カタカナでもよく見るspectacle(スペクタクル)は視覚、見ることに関連した表現であり名詞では「光景、美観、ショー」といった意味で使われます。
基本的に何かのパフォーマンスについて語るときには良い意味の言葉ですが、意図せず注目を集めたり目立ってしまったり「見世物」といったネガティブな意味にもなります。
関連用語のspectatorは「観客」であり見ることをするお客さんです。一方でaudienceは「聴衆」であり聞くことを主にするお客さんを指す違いがあります。
古くは「メガネ」の意味
spectaclesは昔の言い方で「メガネ」を指すそうです。けっこう古くさい言葉なので今では意図がないとメガネとしては使わないそうです。
古くさい言葉といっても何百年前ではなく、例文のようなおじいちゃん世代の言葉です。
My grandfather lost his spectacles.
うちの祖父がメガネをなくした。
I dropped my spectacles and broke them.
めがねを落として、壊してしまった。
spectacleの使い方
spectacleそのものは「光景、美観、壮観、見せ物、ショー」などの意味があります。
The play was quite a spectacle.
この演劇はかなりスペクタクルだった。
訳が難しいですが、かなり見ごたえのある良いショーだった、芝居だった、光景だったと基本的には褒めています。
視覚に関連する表現なので、ネイティブスピーカーが劇や映画などのパフォーマンスを語る際に「spectacle」を使うと、物語や中身よりも「視覚」の部分での感想などが入る傾向があるそうです。
The play was quite a spectacle because of the special effects, but the story was weak.
その劇は特殊効果のおかげですばらしいショーだった。けど物語は弱かったね。
文脈によっては世間からの注目を集めてしまう「見世物」といったネガティブな意味にもなります。
以下は福島県の町で原発関連施設へのツアーがはじまったニュースからです。原発の教訓を伝える観光事業として復興に役立たせるといった期待感がある反面、世間から見世物のように扱われることを心配する声がありました。
They also hope to serve as a lesson about the dangers of nuclear power, but others worry about becoming a spectacle.
彼らはまた、原子力の危険性に対する教訓を提供できることも望んでいる。しかし、他の人々は見世物になることを心配している。
もう1つ俳優のジョニー・デップとアンバー・ハードの離婚問題のニュースからです。
The divorce was a public spectacle with Heard accusing Depp of mental and physical abuse.
その離婚が世間の注目の的になったのは、アンバー・ハードがジョニー・デップを精神的、肉体的な虐待で訴えたことだった。
このように当事者はショーではないのに、ショーであるかのように人が集まって意図せず注目を集めることにも使えます。
make a spectacle of oneself
この形でも使われることが多く、辞書には「恥をさらす」といった訳ものっていますが、意味合いとしては「ばかな振る舞いをする」さらに「それによって人々の注目を集める」という全体の意味になります。
「恥をさらす」でもいいと思いますが、その後に「人々から見られる、視線を集める」という部分があります。直訳すると「自分を見世物にする」といった意味です。
My daughter made a spectacle of herself because I wouldn’t buy her a toy.
私の娘がバカな振る舞いをした。なぜなら、私が彼女におもちゃを買わなかったからだろう。
具体的には例えば泣いたり叫んだりといった振る舞いをしたことを指します。文章には書かれていませんが、それによって道行く人々から視線を集めただろうね、という意味が含まれています。
In Times Square there are many crazy people making a spectacle of themselves.
タイムズスクウェアでたくさんのおかしな人々がばかな振る舞いをしている。
具体的に何かはわかりませんが、変な服を着たり奇妙なダンスを踊ったりで、ある意味で恥をさらしているといってもいいかもしれません。
「バカな振る舞いをする」という意味なので、何かしている行為にはネガティブな感想になっています。
それによって人々の視線を集めているという意味になります。
spectator / audienceの違い
どちらも観客を意味する言葉ですがaudienceは「audio(オーディオ)」のような言葉があるように、聴くようなことにつながっています。コンサートやスピーチの客に使います。「聴衆」です。
一方のspectatorは「spectacle(スペクタクル)」が古くは眼鏡を表したように、視覚によった単語です。したがってサッカーの試合のように聴くことより観戦するものに使います。「観客」です。
The audience gave the orchestra a standing ovation.
聴衆はオーケストラにスタンディングオベーションをした。
The spectators really enjoyed the game.
観客は本当にゲームを楽しんだ。
劇や映画など見ること、聴くことの両方にそれなりのウエイトがあるパフォーマンスもあるので置き換えられることもあります。
しかし、根本的な部分では「観客」と「聴衆」の差はあり、オーケストラにspectatorsを使うと明らかに変です。