「issue(イシュー、イッシュー)」と「problem(プロブレム)」はどちらも「問題」と訳せる言葉ですが、少しニュアンスが異なるのでネイティブスピーカーの意見を聞きながら、違いや使い分けを整理していきます。一部で意味がかぶっているので、置き換えても問題なく成立するケースもあります。
後半は熟語における「issue」と「problem」の違いをまとめていますので必要な方はご覧ください。
アクシデントやトラブルについては『accident / incident / happening / troubleの意味の違い』に、matterについては『matterの意味と使い方』にまとめてあります。
この記事の目次!
issueの意味と使い方
名詞のissue(イシュー)は「論点、議題、話題、問題点」といった、人々が議論する必要や、話し合うべきトピックのことを表します。
社会問題から家族の問題までさまざまですが、悪いことに限った話ではありません。大谷翔平がピッチャーに専念すべきかバッターに専念すべきかはissueですが悪いことではありません。
Gun control is a big issue in the USA now.
銃規制は今アメリカでは大きな論点である。
The TV show discusses a variety of issues.
そのテレビ番組では色々な議題を議論する。
The radio show discusses various political issues.
ラジオ番組はさまざまな政治的問題について議論する。
公表する、発布する、号
issueは名詞でほかにも雑誌などの「号」の意味や、動詞では「公表する、発布する」といった使い方がありますが今回の本題ではないので割愛します。当然、これらの意味ではproblemとはまったく異なります。
I have the latest issue of Time.
私はTIMEの最新号を持っている。
The company issued parking passes to all employees.
企業はすべての従業員に駐車場のパスを発行した。
problemの意味と使い方
一方でproblem(プロブレム)は「不具合、課題、問題」といった意味で、解決される必要があり、悪影響がある悪い物事です。
My smartphone has a lot of problems.
私のスマートフォンにはたくさんの不具合がある。
The only problem with the project is that we don’t have enough money.
そのプロジェクトの唯一の課題は私たちが十分なお金を持っていないことだ。
「issue」と「problem」の違いと使い分け
「issue」と「problem」は意味が重複することも多いです。
「悪影響がある悪い物事(problem)」は場合によっては、同時に「人々が話し合って解決する必要がある物事(issue)」でもあるからです。
つまり全てのproblem(不具合・課題・悪いこと)はissue(議題・話題)の類いであるといえます。「結婚式に向けてのお金がない、お互いに話し合わないといけない」はproblemでもありissueでもあります。
しかし、全てのissue(議題・話題)がproblem(不具合・課題・悪いこと)であるとは限りません。「結婚式でどんな音楽をかけようか? どんな演出をしようか?」はissueですが、problemだと感じる人は少なそうです。
下の例文では「お金がないこと」は悪いことであり、また解決のために議論すべきことなので「issue」と「problem」のどちらも正しいです。
The only problem(= issue) with the project is that we don’t have enough money.
そのプロジェクトの唯一の問題点は私たちが十分なお金を持っていないことだ。
「issue」と「problem」を置き換えできない事例
しかし、次の例文の「gun control(銃規制)」にはissueを使うのが適切です。
「gun control(銃規制)」そのものは「銃が多すぎる問題の解決策」「銃による殺人事件を減らすための解決策」であって、銃規制そのものが問題ではないためこれを「problem」で表現するのは変です。
Gun control is a big issue in the USA now.
銃規制は今アメリカで大きな論点・議題である。
Gun control is a big problem in the USA now.
(銃規制そのものが悪いことになる)
「gun control(銃規制)」に対してそのままproblemを使う表現だと「銃規制そのもの = 悪いこと」のような意味になり、「銃規制は大問題だ! (撤廃してもっと世の中に銃があるべきだ!)」といったニュアンスで受け止められる可能性があります。
日本語でも同じですが「政治は問題だ!」「ソーシャルディスタンスは問題!」のように主語が大きく、いろんな要素を含むものに「problem」を使うと、様々な解釈が可能になってしまいます。
「problem」を使う場合は、明確に悪いできごと、課題になっていることを狙って使ってください。
ビジネス英語としてproblemとissueの使い方の違い
problemが「悪いこと」に関連づけられることから、ビジネス英語では遠回しの表現、婉曲として「issue」が使われる傾向があります。
全てのproblemはissueであるのでこの使い方も可能です。
We are sorry to inform you that there was an issue with your shipment.
= We are sorry to inform you that there was a problem with your shipment.
発送に問題があったことについて、誠に申し訳ありません。
商品の発送に関して「話し合いをする話題があった(issue)」と遠回しに言うか、「不具合、悪いことがあった、欠陥(problem)」と表現するかの違いです。
この例文ではissueを使うのがビジネスとしてはいいかもしれません。problemを使うとはっきりとネガティブな印象を与えてしまいます。
次の例文も同様で「issue」を使ったほうがベターです。
If you have any issues with your product, please contact us.
