日本語でブログやツイッターなどのソーシャルメディアなどにコメントが殺到することを「炎上する」と表現しますが英語でも類似の表現がいくつかあります。ネイティブの意見を聞きながらまとめました。
よくネット炎上の英訳に「flaming(flame)」が炎を表す言葉の類似から取り上げられます。
近いニュアンスは表現できますが、日本語の炎上と英語のflamingでは異なる点がいくつかあります。
この記事の目次!
flamingと炎上するの違い
大きく違う点はまずネット用語の「炎上」は、余計なことを言った当事者の状態、動作を表し「ホリエモンがツイッターで炎上してるよ」「ヨッピーがよけいなこと言って炎上してるよ!」といった感じで使います。
一方のflameは「~をネットで攻撃する、非難する」「ネットで攻撃的または卑猥な言葉を使用する」といった意味なので、こちらは攻撃する側、書き込む側の行動・状態を指しています。
根本的に違うのは、日本語の炎上はなにかやらかした本人が主語になり、一方でflameは「◯◯を非難・攻撃する」なので攻撃している人が主語になる点です。
Many people are flaming me because of my blog.
=私のブログが原因で多くの人がネットで私を批難している。
flameは名詞で「炎・火炎、激情」、動詞では「燃やす、燃え上がる」のもともとの意味があります。
「ネットで攻撃する」はインターネットスラングであり、最近になって使われ始めた用法のため、全世代で通じるかどうかはわかりません。また「ネットで攻撃すること」を指すため、目の前にいる相手を批判、攻撃することには基本的には使いません。
flamingは感情的な書き込み
flameの言葉が指す範囲、具体的な行動も「死ね!消えろ!」みたいなレベルから、わりと論理的ともとれるものまで、どこからどこまでの範囲とは決まっていないようです。
印象としては「感情的な行為、書き込み」な感じがするそうで、傾向としては罵り合いレベルを指します。
例えば映画監督のマイケル・ムーア監督はブッシュ大統領やドナルド・トランプへの痛烈な批判で知られます。日本ではやまもといちろうさんなどが企業の不正に対しての告発記事を書いています。
これらはネットであってもflaming(flame)ではなく、criticize(批判する)にあたるという見解です。日本語でも同じですがcriticize(批判する)は、言葉を選んで注意深く、ロジカルに発言します。
一方のflaming(flame)はもっと衝動的な罵詈雑言のようなものを指すそうです。
ただ、このあたりはいちネイティブスピーカーの見解でしかないので、定義に関しては意見はわかれそうです。
一人でもflameは使える
flameは「~をネットで攻撃する、非難する」といった意味でしかないので、1人であっても攻撃している人がいれば、表現として「flame」を使うことが可能です。
日本語と違うのは必ずしも大勢ではなくてもいい点ですが、例文のようにMany peopleなど大勢を指す言葉が主語になることが多いようです。
ただし、この「~をネットで攻撃する」の意味で使う場合には基本的にはA flame B(AがBを批難する)のように主語(誰が)と目的語(攻撃相手)を伴わないといけません。
したがって「みんなが、人々が」といった言葉を加え、受け身(受動態)などの形にすれば日本語の「炎上する」に近いニュアンスの言葉になります。
いくつか例文を作ってもらったので参考にしてください。号泣で有名になった野々村議員的なものをイメージしました。
Everyone flamed Nonomura online.
(人々が野々村をネットで批判した)
Everyone is flaming Nonomura.
(人々が野々村を攻撃している)
Nonomura is being flamed.
(野々村は批判を受けている)
上の例文などは、何人からという表記がないので「批判を受けている」としかいっておらず、1人だけに罵詈雑言を浴びせられている可能性も考えられます。
There was a flame war when Britain left the EU.
(イギリスがEUを離れるときには批判があった)
flame warはネットで議論がヒートアップして喧嘩になることです。
I’m flaming.の注意点
この形を「炎上している」の意味で間違って単独で使ってしまうと「ゲイだ」「私は明らかに典型的なゲイだ」というまったく違う意味のスラングになってしまいます。
He is flaming.
(彼はゲイだ)
したがってMy blog is flaming.とも表現しません。以下の間違いに関連しますが「ブログがフレイミング」だと意味が通らないそうです。
Woman Insightの記事の間違い
ネットで「炎上 英語」で検索すると小学館のWoman Insightの記事『【英語でなんて言う?】ネット用語の「炎上」って言葉、アメリカにもある?』が1位で表示されます。
ここに以下のような例文が掲載されています。
例)
Did you hear that the actress got her blog flaming again!
あの女優のブログまた炎上したんだって!
