coolは「冷たい、涼しい」の形容詞の意味がもともとあります。そこからスラングとして「すごい、かっこいい」といった意味でも使われるようになり、単なるスラングの域を超えて定着しているといえます。
カタカナでも「クールな人」や「クールダウン」といった使い方もよく知られているため親しみのある言葉ですが英語でのcoolの意味や使い方をネイティブスピーカーに確認してみました。
動詞では何かを「冷やす、冷ます」といった使い方もできます。
この記事の目次!
冷たい、涼しい(形容詞)
クールには温度としての「冷たい、涼しい」などの基本的な意味があります。温度が冷たい場合はcoldと同じような意味になります。
Ice cream is a cool snack.
=Ice cream is a cold snack.
アイスクリームは冷たいお菓子だ。
My beer is cool.
私のビールは冷えている。
Somen is cool noodles.
ソーメンは冷たい麺だ。
It was hot but sometimes a cool breeze would come by.
暑かったけど、ときどき冷たい風が吹いた。
普通は食べ物の話をしていたら料理の温度のことだと思いますが、可能性としてはスラングとしての「すごいビール、かっこいいビール」の意味もありえます。
ネイティブスピーカーに確認しても可能性だけなら両方の解釈は可能だそうですが、文脈を普通に考えると料理の話ならば温度を指しているのだろうと想像できます。
料理に関していえば温かいイメージがある食べ物に「cold」を使うとネガティブなイメージがでるケースもあるので「chilled(冷却された、冷蔵の)」などが使われます。
クール、すごい、かっこいい(形容詞)
こちらの意味のほうが有名かもしれませんが、クールといえば「すごい、いかす、かっこいい」といった日本語の感覚で使われます。
諸説ありますがこの意味は1950年代頃から使われはじめたスラングとされています。スラングは普通は年代ごとの流行があり廃れていきますがcoolの「すごい、かっこいい」といった意味はすでにスラングの域を超えて普通に定着しているといえます。
That is a cool car.
あれはクールな車だ。
She’s really cool.
彼女は本当にクールだ。
90年代に活躍したラッパー、クーリオからcoolの意味で「Coolio」というのが流行った時期がありましたが、こういうのがスラングの中のスラングで今では誰もいいません。
「すごい、かっこいい」のような言葉と同じで人によって定義や感性がバラバラなので何をもってクールとするのかは異なります。人によってはダサい服や車でも、別の人にとってはcoolになりえます。ラッパーなどにiceの名前が多いのはcoolにつながっている(もしくはダイヤモンド)からだそうです。
ネイティブスピーカーの意見を聞いてみると会話表現のクールは「感情が抑制された、落ち着いた感じ」のイメージがあります。
カタカナでも80年代、90年代のクールな男、クールな人のイメージは無口で感情を出さない、素っ気ないタイプのクール像(田村正和や反町隆史のような)でしたが英語でもこれは相当古臭いイメージです。
しかしcalm(落ち着いた、冷静な)の意味が今でもあります。
Keep a cool head about this problem.
この問題については冷静を保とう。
この場合は感情を抑制して落ち着いて対処しようといった意味なので、特にかっこいい感じでいこうと言っているわけではありません。
会話でのThat’s cool
会話の返事として「That’s cool」もよく聞かれますが、これも文脈で意味や解釈が少し変わってきます。
A: I passed the exam!
試験に合格したよ!
B: That’s cool.
それは良かったね。
言い方や状況にもよりますが、上の場合はそこまで「すごい」とは言っておらず「That’s fine.」ぐらいの感覚です。
A: I passed the exam!
試験に合格したよ!
B: That’s really cool!
それは本当に良かったね!
イントネーションや感情の込め方にもよりますが「That’s cool.」だけだとそこまで感情的な驚きを表す表現にはなりえないという意見がありました。
他にもっと誉め言葉や驚きの表現があるためcoolは日本語の「すごいね」の使い方に近く、あらゆることに万能で使える分だけ状況によっては適当に流している、皮肉に近い雰囲気も出ます。
たとえばインターネットのスラングで以下のような表現があります。
Cool story, bro.
broはbrotherの省略で「おまえ、あんた」のような呼びかけとして使われています。ネットの書き込みでこれがあれば「はいはい、すごいすごい」「すごい話だな、おまえ」ぐらいの明らかな皮肉になります。
画像を張り付けてこの返事をするために様々な「Cool story, bro.(グーグルイメージ検索)」の画像が出回っています。これらは明らかに煽っている、冷やかしている感じの返事です。
また以下のように「落ち着いている、冷静でいる」の意味でも使えます。
A: I broke your car.
