筆記体は英語では「cursive」または「cursive handwriting」「cursive writing」と呼ばれており、教育における位置づけは各国で少し違いますが、常に「筆記体は必要なのか?」といった論争が起こっています。
ニュースでアメリカにおける筆記体の論争を扱ったのでご紹介します。書体のサンプルもあるので筆記体を覚えたい方は参考にしてください。
筆記体のサンプル
cursiveそのものは【kə́ːrsiv】と発音されます。
cursive【kə́ːrsiv】
漢字の「草書」にあたり、早く書くために省略や変形が行われており、そもそもの形を理解していないと読むのも難しい書体だといえます。
まずは実際の筆記体のサンプル画像を掲載しておきます。標準的な筆記体の書き方です。
以下はデザインの背景などに使う素材なので意味のない単語の羅列ですが英語の筆記体で書かれています。以下の筆記体はまだ判別しやすい感じでしょうか。
もっと崩されると英語かどうかも判定するのが怪しくなります。以下の崩した筆記体は個々の字と書かれている単語を見る限りたぶん英語だと思います。
見出し部分などワンポイントで使われるデザインは高級感を出すためにチラシ、パンフレットなどで多く見られますが、上のように文章で書かれると非常につらいです…。
筆記体論争が再燃
2017年にアメリカのイリノイ州で義務教育における筆記体を支持する動きがありました。しかし、同時に「必要ない」といった意見もあがっています。
要点としては筆記体を教えるぐらいならば現代社会で役に立つタイピングなどに時間を割いたらいいのでは? という意見と、記憶を助けたりなど教育的な必要性の板挟みです。
この対立は今に始まったことではなく「筆記体は必要なのか?」といった論争が常に付きまとう状況です。
The US state of Illinois recently upheld mandatory education of cursive handwriting in public schools, reigniting the controversy over the classical style.
アメリカのイリノイ州が最近になって、公立学校の義務教育における筆記体を支持した。この古典様式を巡る論争を再燃しながらだ。
Those in favor of cursive cite its speed in handwriting lecture notes which is proven to help retention and understanding of new information.
これらの筆記体支持の人々は、手書きで授業のノートを取ることのスピードを引き合いにだしている。(手書きノートは)新しい情報に対しての記憶と理解を助けることは証明されている。
On the other hand, many feel that typing is a more efficient way of recording information and lesson time could be better spent on more practical skills.
その一方で、多くの人々はタイピングのほうがより効率的な情報の記録方法であり、また授業時間をより実際に役立つ技術に使うのがより良いのではと感じている。
アメリカの筆記体事情
ネットで調べてみた程度ですが、アメリカでいえば全土の標準的なカリキュラムには筆記体を指導することがすでに含まれていません。各州によって状況は異なりますが、教えなくてもいいけれど、教えてもかまわないといった裁量が教師に与えられています。
確実に学校で筆記体を教えることが減少している代わりに、キーボードの打ち方、タイピングを必須カリキュラムに盛り込むケースが増えています。
しかし、少し古いですが2007年のアメリカの小学校の教師に行った調査によると、筆記体の必要性は多くの教師が感じているといった結果が出ていました。
今回のニュースのように「筆記体」については減少しているものの、常に反対意見、論争が絶えない分野だといえます。
日本の状況
日本では過去に学校で筆記体が必須項目として教えられていた時代があり、おそらく1970年代生まれぐらいまでの人は確実に学校で習ったことになります。
それ以降については何度か指導要領の改訂が行われ「文字指導に当たっては生徒の学習負担に配慮し筆記体を指導することもできる」となっています。これも教える先生の裁量や、先生自身の英語経験に大きく影響される要素だといえます。
指導計画の作成と内容の取扱い
(1) 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
ア 各学校においては,生徒や地域の実態に応じて,学年ごとの目標を適切に定め,3学年間を通して英語の目標の実現を図るようにすること。
イ 2の(3)の言語材料については,学習段階に応じて平易なものから難しいものへと段階的に指導すること。
ウ 音声指導に当たっては,日本語との違いに留意しながら,発音練習などを通して2の(3)のアに示された言語材料を継続して指導すること。
また,音声指導の補助として,必要に応じて発音表記を用いて指導することもできること。
エ 文字指導に当たっては,生徒の学習負担に配慮し筆記体を指導することもできること。
オ 語,連語及び慣用表現については,運用度の高いものを用い,活用することを通して定着を図るようにすること。
カ 辞書の使い方に慣れ,活用できるようにすること。
キ 生徒の実態や教材の内容などに応じて,コンピュータや情報通信ネットワーク,教育機器などを有効活用したり,ネイティブ・スピーカーなどの協力を得たりなどすること。
また,ペアワーク,グループワークなどの学習形態を適宜工夫すること。中学校学習指導要領 第2章 各教科 第9節 外国語(文部科学省)
ネイティブスピーカーでも読みにくい
スティーブにも確認しましたが、カナダでも当時はちゃんと教えられたそうです。今はどうなっているのかは不明ですが、アメリカと状況は変わらないと思います。
「読みにくくないの?」と質問してみたら、やっぱり「読みにくいよ」と言っていました。ネイティブスピーカーであっても読みにくい字体だといえます。
現代で必要性があるとすればサイン、署名、手紙ぐらいだとの意見でした。
例えばお礼状などの場合にタイピングですると味気ないのは英語も日本語も同じで、そこは直筆の手書きのお礼状が喜ばれます。
そういったフォーマルな手紙にブロック体で「THANK YOU」と書いていると、小学生のありがとうカードみたいになるので、そこは筆記体が必要になるだろうと言っていました。
また日本の草書体などにもいえますが、昔の文献などが読めなくなるといった弊害も出てきます。
結論は出ませんが、自分の名前ぐらいは筆記体で書けるようになると便利です。
私はクレジットカードのサインをするときは(かっこつけて)筆記体で書いています。セキュリティ的には海外で真似されにくい漢字がベターだといった意見もあります。