和製英語の「マニア(mania)」の意味を考える

マニア
 

公開日: 最終更新日:2019.12.5

カタカナと英語でかなり使い方が違う単語に「マニア(mania)」や「マニアック(maniac)」があります。

今回もネイティブの意見と作ってもらった例文を交えながら確認していきたいと思います。

マニア(mania)

基本的にマニア(mania)とは状態を表す言葉(名詞)です。

This is train mania!
(ここは電車マニアだ!)

何かの状態を表しているのであって上の例文が指すのは、例えば鉄道博物館のような場所にいき、いたるところに貴重な展示や鉄道グッズが売られているのを見て「うぉぉ!ここは鉄道マニアだ!」といった感じに使います。

人を指すわけではない点に注意が必要です。

maniaは熱狂の意味なのでhave(持っている)といった形になりえますが、それでも文法的に正しくとも次の表現は誰も言わないだろうという意見です。

He has audiomania.
*おそらく誰もこの言い方はしない

昔、プロレスラーのハルク・ホーガン(Hulk Hogan)をメインにしたプロレス大会イベントの名称が「ハルカマニア(Hulkamania)」でした。

当時はハルク・ホーガンファンのことを「ハルカマニア(ハルクマニア)」と呼ぶのだと思っていましたが、実際の意味は「ハルク・ホーガンをメインにした大会」「ホーガンづくし」みたいな意味であって、ファンを指しているわけではありません。

マニアック(maniac)

一方のマニアックはmaniac(人を指す)言葉なので、まだこちらのほうがカタカナの使い方に近いかもしれません。

基本的に英語でのmaniacは「狂人、狂った人、キチガイ」の意味で使われる、あまり良いイメージの言葉ではありません。

グーグルイメージで「maniac」を検索してもらえるとわかりますが、ホラー映画の殺人鬼・サイコパスの画像ばかり出てきます。グロ画像っぽいので貼りませんが羊たちの沈黙のハンニバル・レクターみたいな画像がたくさん出てきます。同名のサイコホラー映画も存在しています。

I am a train maniac.(私は鉄道マニアックです)

He is an audio maniac.(彼はオーディオマニアックです)

文法上はこのように「私はトレイン・マニアック」のように表現するのが用法としては正しいです。その上で、上のような言い方はあまりしないそうです。

結論からいえば、日本語では「あいつはオーディオマニアなんだ」「私は東武伊勢崎線マニア」のように表現することがありますが、英語ではしないと思っておいて間違いないと思います。

かなり意味が違うので、何かが大好きでのめり込んでいることを表現するのに「マニア(mania)」や「マニアック(maniac)」はあまり使いません。

ではマニアはどう表現するか?

何かにハマっていること、そして詳しくなっていることはいくつかの候補が考えられます。

He is an audio geek.
I’m a train geek.

He is an audio nerd.
I’m a train nerd.

He is into audio stuff.
I’m really into trains.

geekやnerdはカタカナの「マニア」に近い言葉として一般的に知られています。程度にもよりますが普通に「fan(ファン)」でもいいと思います。

自分で名乗ることは問題ないと思いますが、人に言うときには文脈によってはネガティブに受け止められかねないのは「オタク」が持つ語感と似ているのではないでしょうか。

「おまえ、オタクだな」と相手に言う場合に、良い意味にも悪い意味にも解釈可能で人間関係に左右される表現だとは思います。

カタカナの「マニア」にも言えることですが、そこにはさまざまな意味が込められていて、あるジャンルに対して博学、知識量が圧倒している部分を誇っているポジティブな面もあれば、趣味が行き過ぎると生活が破綻したり、没頭して社会的なコミュニケーション能力が低い、少し病的に見えたりするネガティブな面もあります。

geekやnerdをおすすめしないのは、これらの言葉にも繊細な言葉の意味やニュアンスが、おそらく国ごとや文化圏、コミュニティごとにあって、その差を感じるのは難しいからです。

そういった繊細な言葉をうまく使う英語力がないならば、普通に当たり障りがなくマイナスに受け止められることがないファンなどで十分ではないかといった話になります。

「カタカナのマニアは、英語ではgeekやnerdだよ」とそう簡単にいい切れるほど言葉の持つ雰囲気がイコールではない、という話になります。

以下、他にも無難に使える言葉がいくつかあります。

enthusiast

他にもいくつか単語の候補がありenthusiastで「熱狂者、ファン、熱中している人」などを表すことができます。これなども比較的「マニア」に近い内容を表しています。

I’m a model enthusiast.
(私は模型に熱心な人だ)

少し伝わり方に微妙な違いもあり、以下のような例文を比べてみてください。

①I’m a soccer enthusiast.
②I’m a soccer fan.

①はおそらくサッカーを自分でプレーしているタイプの熱狂的な感じの人を表しています。

それに対して②はおそらく試合を見たり応援したりするのが好きなタイプなので、ちょっと意味するものの伝わり方が異なります。

-phile、~philia

~が好きな人を指す言葉で、さまざまな言葉につくことで日本語の「◯◯マニア」に近い言葉になります。

~phileで「~を愛する人、愛好家(人を指す)」といった言葉になり、基本的にどんな言葉にもつけることができます。

~philiaで「~を愛する状態(状態)」になるので、少し使い方が違います。

I’m a cakeophile.
(私はケーキマニアだ)

I have cakeophilia
(私はケーキ愛がある)

どんな言葉にでも付けれてしまうので個別には辞書に掲載されていないケースも多いです。

A lot of audiophiles go to that high-end stereo store.
(多くのオーディオ好きがあのハイエンドなステレオストアに行く)

He’s a real cinephile. He has over 5,000 DVDs.
(彼は本物の映画好きだ。5000枚以上のDVDを持っている)

相手に向かって言っても特に失礼ではない言葉だそうです。代表的なphileには以下のような言葉があります。

Audiophile
= music lover

Cinephile
= movie lover

Technophile
= technology lover

Vinophile
= wine lover

それから犯罪に近いものですが幼児性愛を示すPedophileも言葉としては有名です。日本好きな人を「Japanophile」ともいったりします。

buff

buffもファンやマニアを意味する言葉ですが、のめりこみすぎて社会生活が破綻している、コミュニケーションがとれないといったネガティブなイメージがあまりなく、程度としてはそこそこの熱狂度なので使いやすい言葉だといます。

John is a real trivia buff. He knows the middle name of every president.
ジョンは本当に雑学王だ。彼はすべての大統領のミドルネームを知っている。

She’s a history buff.
彼女は歴史マニアだ。

He’s a film buff.
彼は映画マニアだ。

鉄道ファンやオタク

ニュースでは「鉄道」のことを取り上げましたが、その際にはrail fansを使っています。

一方で海外ではtrainspotterという言葉も一般的です。このようにジャンルによっては、専門的に一言で表せる単語が存在しているかもしれません。

他にも宇宙を舞台にしたテレビ番組「スタートレック」のファンには「Trekkie(トレッキー)」「Trekker(トレッカー)」といった名称があったりします。愛好家本人がそう呼ばれるのをよしとするかの問題はあるようですが。

otakuは広く海外で知られる言葉になりましたが、otakuが使われる場合には「日本の○○に興味がある」といった日本文化を対象にしたニュアンスや、「日本人の鉄道オタク」のように日本人を指すケースなど、どうしても日本の要素が入った意味が出てしまいます。

新幹線や日本の鉄道限定、特に日本のアニメを中心に大好きといった場合は海外でもotakuと呼ぶケースが増えています。



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