カタカナで来客やスケジュールなどが重なってしまう「バッティングする」は英語のどの言葉から来ているのか不明な部分があり、おそらくbuttingからだろうと判断できます。
しかし、英語のbuttには「(スケジュールなどが)バッティングする」の意味がないので、そのまま使えない和製英語な表現になってしまいます。
ここではbuttという単語に焦点をあてて、名詞・動詞での使い方をまとめています。カタカナのバッティングもあわせて検証しています。
いろんな意味があるのは語源や成り立ちが異なる単語がたまたま同じbuttというスペルになっているためです。
butt(動詞)の意味と使い方
buttを動詞で使うと頭で何かを突くことを表し、特に動物に使われます。発音は野球のバットと間違えやすいです。
butt【bʌ́t】頭で突く
bat【bǽt】打つ、野球のバット
「しかし」の意味のbutは【bətまたはbʌ́t】の発音なのでbuttと同音です。
The goat gently butted her out the door.
ヤギは優しく彼女を頭で突いてドアから出した。
The two sheep were butting each other in competition for a mate.
2匹の羊が交尾相手をめぐって互いに頭で突きあっていた。
人に対して言う場合は、普通はbuttの代わりにheadbutt(ヘッドバット)を使います。プロレス技のヘッドバット、頭突きです。
これはボクシングで頭同士が当たってしまった際のバッティングなどにも使われます。
He was given a red card for headbutting another player.
彼は他の選手に頭突きをしてレッドカードが与えられた。
He was given a red card for butting another player.
(人に対しては変な表現です)
butt heads
角を突き合わせるイメージの言葉で、意味は「衝突する、議論して対立する」です。
特に解決策、出口がないような不毛な言い争いなどに用いられる傾向があります。こちらは慣用的な表現で人間や国同士でも使うことができます。
He butted heads with his wife for months over the name of their son.
彼は奥さんと数ヶ月間、息子の名前をめぐって言い争った。
Japan and China are butting heads over the Senkaku Islands.
日本と中国は尖閣諸島を巡って言い争っている。
カタカナのバッティング(競合・重複)
ビジネス用語などで来客との約束など2つのスケジュールが重なってしまった場合に「スケジュールがバッティングした」と表現するケースがあります。予定が競合、重複することです。
これは確認してみると和製英語になっている感じがあり、頭同士を突き合わせるbuttや上に紹介した「衝突する」のイメージに近いですが英語では意味が通じません。
There is a scheduling batting.
There is a scheduling butting.
(意味がわからない)
「バッティングセンター」「野球のバッティング」のバットで、打つなどの「bat」の可能性も考えられますが、どちらにしろ上の例文は意味がわからないという結論になりました。
おそらくそれを言うならconflict(紛争、不一致、対立)を使うのが一般的です。
There is a scheduling conflict.
スケジュールの衝突がある。
尻・臀部
名詞ではbuttocksと同じで、名詞で「尻、臀部」を意味します。
A dog bit him in the butt.
犬が彼の尻に噛み付いた。
Her butt was sore because she was sitting all day.
彼女は一日中座っていたのでお尻が痛かった。
お尻についてはカジュアル、スラング、医療関係でも使われるフォーマルな表現などさまざまあるので以下の記事をご覧ください。
タバコの吸殻、太い方の端
何かの太い方、もしくは硬い方の端のことです。銃の台尻や刀では柄(つか)側の部分を指します。
また「a cigarette butt」で「タバコの吸殻」のことです。文脈がはっきりしていれば「butt」だけでタバコの吸殻をさせます。
The soldier hit it with the butt of his rifle.
その兵士はライフルの台尻でそれを殴った。
She flicked a cigarette butt out the window.
彼女はタバコの吸殻を窓から外に弾き飛ばした。
車に乗っていてタバコの吸殻をポイっと窓から捨てたようなイメージです。
タバコを吸ったあとには硬い方の端(フィルター部分)が残りますが、これを表しています。もちろん完全に根本まで吸う人は珍しいですが、だいたい吸い殻の大部分はフィルター部分です。
辞書にスラングとして「タバコ」の意味の掲載が見られましたが、あくまで「タバコの吸殻」だとスティーブは話しています。
笑いの種、笑いの標的
ジョークの対象となるものを指し、butt of a jokeの形で「笑いの種、笑いのネタ、笑いの標的」といった意味になります。
「笑いの標的」が意味合いとしては理解しやすく、笑いものにされる原因・ターゲットになるといった意味です。
His strange hairstyle made him the butt of many jokes.
彼の奇妙な髪型はたくさんの笑いのネタになった。
He laughed along but didn’t realize he was the butt of the joke.
彼は調子をあわせて笑ったが、自分が笑いの種だったとは分かっていなかった。