3つの異なる語源が1つの同じ言葉「tender(テンダー)」になってしまっているので、大きく3つの意味にわかれると考えると整理しやすいかもしれません。
1つは最も見かける「優しい、思いやりがある」や食べ物に対しての「柔らかい」、人に対しての「過敏な」で、これらは「簡単に傷ついてしまう」といった意味から派生しています。
2つ目は公式に提供する、差し出すといった意味で「offer(オファー)」が近い意味ですが、あまり見かける使い方ではありません。
最後はtend(世話をする)にerがついたもので、世話人などを意味しますが現代では大型船をサポートする小型船を指して使われることがあります。
それぞれの使い方を例文にまとめているので参考にしてください。
優しい、思いやりのある、親切な
まずtender(テンダー)には優しいといった「gentle, kind」に近い意味もあります。食べ物に使うと「柔らかい」の意味です。
語源としてはもともとは簡単に傷ついてしまうもの、デリケートなものを指して使っていたそうです。これは若さや弱さにもつながっています。
He gave her a tender smile.
彼は彼女にやさしく微笑んだ。
This old house needs some tender loving care.
This old house needs some TLC.
この古い家にはTLCが必要だ。
TLCはtender loving careで「優しい扱い、いたわり」といった意味です。
エルヴィス・プレスリーの代表曲である『Love Me Tender』をはじめ歌詞でもよく見かける単語です。
感じやすい、敏感な
また敏感、感じやすいといった意味もあります。簡単に傷ついてしまうものは「弱いもの」であり「若いこと」でもあるといった意味でつながっています。
My arm is feeling pretty tender after being hit.
腕をぶつけた後で、腕がかなり敏感になっている。
He left home at the tender age of 15.
彼は弱冠15歳で家を離れた。
tender ageは過敏な年と考えてもいいですが、経験などが浅い若い年齢を強調した表現で日本語の「弱冠」などが近いです。
tenderとsoftの違い
tenderは食べ物に対して使うと「やわらかい」の意味になりますが日本語の「やわらかい」や英語のsoft(ソフト)とイコールにはできない注意点があります。
基本的にはtenderは食べ物に使います。ステーキなどが代表的です。
The steak was really tender.
ステーキは本当に柔らかかった。
× Her pillow was very tender.
(枕には間違いです)
逆をいえばソファーや枕のような物体にtenderを使うのも変です。その場合はsoft(ソフト)を使います。
The sofa was really soft.
そのソファーはとても柔らかかった。
× The sofa was really tender.
(間違いです)
また食べ物に使う場合であっても良い意味での柔らかさに使うので以下の例文ような「ポテトチップスが湿って柔らかくなった」のような使い方は変です。
湿気でふにゃっとなってしまう、ネガティブな柔らかさは「soggy」あたりが使えます。
× My potato chips became tender when they got wet.
(ネガティブな柔らかさには使わない)
tenderを使う食べ物
しかし食べ物全般に「やわらかい」の意味でtenderを使うかといえばそうではありません。明らかに日本語の「柔らかい」と感覚が違うように思います。
例えば「steak(ステーキ)」が柔らかい場合にはtenderを使いますが、「bread(パン・ブレッド)」が柔らかい場合にはsoftです。
The steak was really tender.
そのステーキは本当に柔らかかった。
The bread was really soft.
そのパンは本当に柔らかかった。
The bread was really tender.
The steak was really soft.
(一般的ではない表現)
ステーキにsoftを使うとまずい意味で柔らかい感じ、水っぽいようなイメージで伝わるかもしれません。
一般的にtenderが使われる食べ物といえば肉類全般(meat, steak, chickenなど)や野菜類全般(vegetable, carrot, potato)が代表的です。ほかにパスタ(pasta)やビーンズ(beans)なども含まれてきます。
辞書やネイティブスピーカーに確認してみると食べ物に対しての「tender」は、言い換えると「chewyではない(Not chewy)」の意味が近いそうです。
chewyは「よく噛む必要がある」「飲み込む前にかみ砕く必要があること」ぐらいで、それらがまったく必要ないのが「tender」にあたるといえます。「簡単に噛める」と考えてもいいのかもしれません。
結局はその食べ物に前提としてどういう印象やイメージがあるかが重要な感じで、パンはそもそも前提として「かみ砕く」という概念が薄いのでそれにtenderを使うのが変だといった感じです。
ただ日本語の発想だと「いや、固いパンもあるじゃん?」と思ったりするので、食べ物に対するとらえ方・視点の根本的な差がありそうな感じがします。
たとえば両方使える場合もあります。以下の場合はtenderを使う人が多いと思いますがsoftでもOKだという話です。
Cook the carrots until they are tender.
Cook the carrots until they are soft.
ニンジンが柔らかくなるまで火を通してください。
麺類などどっちなのか? といった話もあってなかなか言葉の使い方としては難しい部分が含まれています。
提出する、述べる、申し出る
上にあげた「優しい、柔らかい」とは別の語源でofferに近い意味があります。
これは動詞で「提出する、述べる」、名詞で「提出、提供、申し込み、申し出」です。非常にフォーマルな言葉遣いです。
この意味では動詞・名詞でもあまり日常では使われず、見かけるとすれば「tender + resignation(退任を申し出る)」といった使い方ぐらいです。
He tendered his resignation.
彼は退任を申し出た。
They are accepting tenders for the building project.
彼らはその建築プロジェクトに対する申し出を受け入れている。
bidにも似たような意味がありますが、スティーブに聞いてみると、上の意味でのtender(提案・申し出)は日常会話ではないので以下のようにbidで表現するほうを選ぶといった意見でした。
They are accepting bids for the building project.
彼らはその建築プロジェクトに対する申し出を受け入れている。
どちらにしろこの「申し出」「申し出をする」の意味で登場するケースはけっこうレアかもしれません。
見守る人・補給船・連絡船
最後が「tend(世話をする、気を配る)」や「attend(世話をする、出席する)」に「er」がついた形で、世話をする人・世話をするものといった意味になります。
現代の英語では大きな船と岸をつなぐ小型の船を指します。dingeyなどとも呼ばれます。
They anchored then got in the tender and went to shore.
彼らは錨をおろし、連絡船に乗り込み、海岸へ向かった。
昔は燃料を乗せた小型の船、補給船、あるいはそこで働く機関士のようなものを指しており、本船の世話・サポートをするような人や船を指して使われたそうです。今では本船の活動を助けるような小型船を指します。
人間に対してはtendする人で「tender」の意味は通りますが、そのまま使われるよりも「bartender(バーテンダー)」や「goaltender(アイスホッケーのゴールキーパー)」のような形で見られます。
The bartender tallied his bill before he went home.
バーテンダーが家に帰る前に勘定を集計した。
何か見守る人や世話係を指して「tender」といっても言葉の意味は通っていますが、上にあげたようにいっぱい意味があるので混乱するのを避けるため、もっと誤解を招かない適切な表現(keeperやstaffなど)を使うといった意見でした。