裏返しのピースサイン(Vサイン)について

peace sign
 

公開日: 最終更新日:2020.12.16

中指を立てるジャスチャーはアメリカを中心に世界で非常に侮辱的な表現であることは知られています。

イギリスで同じぐらいに侮辱的な行為として知られているのが裏返しのピースサイン、手の甲を相手に向けるピースサイン・Vサインです。

イギリス人のダンにどのようなものか聞いてみました。イギリスに行かれる方は知識として知っておいていいのではないかと思います。

アメリカ式の中指を立てる行為については『中指を立てる動作(ミドルフィンガー)の意味』に詳しい解説があります。

裏返したピースサイン

裏返しのピース

イギリスでは裏返したピースサイン(手の甲を相手に向ける / palm in)が攻撃的、侮辱的なサインになるので、イギリスに行かれる方は頭の片隅に覚えておいて損はないと思います。

これはオーストラリア、ニュージーランドなどイギリスの影響が強い文化圏でもまだ同様に攻撃的なサインにとられるケースがあります。意味としては「Get Stuffed!(くそったれ、くたばれ)」ぐらいです。

実際のやり方をイギリス人のダンに確認してみましたが、メイン写真の女性のようにかわいい感じではないそうです。

相手に攻撃的な逆ピースサインをするときは、下からアッパーカットを突き上げるように力強く勢いよく出します。または右手でやる場合は左手で突き上げる腕を受け止めるようにして「ボン!」という音を出すやり方があります。

裏のピース

しかし、この裏返しのピースサインは北米のカナダ・アメリカでは特に問題がないといった違いがあります。カナダもイギリスの文化圏だといえますが、カナダ人のスティーブに確認してみると特に意味はなく、しいていうならば単に「数字の2」として普通に使われています。

今日のイギリスでもアメリカ式の中指を立てるサインにとってかわられているような状況になりつつあるようですが、それでもまだ根強く侮辱的なサインとして残っています。

起源ははっきりしたことが不明ですが、侮辱的なVサインの初出として明確に残っている証拠は1901年です。おそらくドキュメンタリー映画のような撮影でカメラを向けられた工場で働いていた若者が、カメラに向かって不機嫌にこのサインを使った記録が残っています。オアシスのリアム・ギャラガーがやっている写真なども残っていますね。

参考:The V-sign > Biography > The Rude Version(ICONS)

ウィンストン・チャーチルのエピソード

ピースサインは元々は勝利を意味する「Victory」のサインとしても知られ、第二次大戦中に反ナチスドイツに対するキャンペーンのシンボルとして広まった経緯があります。

当時の首相だったウインストン・チャーチルもこのVサインを積極的にするようになりましたが、彼は貴族階級の人だったので庶民にとって「裏返しのVサイン」が何を意味するか知らず、まれに裏返しのピースを使っていたようです。そのときの写真も残っています。

これについて後に説明を受けてからは表向き(palm out)に切り替えたといったエピソードが残っています。

Winston Churchill

Winston Churchill

この頃のチャーチル首相を描いた映画『Darkest Hour(邦題:ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男)』にもそのシーン(0:58~)が登場しています。

日本人のピースサイン

写真に写る際に日本人はピースサインをよくしますが「日本人だけ」みたいな指摘があります。最近はアジア圏でも見かけますが意見をネイティブスピーカー達に聞いてみました。

基本的には問題ないんですがピースサインは古くはヒッピー文化を連想させるそうです。第二次大戦が終わり、1960年代以降に流行した自然への回帰やベトナム戦争への反戦運動へとつながっていくカルチャーです。

英語圏でピースサインをやらないわけではなく、日本人の感覚よりももう少し「平和」を願っている意味合いが強くなります。

日本人はそれを友達とマクドナルドでご飯を食べている時に撮影する写真でもやるので、その時に別に平和は願ってないでしょ?といった感覚になるそうです。また現代においてヒッピー文化が、もう時代遅れな感じもあり、変わった人だなとみられる傾向があるという話です。

日本に来ている外国人や観光地ではそのへんも折込済みだと思いますが、本当に日本人をよく知らない人には、なんでもない時にピースサインをやっていると奇妙に見えるのかもしれません。

ピースサインから指紋が読み取られる

ニュースで配信しましたが、研究報告によると約3メートルの距離からスマートフォンのカメラで撮影した写真からでも指紋を読み取ることができるそうです。

このデータを元に指紋を復元すれば、キャッシュカードなどの生体認証や、スマホのロックも突破できることは理論上は可能です。

Isao Echizen of the Japan National Institute of Informatics has warned that holding up the index and middle fingers in a gesture currently known as the “peace sign” can be dangerous.
国立情報学研究所の越前功氏が、人差し指と中指をあげるジェスチャー、一般的にピースサインとして知られることに、危険があるのではと警告している。

Echizen conducted experiments in which he could extract a person’s fingerprint from several high-res photos taken from current cameras on the market.
越前氏は実験を行い、いくつかの現行の市場に出回っているカメラで撮影された高解像度の写真から人の指紋を抽出することができた。

まだこれにより実害が出ているといったレベルではありませんが、アメリカでは亡くなった人(おそらく犯罪者)の指紋を復元して残されたスマホのロックを解除したケースなどが報告されています。

しかし、これらの指摘は今にはじまったことではなく、高解像度の写真がたくさんあれば指紋の復元はちょっと前でも可能でした。

SNSにあげるときは自動で写真が劣化します。また写真にはExif(イグジフ)と呼ばれる位置情報や撮影日時などの情報が付随していますが、これらの情報もSNSに投稿する際には削除される仕組みになっています(逆にいえばExif付きの生写真をやり取りするのは注意が必要です)。

越前教授の指摘は事実で、よりカメラの高性能化が身近に迫ってはいるものの、今のところすぐに影響がありそうかといえば、もう少し時間がかかるかもしれません。

指紋を読み取られるのが嫌ならば裏返しでピースすればいいのかもしれませんね。



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