魚拓:『【英語でなんて言う?】ネット用語の「炎上」って言葉、アメリカにもある?』
この文章はイギリス人のダンと、カナダ人のスティーブ、それからダンの友達のReddit(掲示板サイト)などに出入りしているアメリカ人に確認してもらいましたが、3人ともよく意味がわからないと言っていました。
文法のややこしい話を飛ばすとMy blog is flamingと言っていることは同じなので意味がとおりません。
この女優さんのセクシーな写真でもブログにあってゴキゲンな状態かなにかってこと? hotに近い意味? と言われたので、使い方が間違っています。
under fire
他にも炎関連でいえばunder fire(攻撃の的になって、批判・非難を受けて、やり玉に上げられて)の表現もあります。
ただし、このfireは火ではなくて、意味合いとしては銃などの「発砲・砲火」です。
The owner of a famous restaurant is under fire for his racist remarks.
(有名なレストランのオーナーは、人種差別的な意見でやり玉にあげられている)
大阪の寿司屋が外国人に提供する寿司に大量のわさびを入れて批判されましたが、例文はイメージ的には近いものです。
これは2016年にアメリカの新興宗教が工業用のブリーチを自閉症のクスリ(ミラクル・キュア)と称して販売し世間から大きな批判を浴びたときのテレビ映像です。テロップにもunder fireの文字が見られます。
in hot water
他にもいくつかの候補があります。熱いという意味で近いのはhot water(お湯)でしょうか。
感覚的にもわかりますが熱いお湯の中にいる表現、「in hot water」で苦境にあるといった意味になります。
I’m in hot water for lying about my college on my blog.
(私は自分の大学についてブログで嘘をついたため苦境にある)
ショーン・Kさん的なものを思い浮かべればわかりやすいかもしれません。
in hot waterもunder fireも「ややこしい問題になる」「批判を浴びる」の訳ですが日本語の「炎上」と違うのは、別にネットだけで使う言葉ではない点ですね。
離婚問題や職場の失敗などの「修羅場になる(in hot water)」のような感じで使えてしまいます。
ただし上の新興宗教への批判など、もちろんツイッター、フェイスブック、ブログなどのネット上でも多いので、当たり前ですがネットの状況も含まれています。
その他の類似表現
日本語の「炎」にこだわらなければ、より的確に状況を表す表現は無数にあります。
厳密にいえば日本語のネット「炎上」も分類可能です。「炎上」の英語表現もそれぞれ適切なものがあるかもしれません。
アイスクリームのケースに入ったり、働いている職場で悪ふざけするような「無自覚な軽犯罪の公開」「反社会的な行為」など、わりと擁護のしようのない、明らかな当事者の落ち度で批判を受けるケース。
ホリエモンやドナルド・トランプ、ネットの有名人でいえばイケダハヤトさんや、はあちゅうさんなどに代表される極端な意見、暴論のような「賛否両論のきわどい意見」で周囲が騒がしくなるのは、批判や罵る敵も多いけど、理解を示す味方もそれなりにいる状況です。
以下は特にネットだけの行為を指すわけではありませんが類似の表現です。
My blog was criticized online by many people.
(私のブログがネットで多くの人々に批判された)
My blog got a negative reaction from many people.
(私のブログが多くの批判的な反応をたくさんの人から受けた)
blogと書いた時点でネットの反応であることは明らかなので、特にonlineをつける必要もないかもしれません。
a negative reactionも、ネガティブな反応をさらに分類できるようならばnegative reactionsと複数形にしてもOKです。
My blog got many negative reactions.
(私のブログが多くの批判的な反応を受けた)
I got a lot of negative feedback on my blog.
(*上と似たような意味です)
My blog was controversial.
(私のブログが物議をかもした)
賛否両論で騒がしくなっているだけならばcontroversial(物議を醸している)などでも表現できます。
There was a lot of backlash about my blog.
(私のブログに多くの反発があった)
「炎上」はわりと便利な言葉でさまざまな状況を描写していますが、英語にする場合は的確に状況を伝える単語を探したほうがいいかもしれません。
ネットでよくある「さらしあげ」についてはshamingという行為にまとめています。また野球のピッチャーの炎上については以下の記事に考察をまとめています。
やまもといちろう公演会
ネットの炎上に関する考察に関してはプロともいえるブロガーのやまもといちろう氏の公演にいったレポートがあるのでご紹介しておきます。
炎上の事例や対処方法なども公演で語られて、聞いていて面白かったです。
この中では炎上でもないのにニュースメディアが「炎上した」と見出しに使うケースなども紹介されています。