私たちがピーマンと呼ぶ野菜は英語では単に「pepper」や、形状から「bell pepper」などと呼ばれます。ピーマンの仲間であるパプリカについても同じで「red pepper」や「yellow pepper」のように色で呼ばれます。
しかし、pepperには「ペッパー・胡椒」の意味ももちろんあります。地域によって呼び方に差がみられる言葉なので、いろんな言い方があるのだと思っておいたほうが無難です。
このページでは「ピーマン」「唐辛子」「パプリカ」「ペッパー」「胡椒」などの英語での表現やカタカナとの違いをまとめています。
この記事の目次!
pepper(ペッパー)と胡椒(コショウ)について
英語で文脈なしにpepper(ペッパー)といった場合には、大きく2つぐらいの意味で解釈される可能性があります。
1つは料理などに振りかける、くしゃみが出る「胡椒・コショウ」です。これはカタカナでもブラックペッパー、ペッパーのように言われています。
もう1つが「ピーマンやパプリカ(あるいは唐辛子)」です。これは次に紹介する「bell pepper」を略して「pepper(ペッパー)」です。
普通は文脈で判断すればどちらを指しているのか明らかなケースが多いです。
I sneezed because there was too much pepper on my sandwich.
サンドイッチにコショウが入りすぎていたので、私はくしゃみをした。
I love to put pepper in my ramen.
私は、ラーメンにコショウを入れるのが大好きだ。
I bought some peppers at the supermarket.
スーパーでピーマン(パプリカ)をいくつか買った。
Some of these peppers are rotten.
何個かのピーマン(パプリカ)は腐っている。
粉末の胡椒(コショウ)の意味で使っているならば不可算名詞になり「s」がつきません。逆に野菜としてのピーマン、パプリカならば複数形や「a」がついています。
I put pepper in the pasta.
パスタにコショウをかけた。
I put peppers in the pasta.
パスタに「パプリカ・ピーマン」を乗せた。
胡椒はコショウ科、ピーマン・パプリカ・唐辛子はナス科の仲間ですが、同じpepper(ペッパー)が使われているのが不思議です。
調べてみると確証はありませんが、おそらく唐辛子をコショウの一種だと勘違いした歴史からだと思われます。このあたり出典が明確に確認がとれない話だったので、由来については話半分で聞いてください。
あるときに誰かが、ぴりっとする唐辛子をコショウの一種だと思って「chili pepper(チリペッパー)」と名づけてしまう。ならば唐辛子の仲間であるピーマンやパプリカもpepper(ペッパー)の一種になるだろうと、つながっていった話だと思われます。
ピーマンとパプリカは英語では「bell pepper」
ピーマンはフランス語(あるいはポルトガル語)由来の言葉になるので、英語でpimanといっても通じない言葉です。
私たちがピーマンやパプリカと呼ぶものは、一般的には「pepper」ですが呼び方に地域差が見られます。しかし、一般的には以下のルール・傾向があります。
まず単に「pepper」と呼びます。カナダ、アメリカなどでは特に必要なければ「pepper」だけで済ませてしまうことも多いそうです。
より話している形をはっきりさせたり、コショウとの誤解を避けるために「bell pepper」と呼ぶこともあります。ベルの形をしたペッパーです。
あるいはさらに色を付けくわえて「red pepper(赤色のパプリカ)」「green pepper(緑色のパプリカ、いわゆるピーマン)」「yellow pepper(黄色のパプリカ)」と色で呼びます。
このあたりはけっこう地域によって差が見られます。
・単にpepperと呼ぶ
・色をつけて呼ぶ(green pepper)
・形状を加える(bell pepper)
・全部いれる(green bell pepper)
・別の名前で呼ぶ(sweet pepper, capsicum)
I don’t like green peppers because they are too bitter.
ピーマンは苦すぎるので好きじゃない。
The pasta dish has diced red and yellow peppers.
パスタ料理には、サイコロ型の赤色と黄色のパプリカが入っている。
I bought two red bell peppers.
