「架空の、想像の、空想の」を英語で表現するには「fictional」「fictitious」「imaginary」「made-up」あたりが候補にあがる単語です。
どれを使っても成立しますが、何かに対して「誰かが頭の中で勝手にでっちあげたもの」と考えるか「素晴らしいクリエイターが生み出したキャラクター」と考えるかでは指しているものは同じでも伝わり方がぜんぜん違います。
日本語でいう「架空の」「空想の、想像の」「でっちあげの」ぐらいの使い分けはできるので、それぞれの違いや使い方をご説明します。
この記事の目次!
fictional, imaginary, fictitious, made-upの意味
どれも言葉にすると「架空の、空想の、想像の」みたいな意味になりますが、それぞれニュアンスがあります。
使い分けの参考程度になりますが、それぞれの違いをネイティブスピーカーにヒアリングしました。日本語でいう「架空の、空想の、想像の、でっちあげの」ぐらいの差なので違いとしては感覚的かもしれません。
以下の例文はニュアンスの差はあるものの文章としては4つともすべて成立します。
James Bond is a fictional spy.
James Bond is a fictitious spy.
James Bond is an imaginary spy.
James Bond is a made-up spy.
ジェームズ・ボンドは架空の/想像上のスパイだ。
個々に単語を取り上げるよりも、それぞれを比較しながら説明します。人によって感覚も違うのであくまで使い分けの目安ぐらいにお考えください。
imaginaryとmade-upの意味の違い
imaginaryは「想像の、空想の」ぐらいの意味で、短時間で頭の中に描いたような印象を与えます。またそこに苦労や努力が感じられにくいです。ぱぱっと頭の中に思い描いたような感じです。
made-upも同じことがいえ、短時間で作り出し苦労や努力を感じさせませんが、こちらは明らかにネガティブな感じがあり「でっちあげ」に近くなります。
My son has an imaginary friend.
私の息子は空想の友達がいる。
My son has a made-up friend.
私の息子はでっちあげた友達がいる。
子供の頃は想像の友達を思い描いたりしますが、普通は「imaginary friend(空想の友達)」を使う人が多いと思います。
親がこの子供の状況を嫌っているならば「made-up friend」も使われるかもしれません。
My son always tells me made-up excuses for not doing his homework.
私の息子はいつも私に、宿題をやらない、でっちあげた言い訳を言う。
My son always tells me imaginary excuses for not doing his homework.
私の息子はいつも私に、宿題をやらない、空想の言い訳を言う。
親が嫌気がさしていうならば「made-up excuse」が普通の言葉遣いです。
「imaginary excuse」だとそこまで怒っている、悪く思っている感じもしません。またこれだとその言い訳を楽しんでいる感じも少しします。
fictionalとfictitiousの意味の違い
どちらも「架空の」と考えてもいいかもしれません。そこには生み出した作者の努力や想像力、創造力を感じさせる表現です。言い換えると作者の敬意にもなります。
ただしfictitiousのほうがその意味合いが弱く、imaginaryに近い言葉になります。発音は以下の音声で確認してください。
fictitious【fiktíʃəs】
fictional【fíkʃənəl】
James Bond is a fictional character.
ジェームズ・ボンドは架空のキャラクターだ。
(作者への敬意を感じさせる)
James Bond is a fictitious character.
ジェームズ・ボンドは架空のキャラクターだ。
(現実ではない、という事実を言い表している)
James Bond is an imaginary character.
ジェームズ・ボンドは想像のキャラクターだ。
この場合の「imaginary character」はひょっとしたら作者に少し失礼かもしれません。また少し「現実ではない、実在しない」をより強調したような感じです。
James Bond is a made-up character.
ジェームズ・ボンドはでっちあげのキャラクターだ。
より作者への敬意があまり感じられない、ネガティブな表現です。また「(そんな人間はいない)現実ではない、実在しない」をより強調したような感じです。
fictionalとimaginaryの意味の違い
感覚的な説明になりますが、fictionalはより現実に近い側にいます。ひょっとしたら現実にいそう、過去に存在したような感じもするけれど、それは空想・想像ですよという感じです。
imaginaryはより現実よりも「fantasy(ファンタジー)」の世界によった空想・想像です。そもそもそれが現実に存在するとは最初からみんな思っていない感じもあります。
Lupin III takes place in the fictional kingdom of Cagliostro.
『ルパン三世』は架空のカリオストロ公国で起こる。
Lord of the Rings takes place in the imaginary world of Middle Earth.
『ロード・オブ・ザ・リング』は空想の世界「中つ国」で起こる。
宮崎駿監督の『ルパン三世 カリオストロの城』の舞台となるカリオストロ公国は、モナコ王国やリヒテンシュタイン公国のように、ヨーロッパに実際にあるかもしれないと感じさせる、現実に近い側にいる想像です。
『ロード・オブ・ザ・リング』の舞台となる中つ国はドラゴンやエルフのいる世界で、過去にも存在したことがない、ファンタジーよりの空想・想像の世界です。
この使い分けがすごい微妙です。
Snoopy is a fictional dog.
スヌーピーは架空の犬だ。
A dragon is an imaginary animal.
ドラゴンは架空の動物だ。
犬(dog)はまぎれもなく存在している動物です。その中のスヌーピーはチャールズ・シュルツというクリエイターが生み出したfictionalな存在だといえます。
ドラゴンはそもそも現実の世界には存在したこともなく、誰かはわかりませんが作者不詳で、誰かがゼロから作り上げたものです。したがってimaginaryを使う方が自然だという意見でした。
以下の例文などはニュアンスの差はあるもののfictionalとimaginaryのどちらでも自然な表現です。
He told all his friends about his fictional(imaginary) girlfriend.
彼は友達みんなに自分の想像上の彼女について話した。
丁寧に否定する言葉として使う
これらの言葉は「嘘」を遠回しに言う際にも用いられます。これは言い換えると、丁寧に「事実ではない」と否定していることになります。
The journalist discovered that many facts in the speech were lies.
ジャーナリストは、スピーチの中の多くの事実は嘘だと暴いた。
この書き方だとスピーチをした人は明らかに「嘘を言った」とかなりネガティブにいっています。
The journalist discovered that many facts in the speech were made-up.
ジャーナリストは、スピーチの中の多くの事実はでっちあげだと暴いた。
こう書くと少し直接の否定はしていませんが、それでもネガティブです。「嘘」よりはマイルドです。
The journalist discovered that many facts in the speech were fictitious.
ジャーナリストは、スピーチの中の多くの事実は、事実ではないと暴いた。
このように書くと否定はしているものの直接「嘘だ、でっちあげだ」とはいっていないので、丁寧に否定していることになります。