カタカナの「ドラマ」と、英語の「drama」では意味することが少しずれている感じもあるので、英語における「drama(ドラマ)」や「dramatic(ドラマティック)」が何を意味するのか、ネイティブの意見を聞きながら整理してみました。テレビ番組のジャンルである「sitcom(シットコム)」や「soap opera(ソープオペラ)」についても合わせてまとめています。
この記事の目次!
ジャンル名としての英語での「drama(ドラマ)」の意味
映画、テレビ番組、劇において、英語の「drama(ドラマ)」は一般的にジャンル名だと考えられるので、「ホラー」「コメディ」「ロマンス」「ドラマ」のようなジャンルの名称と並列の関係です。
ジャンル名としての「drama(ドラマ)」は真剣でシリアスな内容の物語、感情が多くあらわれたようなお話を指しています。この時点でカタカナの「ドラマ」とは少し指している内容が違います。
My favorite genres are comedy, drama, and horror.
私のお気に入りのジャンルはコメディ、ドラマ、ホラーだ。
I like dramas.
私はドラマが好きだ。
上の例文でも「drama(ドラマ)」だけだとジャンル名にすぎないので「テレビ番組」とは限りません。劇や映画の可能性もあります。
The Godfather films are crime-dramas and family-dramas.
『ゴッドファーザー』の映画は、犯罪劇であり家族劇だ。
She stars in a courtroom drama on TV.
彼女はテレビの法廷劇で主演している。
She stars in a TV drama.
彼女はテレビドラマで主演している。
「演劇」としてのドラマ
もともとは古くから演劇のようなものを指しており、演技・演劇そのものを指して使われるケースもあります。
She joined the drama club at school.
彼女は学校で演劇クラブに入った。
He teaches drama in high school.
彼は高校で演劇を教えている。
戯曲、脚本といったもう少し広い意味で使われることもありますが、けっこう限定的な使い方です。
She studied ancient Greek dramas.
彼女は古典ギリシャ演劇を勉強した。
比喩としてのdrama
そこから実際の出来事などに対して「drama」と表現するケースが見られます。この場合は「劇的な事件」といった意味ですが、人々が感情的になっている状態・場面を指して使われています。
There was a lot of drama in the meeting today.
今朝のミーティングで多くのドラマがあった。
上の例文の場合は、終了1分前に出した資料で結論が覆った、みたいな話よりも、おそらく人々が、感情があふれて叫んだりするような演劇的な場面を連想させます。
A hostage drama unfolded at the embassy today.
今日、大使館で人質騒動が起きた。
これも人々が感情を出すような場面があったという話です。もちろん、内容的に緊迫していても不思議ではありません。
しばしば否定的なニュアンスで、シンプルなことに対しての過剰反応、芝居がかった反応といった使い方もされます。
I broke up with my girlfriend because I couldn’t handle all the drama.
私は彼女と別れた。なぜならすべての「ドラマ」に対処できなかったからだ。
上の例文は少し曖昧で何を指すのか具体的ではありませんが、おそらく彼女はドラマのような感情にあふれた過剰な反応をしてくるといった意味合いだと考えることができます。
dramatic(ドラマティック)の意味と使い方
スティーブと話をしていて感じたのは日本だと「ドラマ / 劇的」といえば物語、ストーリーの起伏を意識しているケースが多いように思いますが、英語で「drama」といった場合は、興奮したり感動したりと感情の現れ方にもフォーカスしたような言葉になっている点です。
英語の辞書で「dramatic」の定義を調べてみるとケンブリッジの辞書には以下の掲載がありました。
very sudden or noticeable, or full of action and excitement:
(唐突で目立つ、あるいは、アクションや興奮にあふれている)
つまり「dramatic(ドラマティック)」といった場合には「ドラマのような起伏のあるストーリー展開のような」という意味にもなるし「感情があふれたドラマの(大げさな)演技のような」みたいな取り方もできることになります。
これらはオーバーラップする部分もあるので区切りはつけられませんが、以下の例文のように使うことができます。
The meeting today was very dramatic.
今日のミーティングはとても演劇的だった。
上の例文が意味するのは、ネイティブスピーカーの感じ方では人々が大げさな感じで感情をむき出しにしていた(まるで演劇のようだ)といった様子をイメージするそうです。あるいは、とても起伏があるワイルドなミーティングも考えられます。
The student made a dramatic improvement in his grades.
