much lessは大きく2つの意味・使い方に分けて考えることができますが、根本的なところでは同じ考え方です。1つは何かを比較するときに「ずっと少ない、かなり少ない」といった意味です。
もう1つが辞書などでは「まして~でない」と訳されることで、否定的な文章の後にさらに難易度の高いことを出して「Aもできない。ましてやBなんて無理に決まっている」ぐらいのニュアンスを伝える表現です。
これらは基本的には同じ考え方ができるので、順番に整理しています。使い方は例文を参考にしてください。
much lessの基本的な意味と使い方
much lessは大きく2つの意味で考えることができます。まずは文字通りの意味で解釈してみます。
muchはそもそも「(量や程度が)多い、大きい」ですが、副詞では「非常に、大変、かなり、ずっと」のような強調の意味があります。
それが比較級の「less(より少ない、より小さい)」の組み合わせなので「(何かと比べて)はるかに少ない、かなり少ない、ずっと小さい」といった意味になります。
The cost of living in the countryside is much less than the city.
田舎での生活費は、街よりもはるかに少ない。
He has much less furniture than me.
彼の家具は私よりはるかに少ない。
これは単なる「much + 比較級」と同じ構造です。
My car is much bigger than his.
私の車は彼のよりはるかに大きい。
That house is much more expensive than ours.
あの家は私たちのよりかなり高価だ。
反対はmuch more
反対はmuch moreです。
much(かなり、非常に、ずっと)とmore(もっと多くの、より多くの、より大きく)が組み合わさった言葉です。
The cost of living in the city is much more than the countryside.
街での生活費は田舎よりもはるかに高い。
I have much more furniture than him.
私の家具は彼よりもずっと多い。
Bill Gates has much more money than me.
ビル・ゲイツは私よりもはるかにお金を持っている。
I like this song much more than his last one.
私は、彼の新曲よりもこの歌のほうがはるかに好きだ。
まして~でない
もう1つの「much less」の意味は辞書には「まして~でない」で掲載がある使い方です。否定的な意味の文章につづいて、much lessの後には、より難易度の高いことがきます。
「まして~でない」は意訳されている感じがするので、もうちょっと直訳に近い日本語にすると構造がわかりやすいです。
訳としては「~よりはるかに下だ」「~よりはるか下に位置している」と直訳ぎみに考えてもいいと思います。
She can’t even say “hello” in Chinese, much less give a speech in it.
彼女は中国語で「ハロー」さえ言えない。ましてやそれでスピーチなどできない。
彼女は中国語で「ハロー」さえ言えない。スピーチをすることのはるか下だ。
頭の中に難易度のレベル・メーターを描いてみるといいかもしれません。「中国語でハローを言う」が10段階で難易度2ぐらい、「中国語でスピーチをする」が難易度8ぐらいだとします。
難易度8の「中国語でスピーチをする」を、はるかに下回っている難易度2の「中国語でハローを言う」さえもできないことになります。
Governments can barely keep track of the coronavirus, much less stop it.
政府はかろうじてコロナウイルスを追跡できているが、ましてや食い止めることなどできない。
政府はかろうじてコロナウイルスを追跡できているが、食い止めることのずっと下の位置だ。
コロナを止めることはむずかしいです。そのはるか下の段階の追跡することが精いっぱいだという話になります。
much lessそのものにはそこまで否定の意味がなく単に程度の大小である「はるかに小さい」としか表現していないことになります。それを「まして~でない」と否定の意味を持つ日本語で訳すよりは「~よりはるかに下だ」と訳したほうが、英語の実態に近い気がします。