英語ではラット(rat)といえば汚い地下にいるようなネズミを指しますが、マウス(mouse)といえばかわいらしいペットとしても飼われるネズミを指して使われます。
同じような動物であっても与える印象がまったく異なる動物には「ねずみ」「鯉」「鳩」などがあります。状況によって言葉を選んだり、商品やキャラクター名にするときには注意してもいいと思います。
ラット(rat)とマウス(mouse)の違い
英単語としてのラット(rat)は汚らしいドブネズミのようなもので、より大きなネズミをイメージさせます。一方のマウス(mouse)はかわいらしい小型のペットとして飼うようなネズミを指します。
生物学的には野生のドブネズミ、クマネズミ属を改良したものがratで、小さなハツカネズミがmouseといった分類がされるそうです。
しかし英語のネイティブスピーカーであっても、あるネズミを見た場合に瞬時に生物学的な知識で判断するわけではないので、一般的な見た目のイメージと大きさなどによる使い分けをしています。
There are a lot of rats in the subway.
たくさんのネズミが地下道にいる。
I bought a pet mouse for my daughter.
娘のためにペットのネズミを買った。
ある日本人が宿泊したホテルの部屋にネズミが出たのでフロントデスクに電話をして「マウスが出た!」といったら「違う、ラットだ」と言われた笑い話があります。
ミッキーマウスはねずみのキャラクターですが、ミッキーラットといってしまうと、非常にうすぎたないものになってしまいます。
パソコンのカーソルを動かすのはその形からマウス(mouse)ですが、クチは「mouth」なので字も発音も似ていますが違います。
mouse【máus】
mouth【máuθ】
またmouse(単数形)とmice(複数形)となり不規則に変化している点も注意が必要です。
There is a mouse here.
ここにネズミが1匹いる。
There are mice here.
ここにネズミが何匹かいる。
rodent
名詞で「齧歯動物」、形容詞で「齧歯(げっし)動物の」を意味し、ネズミ、リス、ハムスターを含む、物をかじるのに適した大きな切歯を持つ齧歯類の動物を指します。
また形容詞で「(ものを)かじる」という意味もあります。
She saw some kind of rodent in the building.
彼女は建物の中でネズミの一種を見た。
The disease is only known to affect rodents.
その病気は齧歯類にしか感染しないことが知られています。
広島カープの「carp(鯉)」
carp(カープ)も言葉によって受ける印象が異なる動物で、あまりスポーツチームとしては良い名前ではない感じがするといった意見がありました。
英語では鯉は「carp」と「koi」の2種類の表現があります。
carpといえば川の底のゴミを食べているような、薄汚い茶色い鯉を指します。あまり鮮やかな色ではありません。
一方で広島カープの鯉は日本庭園や公園などの池にいるニシキゴイなどのカラフルで鮮やかな鯉です。こちらはそのまま日本語で「koi」として認識されています。
He went fishing but only caught a carp, so he threw it back.
彼は釣りに行ったが、カープしか釣れなかったので池に戻した。
There are some huge carp in that lake.
あの湖には巨大なカープがいる。
She has a koi pond in her backyard.
彼女の裏庭には、鯉の池がある。
He enjoyed feeding the koi in the park.
彼は公園で鯉にエサをあげることを楽しんだ。
こういった事情からスポーツチームとしてはあまり印象の良い名前ではないという話です。
koiは幸運・繁栄のシンボルとしてアジア圏の富豪から人気で、日本の錦鯉の海外需要が高まっています。
鳩のpigeonとdove
ratとmouseの違いがそのまま当てはまるのは鳩を意味するpigeonとdoveです。
pigeon(ピジョン)は一般的な路上で見かける、灰色と濃い灰色のまざったハトのことです。よくクルックー、クルックーと朝方に鳴いています。
一方のdove(ダヴ)は平和の象徴とされ、オリンピックなどの開会式で飛ばされたりする、真っ白なハトのことです。
A pigeon pooped on my car.
鳩が車にフンをした。
The magician made a dove disappear.
マジシャンは鳩を消した。
そのきれいな姿から英語圏でも商品名になったり、穏健派の人を描写する「ハト派」などのイメージにもつながっています。
このように意味的には同義、生物学的に同じ、近いものであっても、英単語として受けるイメージがかなり異なるものがいくつかあるので、特に商品名などにする場合は考慮してもいい要素だと思います。
動物の単数形と複数形の問題については別の記事にまとめたものがあります。