その生徒は成績に劇的な改善があった。
上の例文だと「突然で目立つような改善があった」といった意味です。
The landscape is dramatic.
景色はドラマティックだ。
例えば上の例文のように風景などに対してドラマティックを使うと突然の大雨や雷のような「唐突に変化していくダイナミックな光景」だと考えられます。あるいは景色そのものは感情はありませんが、人々の感情をドラマのように揺さぶる景色だと捉えることも可能です。この意味ではけっこう漠然とした言葉です。
A dramatic hostage situation unfolded at the embassy today.
劇的な人質の状況が大使館で今日、起こった。
Messi’s dramatic game-winning goal will go down in history.
メッシの劇的な決勝ゴールは歴史に残るだろう。
上の2つの例文は「突然で目立つ」といった意味合いと「感情があふれている」がまじりあっている感じです。ただし、どちらかといえば「観客を含めて感情を揺さぶるようなゴール」みたいな意味で受け止めるという意見でした。
それからもちろん、本来の意味でのジャンルとしてのドラマ(シリアスな物語)の意味で使われることもあります。
He usually only acts in dramatic roles (= serious roles).
彼はたいてい真剣な役柄だけ演じる。
Don’t be dramatic.(ドラマティックになるな)
「Don’t be dramatic.(ドラマティックになるな)」は、言い換えると「物事をドラマのように大げさに表現するな」という意味になります。
ドラマでは物事をわかりやすくするために、日常の場面ではありえない誇張(exaggerate)した表現がされますが、そういうことをするなといった意味合いです。
「Don’t be emotional.(感情的になるな)」とも少し違い、こちらは「感情に振り回されるな、感情をコントロールしろ」といった意味です。
どちらも見た目には「派手に泣いている」「大きな声でわめている」みたいな状況に見えるかもしれませんが「dramatic」と「emotional」ではその意味することが少し違います。
TV drama(テレビドラマ)とは?
英語でも「TV drama(テレビドラマ)」は言葉としては存在しますが、テレビでやっている真剣、シリアスな内容の物語を指しています。日本だと恋愛ものや、ちょっとしたラブコメのようなものまで「ドラマ」に入ってくるので指している内容のニュアンスが違います。
ではアメリカのテレビ作品でどんなものが「drama」「TV drama series(テレビドラマシリーズ)」になるのかといえば、『100 best TV dramas of all time』という歴代の最高の「ドラマ100」を紹介する海外サイトの記事があったので、そこから日本でも話題になった作品名をピックアップしてみます。
・Person of Interest (2011–2016)
・Supernatural (2005–2020)
・House of Cards (1990)
・Suits (2011–2019)
・The X-Files (1993–2018)
・Cobra Kai (2018–present)
・Twin Peaks (1990–1991)
・The Twilight Zone (1959–1964)
・Sherlock (2010–2017)
・Game of Thrones (2011–2019)
・Chernobyl (2019)
・Breaking Bad (2008–2013)
だいたいこのあたりの作品がドラマです。人によってはSF(Sci-Fi)やアクションに分類したりで差がでると思います。
このサイトでは『エヴァンゲリオン』『NARUTO』『進撃の巨人』あたりの作品もdramaとして紹介されていたので、その分類の境界線は曖昧です。『24』あたりは掲載がありませんでしたがアクションよりの「drama」です。
たとえば『フレンズ(Friends)』『フルハウス(Full House)』『セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)』あたりは「ドラマ」には分類されにくいです。
しかしコメディー寄りに分類される『フルハウス(Full House)』などでもそうですが、どんな番組でもストーリーのポイントではドラマティックな要素・場面があったりするので、その境界線は人の感じ方による部分も大きいです。絶対にドラマでないと言い切れるのはガチガチのコメディである『Mr. Bean』あたりじゃないでしょうか。
日本でいえばNHKの大河ドラマは内容を見ても「drama」なのでhistorical dramasといっても間違いではありません。
Comedy-drama(コメディドラマ)
ジャンルとしてコメディとドラマは相反する要素ですが、この2つを掛け合わせた「comedy-drama(コメディドラマ)」あるいは「dramedy」はジャンルとして存在しています。
