英語の動詞に-erをつけると「〜する人」の意味になり、-eeをつけると「〜される人」の意味になります。しかし、1つの動詞から両方とも対になって一般的に使われている言葉となるとけっこう数が限られてきます。
また-eeがついていても「〜される人」の意味合いが薄い単語もけっこう存在しています。
カタカナでもerをつけて「〜する人」の造語を作るパターンはあります。このページでは-ee(〜される人)と-er(〜する人)の使い方を取り上げています。
eeが「される側の人」とer/orが「する側の人」
動詞が名詞になる場合には単語の後ろにeeがついて「動作をされる側の人」、er / or が「動作をする側の人」を指すことが多いです。言葉の後ろにつく接尾辞と呼ばれるものです。
ただし、ある動詞が「er」と「ee」で共に一般的に使われている言葉、どちらもよく見かける言葉となるとわりと限られてきます。どちらか片方だけならけっこうあります。
日常の会話の範囲で両方がそれなりに聞かれる言葉、対になっている言葉となると下にあげる言葉ぐらいでしょうか。
trainee
訓練される人
trainer
訓練する人、トレーナー
interviewee
インタビューを受ける人
interviewer
インタビューをする人
employee
従業員
employer
雇用主
abductee
誘拐された人
abductor
誘拐犯
他にもlicensee(ライセンスを受ける人)とlicenser(ライセンスを与える人)や、franchisee(フランチャイズの加盟者)とfranchiser(フランチャイズ権を与える人)など探せばあると思いますが専門的なビジネス用語だったりします。
辞書にかろうじて言葉が掲載されている、誰も使わないけど単語としては存在しているレベルならもっとあると思います。
Employers must treat employees with respect.
雇用主は従業員を敬意をもって扱わなければいけない。
There are new rules about what questions job interviewers can ask interviewees.
就職の面接官が面接を受ける人にできる質問に関しての新しいルールがある。
Trainees must spend at least 100 hours working with a licensed trainer.
トレーニングを受ける人は少なくとも100時間、ライセンスを持ったトレーナーと働かなければならない。
eeだけど「される側の人」ではない場合
eeは「される側の人」の意味ですが、あまり「される側の人」という意味がなくなっている単語も多く存在しています。
おそらく元々はそういう意味だったんだと思いますが、時代と共にその意味がなくなって例外になってしまったような単語をとりあげてみます。
retiree(退職者)
例えばretireeは「される側の人」という感覚があまりない言葉で、ちょっと特殊なケースです。意味としてはretireeは「(定年)退職者」なので以下のように使います。
The company had ten retirees last month.
その会社は先月に10人の退職者があった。
The pension system will have trouble dealing with the increase in retirees.
年金システムは退職者の増加に対処するのに苦労するだろう。
このretireeは少しややこしく、例えばemploy(雇う)ならemployee(される側の人、雇われる人・従業員)、employer(する側の人、雇う人・雇用主)といった分かりやすい構図にはあてはまりません。
まずもととなる動詞のretireから見ていきます。
retireは誰かが何かから退くことを表し「退職する、引退する」です。退職する人を主語にする形が一般的です。
He will retire from the company next year.
彼は来年、会社を退職するだろう。
一方で対象となる何かを使わなくするという意味で「引退させる、退職させる」という使い方もあります。
The Yankees retired his number.
ヤンキースは彼のナンバーを永久欠番にした。
The airline will retire this series of aircraft next year.
その航空会社は来年、この航空機のシリーズを引退させるだろう。
しかしこの「引退させる、退職させる」の使い方を退職する人に対して用いるのはおそらく失礼な雰囲気になるので一般的ではありません。
× The company retired him last year.
(変な表現です。普通は人を主語にします)
この例文は一般的ではない表現ではありますが、考え方としてはretireの対象となる人(される側の人)、つまりここではhimにあたる人がretireeであると言えます。
一方で、退職させる側の会社(する側の人)を表すために「retirer」という言葉を使えるかというと、これはまずめったに見られない表現です。おそらくほとんどの人が英単語ではないとまで考えるような言葉になるのでご注意ください。
そのほかの例外
ほかにも「される側の人」という感覚があまりない言葉をいくつかあげておきます。
もともとは上にあげたretireのように「〜させる」という動詞からの派生だとは思いますが、その意味合いがなくなっています。
Police are searching for the escapee.
警察は逃亡者を捜索している。
Returnees to the disaster area have begun reviving the economy.
被災地への帰還者が経済を復活させ始めている。
Absentees will be given a memo of the main points of the meeting.
欠席者にはミーティングの主要なポイントのメモが配布されるだろう。
The panel will announce their nominees this week.
審査委員団は候補に指名された人を今週に発表するだろう。
nomineeぐらいだと「指名された人」として納得できますが、escapee(逃亡者)などまさに自ら逃亡している側の人であって「逃亡させられている人」と考えるのはちょっと現代の感覚では変です。
この原因はフランス語からの接尾辞だからだそうで、さらにはラテン語に起源があります。少し専門的ですが以下のブログが解説してくれています。
接尾辞 -ee の起源と発展(hellog~英語史ブログ)
er / eeで造語を作る
erで「〜する人」の造語を作るのはカタカナでもわりと聞かれます。
英語でもwriteの「writer(ライター)」のような大昔からある単語や、「blogger(ブロガー)」「YouTuber(ユーチューバー)」のようにわりと新しい言葉で一般的に定着している言葉もあります。
またツイッターユーザーを意味する「Twitterer(ツイッタラー)」のように存在はしているけれど、どこまで一般的かよくわからない言葉もあります。
Evernote(エバーノート)のユーザーをEvernoter(エバーノーター)と呼ぶのは自由ですがフォーマルな英語ではない感じがします。
英語でもわりとerがつけて造語が作られますが、もう少しカタカナより気を使っていて、特に既存の言葉がかぶる場合は少し敬遠される感じもあります。
例えばグーグルの広告プログラム「アドセンス(AdSense)」を使っている人を「AdSenser(アドセンサー)」と呼ぶと、その人が「sensor(感知器)」のようにも感じられます。
他にもDropbox(ドロップボックス)のユーザーをDropboxer(ドロップボクサー)と呼ぶと「boxer(ボクサー)」とかぶってくるので、カタカナよりも既存の言葉・響きとの兼ね合いが考慮されている感じはします。
また造語ではありませんが「terminator(ターミネーター)」や「pretender(プリテンダー)」のように言葉の意味はよくわかるけれど現実はそんなに使わない言葉もあります。詩的な言葉なので歌詞や映画のタイトルに使われやすいです。
eeで造語を作る
カタカナではあまり見られませんが英語ではeeで造語を作るパターンもあります。けっこうラフな英語に受け止められるので注意は必要です。
She punched him.
彼女は彼を殴った。
He was the punchee.
彼は殴られた人だった。
punchee(パンチー)という単語は辞書にはありませんがネイティブスピーカーならば、何を意味する造語かぱっと見てわかるので、みんな勝手に作ったりするケースもあります。
ひょっとしたらインターネットではオリジナルの「ee」の単語を見かけることになるかもしれません。
上の例文では彼女はpuncherだと表現することはできます。