= If you have any problems with your product, please contact us.
もし商品に問題がありましたら、ご連絡ください。
以下は実際のグーグルのエラー表示における「issue」の使い方です。リアルタイムで集計する機能に不具合があったときに表示されました。「issueを経験している」と書かれており、最後も「このissueに取組でいる」と表示しておりネガティブな意味や自分たちの落ち度がより鮮明になる「problem」を使っていません。

グーグルのエラー表示のissueの使い方
ただ全てのissueがproblemにはならないので、ビジネスの場面では混乱することもあります。大体は文脈から読み取れます。
① We discussed a lot of issues at the meeting today.
私たちは今日の会議でたくさんの話題について議論した。
上の例文だとissueは「議題・話題」であって、会議でさまざまな話題について話し合ったという意味です。
We discussed the many issues customers are having with the software at the meeting today.
私たちは今日の会議でお客様が抱えているソフトウェアのたくさんの不具合について議論した。
上の例文だとproblemの意味であると判断できます。同じissueを使っても意味する部分が少し違ってきます。
have a problem with
次に、熟語をいくつかご紹介します。少し難しいですが、ネイティブには日常的に使われている表現です。
have a problem withは何か悪いことがある時に使えるシンプルなもので「~に問題がある、~を受け入れ難く思う」といった一般的な表現です。この場合はあまり見かけませんが「issue」と置き換えることができます。
I have a problem with my smartphone.
=I have an issue with my smartphone.
私のスマホには不具合がある。
しかし、「意見が合わない」や「反対する」といった意味で使う場合は「issue」と置き換えることはできません。
I have a problem with people using their smartphones while walking.
私は歩きスマホをする人とは意見が合わない。
I have no problem with same-sex marriage.
私は同性婚に反対しない。
have issues with
「have an issue with」という表現はそこまで見かけませんが、全く違った意味の熟語で「have issues with」があります。精神的な、または感情的な問題があることを表します。
He has issues with his parents.
彼は両親とうまくいっていない。
She has anger issues.
彼女は怒りが抑えられない。
この場合、2通りの表現方法があります。
She has anger issues.
= She has issues with anger.
have a 〇〇 problem
「have a 〇〇 problem」という表現はたいてい依存や中毒のことを表現します。
He has a gambling problem.
= He is addicted to gambling.
彼は、ギャンブルの問題がある/ギャンブル依存症だ。
She has a drinking problem.
= She is an alcoholic.
彼女は、お酒の問題がある/アルコール依存症だ。
下のようなwithを使った例文はまた意味が変わり、最初に紹介した「意見が合わない」や「反対する」の意味で解釈される可能性が高いです。それぞれギャンブルや飲酒に反対している、といった感じになります。
He has a problem with gambling.
彼はギャンブルに反対している。
She has a problem with drinking.
彼女はお酒に反対している。
have a 〇〇 problemとhave a problem with 〇〇
「have a 〇〇 problem(依存症や中毒に使われる)」と「have a problem with 〇〇(~に問題がある、~を受け入れ難く思う、~に反対する)」は差がありますが、常に100%そう解釈されるわけではないので、多くのコメディのネタとして使われています。
アニメ『サウスパーク(YouTube)』では、お父さんが娘に彼女の「marijuana problem(マリファナ・プロブレム)」について話すシーンがあります。娘がマリファナを乱用しているといった問題ではなく、彼女が反マリファナなのでなんで反対しているのか? と聞いています。
映画『フライングハイ(YouTube)』で、キャラクターが正しく飲めないことを、彼は「a drinking problem」がある、と表現していますが、これは依存症といった意味と、グラスを正しく口に運べないといった意味での「a drinking problem」がかかっています。
take issue with
「take issue with」は「反論する、反対する、異議を唱える」といった意味です。「have a problem with(〜に反対する、~に問題がある)」とも似た熟語ですがニュアンスが少しだけ違います。
「take issue with」はより積極的で、自ら議論しかけたり相手を説得したりといった行動を起こしたりするような感じです。
「have a problem with」は良い感情を持っていないといった意味での反対であって、相手を積極的に変えようとまではしていない感じです。
The J-League took issue with the fact that the Urawa Reds didn’t try to stop their fans.
Jリーグは浦和レッズが彼らのファン(の暴走)を止めようとしなかった事実を問題にした。
The J-League had a problem with the fact that the Urawa Reds didn’t try to stop their fans.
Jリーグは浦和レッズが彼らのファン(の暴走)を止めようとしなかった事実を問題にした。
上の例文について、実際Jリーグ機構は浦和レッズに罰金を科し、それを是正しにいったためissueがより適切です。
problemでもOKなのですが、それは「Jリーグ機構が良く思ってなかった」といった感じで、管理運営する立場としては少しぬるい感じがします。