和製英語としてもたびたび取り上げられる「サイン」ですが、日本語の「サインください」は、有名人から記念にもらうサインも、宅急便の伝票に書く署名も「サイン」になってしまっているので少し英語と使い方が違います。
よく和製英語だと指摘を受けますが、ネイティブに確認してみると意外とそのまま使えることもわかりました。
signatureとautographは共に自筆での署名などを表しますが少し使い方や意味が異なります。
動詞と名詞のsignも含めて使い方などを一通りまとめてみました。
この記事の目次
signatureとautograph
一般的な理解としてsignatureは名詞で「署名」のことです。伝票やクレジットカードを使った時に書く、あの署名、直筆の意味です。
有名人からもらうサインは一般的にはautographといいます。名詞で「(有名人の)サイン」です。動詞で「(有名人が)自筆で署名する」の意味もあります。
基本的にautographは歌手や俳優、セレブなど有名人に対してのみ使う言葉であって、普通の一般人には使いません。
発音はカタカナにするとsignature(シグニチャー)とautograph(オートグラフ)ですが、発音しにくい部分もあるので音声を参考にしてください。
signature【signature】
autograph【ɔ́ːtəgræ̀f】
sign(サイン)
英単語としてのsignは動詞で「署名をする」と、名詞で「看板、標識、表示、兆し、記号」などの意味があります。
There are many signs in Times Square.
タイムズスクエアには多くの看板がある。
Look at that strange sign.
=Look at that strange signboard.
あの変な看板を見ろ。
この場合のsignboardもsignも同じ意味と思っても間違いありません。どちらかといえばsignboardという単語そのものが、同じ意味の繰り返し(サイン看板)にも感じられるそうです。
She showed a sign of loving me.
彼女は私を愛しているというサインを見せた。
この場合のサインは「ヒント、兆し、表示」に近い意味なので、カタカナの「愛しているのサイン」などとほぼ同じです。うがった見方をすれば、彼女が「愛してる!」と書かれた看板を見せた可能性もあります。
ツイッターなどで使われる「#」の記号も、英語ではhash, pound sign, number signなどとも呼ばれます。音楽の「♯(シャープ)」は形が似ていますが微妙に違います。
I’m in room #301.
=I’m in room number 301.
このように何かの目印になるようなものを指して英語ではsignなので、有名人と会った記念にもらう自筆をサインとはいいません。
上に書いたことが一般的な理解で、よく和製英語として取り上げられるのは「英語では有名人にサイン(sign)っていったらダメだよ。それは和製英語だよ」みたいな話なんですが、どうもそんなこともないみたいです。
場面をとりあげて違いを見ていきましょう。
サインを欲しいとき
有名人などに出会った記念に自筆の名前を書いたものが欲しいならば以下のような表現が可能です。
①May I have your autograph?
(有名人にのみ使う)
②Could you sign this please?
(一般人・有名人ともにOK)
①の表現が無難だと思います。
②のsignの動詞の使い方はよく和製英語だといわれますが特に問題ないそうです。記念に名前を書いてもらいたいときは色紙を持って②をいっても特に変ではありません。
The deliveryman asked me to sign a slip of paper.
(宅配業者が私に伝票に署名するように頼んだ)
I got Johnny Depp to sign my movie ticket.
(ジョニー・デップに映画のチケットに名前を書いてもらった)
有名人に対しても「名前を書く」という動作には動詞のsignを使えます。
名詞で使う
名詞で記念に有名人などの署名を持っている場合には以下の表現が可能です。
③I have President Obama’s autograph.
(有名人であることを強調した表現)
④I have President Obama’s signature.
(この表現でも問題ありません)
和製英語になってしまうのは、この例文で名詞としてsignを使ってしまうことです。
I have President Obama sign.
上の例文は間違いではありませんが「オ・バ・マ」と書かれた看板などを持っていることになります。
autographは基本的には有名人が書く記念の直筆、signatureは記念の直筆と、領収書などの受け取り証明、契約への署名どちらにも使えます。
The deliveryman asked for my signature on a slip of paper.
(宅配業者が伝票に私の署名を求めた)
Johnny Depp gave me his signature on my movie ticket.
(ジョニー・デップは映画のチケットに名前を書いてくれた)
動詞で使う
以下はオバマ大統領は彼の書いた本の1部にサインを書いてくれたを意味する文章です。
⑤President Obama autographed my copy of his book.
(有名人であることを強調した表現)
⑥President Obama signed my copy of his book.
(この表現でもOKです)
出版イベントで著者がサインをしてくれるものがありますが、それはbook signing(本のサイン会)という言葉が存在しています。
他にも以下のような言い回が可能です。
I got Johnny Depp to autograph my movie ticket.
(ジョニー・デップに映画のチケットに名前を書いてもらった)
Johnny Depp gave me his autograph on my movie ticket.
(ジョニー・デップは映画のチケットに名前を書いてくれた)
宅急便の受取にて
荷物が来ていたのでサインをした、の場合などの受取の署名は以下のようになります。
⑦A package came for you so I signed for it.
(一般的な表現です)
⑧ ✕ A package came for you so I autographed for it.
(*この表現は変です)
時々、宅配業者などが「I just need your autograph here.」とジョークで言ってくることはあるみたいです。
もしくはこれを読んでいる人が有名人ならば話は別ですね。
契約書などビジネスシーン
この場合のサインは「契約書にサインをする」のようにカタカナに近いものです。
⑨Tom Cruise signed the contract.
(契約へのサインです)
⑩✕ Tom Cruise autographed the contract.
(ビジネスシーンでは使わない表現)
sign with / sign to
~と契約するの意味で、組織に加わることを指しています。スポーツ選手やミュージシャンによく使われる表現です。
Masahiro Tanaka signed with the Yankees in 2014.
(田中将大は2014年にニューヨーク・ヤンキースと契約した)
With the internet, bands can be successful without signing to a major label like Sony.
(インターネットのおかげで、バンドがSONYのようなメジャーレーベルとの契約なしで成功できるようになった)
ビジネスの「契約」にサインする場合はsign a contractが使われます。
よく考えるとわかる話ですが基本的には動詞のsignは主語が「人」でないと使えません。
署名するのは人間だからで、会社同士の契約や主語が組織の場合は以下の表現になります。
Sharp made a contract with YMobile to sell their phones.
(シャープはワモバイルに電話を販売する契約に署名した/契約を結んだ)
signature
signatureには他にも「特徴、特徴的な性質、特徴的な」といった意味があります。
スポーツ用品やギターなどでも有名人の名前を冠した、普通の製品と違った特徴的なデザインや機能を備えたsignature modelといった商品があります。
以前にアメリカの各州の代表的な料理を紹介した記事がありました。
この記事の見出しなどは『The United States’ signature food of each state(アメリカ各州の特徴的な食べ物)』となっていました。
他に関連記事としてサインがほしくなるような有名人を表す表現をまとめた記事があります。