに表示してしまうバグを起こしました。
FB talking to me like I’m already dead pic.twitter.com/D2YxdPJmRC
— Alexia Bonatsos (@alexia) 2016年11月11日
アプリ内のニュース文から抜粋します。
On top of thousands of users’ pages, including Mark Zuckerberg’s, a banner announced that their page has been “memorialized.”
マーク・ザッカーバーグを含む、数千のユーザーのページの上部に、バナーで彼らのページが「追悼(記念)」されていることがアナウンスされた。
この意味でもmemorialという言葉そのものが記念よりも、追悼の意味で使われやすい言葉だといえます。あわせてmemoryの項目も参照してください。