asylum(アサイラム)は現代的な言葉の意味では「安全な場所」を指し、国を追われて逃げた人々が求める場所に対して使われます。これは難民問題を扱ったニュースでよく登場します。
しかし、ちょっと古い言葉遣いでは「精神病院」を指して使われていました。これが現代の英語表現でもまれに使われる意味です。
asylum seekerはいわゆる「難民」のことで、ほぼrefugeeと同じような意味で使われていますが、国際法の定義では少し違いがみられます。
asylumの意味
現代の英語、ニュースに登場する英語としては「安全な場所」のことです。
具体的には文脈によって指すものが違いますが避難所、難民収容所、児童養護施設、安全な場所、亡命、庇護などを表しています。カタカナ読みだと「アサイラム」です。
asylum【əsáiləm】
He was seeking asylum in the US after his government tried to kill him.
政府が彼を殺そうとした後で、彼はアメリカ国内で安全な場所を探していた。
Many Syrian refugees are seeking asylum elsewhere.
多くのシリア難民がどこかに避難場所を探している。
精神病院
ちょっと古い使い方でasylumで「精神病院」を指すことがあります。古い用語ですがたまにニュースで見かけます。
My grandfather was put in an asylum, because he was gay.
私の祖父は精神病院に入れられた。なぜなら同性愛者だったからだ。
The quality of asylums have increased greatly over the years.
精神病院の質は長い年月をかけて大きくあがっている。
かつては同性愛は犯罪であり精神病院に入れられたりしましたが、例文はそういった時代感のある言葉遣いとしてのasylumです。これはinsane asylumとも呼ばれました。
また昔の精神病院はムチで殴ったりが常習化していたので、そういう時代から比べると大きく改善されています。
ちょっと前にバットマンに登場する凶悪犯を閉じ込めた精神病院を舞台にしたゲーム『バットマン アーカム・アサイラム(アーカム精神病院)』がPS3から発売されています。
ashram
似たような言葉で「ashram(アシュラム)」があり、ヨガをする場所のことです。もともとはヒンドゥー教の僧院だそうです。
ヨガをする場所といってもヨガスタジオのようなものには使わないと思います。
He lived in an ashram for a year.
彼は1年間、アシュラムに住んでいた。
The ashram is located high in the mountains.
そのアシュラムは山の高い場所に位置する。
asylum seekerの意味
asylum seekerとはasylumを探し求める人のことで、多くは他の国に逃げたいと思っている人を指します。亡命希望者といった訳が辞書にありました。
けれど、まだ受け入れ先の国が決まっていない、受け入れられるかどうかもわからない人を指します。
The number of asylum seekers at the border has been increasing since the civil war started.
内戦が始まってから、国境の難民申請者の数は増えている。
refugeeとasylum seekerの違い
ニュースなどではほぼ同じ意味、言葉の置き換えとして使われているケースもあります。
正確にいえばrefugeeが「難民」のことであり、難民とはすでに受け入れが決まった人や、庇護される権利を得た状態の人のことを指します。その国から「難民である」と認定を受けた状態の人です。
asylum seekerはまだ認定を受ける前の人で難民認定を申請中です。このあたり国際的な取り決め、国際法の定義なので、どこまで正確に運用されているかは不明です。
The refugee found safety in Japan after his own government threatened his life.
自国の政府が彼の命を脅した後で、その難民は日本で安全な場所を見つけた。
これは広い意味のmigrant(移住者)の一種だといえます。
日本の難民問題について
ニュースで扱ったのは日本の難民認定の制度が少し複雑になったことです。
「難民」といえばボロボロのボートに乗って食べ物もなく逃げ出してきたり、集団でぞろぞろと故郷を捨てて逃げてくる人々をイメージしますが、確かにニュースで報道されるような難民の人々もいます。しかし、2017年に日本で行われた15000件の難民申請については、このようなイメージとは少し種類が違います。
日本で行われる難民申請の大半はフィリピン、ベトナム、スリランカ、インドネシア、ネパールの人々で、彼らは「短期滞在」「留学」「技能実習」といった名目で日本に来ています。おそらく飛行機で入国しており、ぱっと見た感じは観光客と変わらないかもしれません。
日本の難民申請者の94.8%は正規の在留資格を持っており、ここから「難民申請」をして認定されれば、短期滞在や一時的な技能研修で来た人でもずっと日本にいて働くことが可能になります。他にもさまざまな恩恵を受けることができます。
2017年の1月から9月の間に実際に難民申請をして認定されたのは10人で、人道上の配慮を理由に在留を認められたのは34人です。この少なさが国際社会から非難される要因になっています。
こうなってしまう要因として陸続きの国ではないのではっきりとした命からがら逃げてきた人と、単なる違法就労者の区別がつきにくい部分もあるのだと思います。
本来、難民申請は命の危険がある人々を保護するものですが、単に「借金取りから逃げてきた」「自国に帰ってもいい職がない」といった理由で、短期滞在の人が「とりあえず難民申請」を出して悪用するケースもありました。審査中の3年間はrenewable work visa(更新可能な就労ビザ)を手にすることができたためです。
こういった悪用されがちだった制度をもう少し厳格にしようという動きがありました。いろいろ問題としてスパッと割り切れるほど簡単な構造ではなくなっています。