ちょいちょい笑える要素はあるけれども、ストーリーとしては本格派で起伏があって物語が展開していくようなものです。これもテレビ番組とは限りません。
では実際にどんな作品を「Comedy-drama(コメディドラマ)」と呼ぶのかについては『List of comedy-drama television series(Wikipedia)』があったのでご覧ください。
TVシリーズでいえば『Glee』『Sex and the City』『Cobra Kai』『Desperate Housewives』などの掲載があります。日本のアニメ・漫画の『Angel Beats!』『Bakuman』『Beck』や『Dragon Ball』までリストに入ってて、少しどうかなと思う要素はありますが、笑いを織り交ぜながらもかなり深刻な場面もあって進んでいく物語です。
procedural dramaの意味
「procedural drama」はテレビ番組のジャンルの1つで、日本でいう「刑事もの」に近いと考えることができます。
細かなルールはありませんが主な要素としては「1話完結の物語」「警察・弁護士などの国家権力が主人公」であり、ここにSFやアクション要素が入ってきたりしますが、銃撃戦やカーチェイス、ハイテク技術による事件解決がメインでない、人間ドラマ的な部分が濃くなる傾向が見られます。
日本でいえば『古畑任三郎』『相棒』、海外でいえば『ハワイ5-0』『刑事コロンボ』あたりが該当するジャンルです。
I like procedural dramas like Columbo and Law & Order.
私は警察ドラマが好きだ。例えば『刑事コロンボ』や『ロー&オーダー』だ。
「procedural drama」は「procedural」だけでも同じ意味です。
場合によっては弁護士や検察官、海外ではFBIなど、「警察」ではない組織に属する人物が主人公だったりします。「police procedural」と書くと明確に「刑事もの、警察もの」だとわかります。
sitcom(シットコム)の意味
「sitcom(シットコム)」あるいは「situation comedy(シチュエーション・コメディ)」もジャンルの1つです。
主な特徴としては「登場人物がほぼ固定」「1話完結の物語」「舞台が固定」といった内容なので、広い意味では日本の漫画アニメでも『ちびまるこちゃん』『サザエさん』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』あたりもシットコムの枠組みに入る要素があります。
「sitcom(シットコム)」の代表として名前があがる『フルハウス(Full House)』『Friends(フレンズ)』『The Big Bang Theory(ビッグバンセオリー)』あたりは、場合によっては観客を入れた状態(または舞台のようなレイアウト)で、笑い声をかぶせ、複数台のカメラで撮影したりする要素がありますが、こういう伝統的なシットコムは少なくなっています。
最近では『New Girl』や『Brooklyn Nine-Nine』のように、ある警察署で毎回同じようなメンバーがドタバタ劇を繰り返すコメディといった感じにシットコムの主流のフォーマットも変化を見せています。
soap opera(ソープオペラ)
「ソープオペラ」は日本でいう「昼のメロドラマ」にあたる言葉で、その起源は1930年代のラジオドラマにまでさかのぼることができます。
主婦層が聞いている時間帯の番組だったこともあり、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のような会社がスポンサーになったために「ソープオペラ」と呼ばれました。
「オペラ」のほうですが、オペラは物語的にはっきりと貧富や善悪が誇張された人物や、家族関係を描いた起伏のあるわかりやすい物語が多い、暴力的な描写や派手なアクションはいらない、といった特徴がありました。共通する要素から「オペラ」という言葉が用いられるようになりましたが、おそらく1930年当時の「オペラ」に対する認識や感覚は今とはかなり違ったものだと思います。
この2つの要素が組み合わさって「soap opera(ソープオペラ)」が生まれ、ラジオ番組からテレビ番組に流れていきます。ただし、蔑称とまではいきませんが、少し小ばかにした感じがしない言葉でもないので「daytime drama(昼のドラマ)」といった言い換えの言葉もあります。
Soap operas were very popular in the 80s.
Daytime dramas were very popular in the 80s.
昼ドラは1980年代に人気だった。
派生として上記の「オペラ」のように、誇張された物語を指して「〇〇オペラ」といった表現が用いられるケースがあります。
「space opera(スペースオペラ)」は作品のジャンルとしては宇宙を旅するような「SF(sci-fi)」との組み合わせで、宇宙における冒険活劇みたいな位置づけです。わりとベタな展開が多いといった意味では、少し否定的に語られる側面もあります。