B: That’s cool.
「あなたの車を壊しちゃった」の後に続くこの場合のBの解釈は2つ考えられます。
落ち着いているの意味をとって「That’s okay./I’m not angry.(大丈夫/私は怒っていない)」みたいな返事にもなります。もう1つは「That’s great!」ですが車を壊された側なのでこちらは普通はありません。
また以下のような文章の場合も2つの解釈ができます。
Would it be cool if I dated your sister?
①お前の妹と付き合ったら落ち着いている?(怒る?)
②お前の妹と付き合ったらすごい?
妹と付き合ったら怒るか? もしくは、妹と付き合ったらすごいかな? と質問しているので「落ち着く、冷静でいる、感情を抑える」と「すごい、かっこいい」の両方の意味が成り立ちます。これらは文脈や雰囲気で判断するしかありません。
~を冷やす、~を冷ます(他動詞)
動詞では普通は他動詞になり「~を冷やす、~を冷ます」として使われ、後ろに目的語(何を冷ますのか)をともないます。
He cooled the cookies in the fridge.
彼は冷蔵庫でクッキーを冷やした。
I cooled my soup by blowing on it.
私は吹くことでスープを冷ました。
ふーふーと息を吹きかけてスープを冷ましたという意味です。
She cooled in the pool.
(変な表現です)
これは目的語がなく、おかしな表現になっています。
冷える、冷たくなる(自動詞)
自動詞として使われる場合は「冷える、冷たくなる」または「冷静になる」を意味し、たいていはdownかoffをともないます。
She cooled down in the pool.
=She cooled off in the pool.
彼女はプールで冷えた。
downでもoffでもどちらもほぼ同じ意味です。
この場合も体温の話で冷たくなったともとれるし、以下のような「頭を冷やす」に近い落ち着く意味でのクールダウンの両方の解釈が可能です。
cool down / cool off
揉め事などの後で冷静になることも意味し「頭を冷やす」を表します。cool downとcool offの両方が使えます。
My kids were screaming at each other so I put them in separate rooms to cool down(= off).
子どもたちはお互いに叫びあっていたので、頭を冷やさせるために別々の部屋に入れた。
cool downとcool offの違いがあるとすると、cool offは他動詞的に使えるけれど、cool downは他動詞的に使うと自分には変に聞こえるとスティーブが言っていました。
She cooled off the muffins by the window.
彼女は窓のそばのマフィンを冷ました。
この表現は問題ありません。
She cooled down the muffins by the window.
(意見がわかれる要素がある)
スティーブはこの表現は変に感じるけれど、個人的にそう感じるだけかもしれないとも言っています。
cooler(クーラー)
英語にcoolerという言葉がないわけではなく、主にバーベキューなどで使う保冷ボックスのようなものを指します。カタカナでいう「クーラーボックス」のクーラーの使い方です。
I kept my beers in a cooler for the picnic.
ピクニックのためにビールをクーラーの中に入れた。
日本語の「クーラー」は和製英語ぎみの使い方で、壁についている涼しくなる機械は「air conditioner」です。
My air conditioner is broken.
私のエアコンは壊れているよ。
また普通にcoolの比較級としても存在しています。TRAPPIST-1と呼ばれる新しい恒星が発見されたニュースからです。
TRAPPIST-1 is a much cooler and smaller star than our sun.
TRAPPIST-1は私達の太陽よりもずっと冷たく小さい恒星だ。
クール(テレビの放送期間)
日本のテレビ番組ではだいたい3ヶ月が1つの区切り、期間となっており、「春のクール、7月から9月のクール」と言った形で「クール」を使いますが、英語ではこの意味での言葉は存在しません。
この「クール」はフランス語のcours(英語のcourse)から由来する言葉です。
アメリカのテレビ番組では「シーズン」が使われ、期間も9月から翌年5月までのおよそ1年にわたって続きます。その後、夏の間が新しい番組を企画したりする期間となります。
1つの季節よりもはるかに長い期間続くため、「シーズン」という表現は変だとスティーブは言っていますが、「ハリウッドには季節は1つしかない(いつもハリウッドは陽気で熱い)」というジョークもあるようです。
The new season of The Walking Dead began in October.
『ウォーキング・デッド』の新しいシーズンが10月に始まった。
They canceled the show mid-season because the star was in a scandal.
彼らはシーズン半ばのテレビ番組を取りやめた。なぜなら主役がスキャンダルの渦中にいたからだ。