赤いパプリカを2個買った。
地域によっては固有の名前で呼ぶケースも見られます。オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、インドでは「capsicum」と呼ぶケースもあるそうですが、北米ではこれは植物名であり学術っぽい感じがする言葉で、あまり食材を指しては使われません。
例えば「red pepper」とだけいえば「赤いパプリカ」と次に紹介する「細長い赤い唐辛子」のどちらでも解釈できるので、少し混乱する要素があります。
そこでred bell pepperと書けば明確に赤いずんぐりしたパプリカだとわかります。
唐辛子はchili pepper(チリペッパー)
chili pepperは、細長く、通常辛い唐辛子のことを指します。辞書には「唐辛子」として紹介されています。
これも少し表現にバリエーションがあり「chili pepper」「hot pepper」「red chili pepper」などhot, red, chiliあたりが組み合わされます。ただし全部を入れると「Red Hot Chili Peppers(レッチリ)」というバンド名と間違えられやすくなります。
もちろん獅子唐のような赤くない唐辛子も存在しているので、その場合はredをつけたりはしません。ここでのhotは「辛い」の意味です。
He puts too many chili peppers in his food.
彼は食べ物に唐辛子を入れすぎる。
This is one of the spiciest chili peppers in the world.
これは世界で一番辛い唐辛子の1つだ。
また一般的にはchili pepperそのものは可算名詞で、赤い細長い唐辛子をまるまる1個指します。粉末の唐辛子ならばchili powder(チリパウダー)などを使います。
以下の表現は連想させるものが少し違います。
I put chili powder in my udon.
(粉末の唐辛子をかける)
I put chili peppers in my udon.
(唐辛子丸ごとの形のままで乗せる)
I put chili pepper in my udon.
(形状は不明)
I put pieces of chili pepper in my udon.
(輪切りなどでカットされたもの)
I put chili in my udon.
(チリソース)
英語のpaprika(パプリカ)について
私たちが「パプリカ」と呼ぶもの、赤や黄色のピーマンの仲間はすでに紹介したように単に「pepper」と呼ぶか「bell pepper」「red pepper」「green pepper」のように呼びます。
北米の英語で「paprika」といえば一般的には、パプリカをすりつぶして粉になった粉末の調味料を指します。
以下の例文のように使います。不可算名詞の扱いです。
I put some paprika on my pasta.
パスタにパプリカを振りかけた。
You can make a great sauce with this paprika.
このパプリカを使えば、すごいソースが作れるよ。
米津玄師の『Paprika』(パプリカ)』の英語詞について
米津玄師がプロデュースした『パプリカ』の英語版である『Paprika』がリリースされた際に、アメリカ人のスコットとカナダ人のスティーブから歌詞について興味深い指摘がありました。
日本語のサビの部分「パプリカ 花が咲いたら」は英語では「Paprika, when our flowers start to bloom」となっています。
「パプリカ 花が咲いたら」の部分は日本語だと小さく白い「パプリカの花」がイメージされますが、英語だと「粉末の調味料」がイメージされるので、その次の「our flowers」とのつながりがほぼなくなっています。
タイトルだったので変更するわけにもいかなかったのだと思いますが、カタカナと英語での差が出た表現です。
もう1つ日本語版と英語版で差があるのが「Hallelujah(ハレルヤ)」が取り除かれたことです。これはキリスト教で歓喜・感謝をあらわす言葉とされています。英語の詞で世界に発表するにあたって当然キリスト教ではない人がいるからだと思います。
pepperの動詞での使い方
動詞でpepperを使うときには「多くのものを加える、飛び交う、~を浴びせる」といった意味があります。
His comedy routine was peppered with rude words.
彼のコメディーのネタは、失礼な言葉をやたらと使うことだった。
Bullets peppered the tank, but it was undamaged.
銃弾が戦車に降りかかったが、戦車は無傷だった。
形容詞のpepperedは「コショウがまぶされた」という意味となります。
He ate a peppered steak for lunch.
彼はコショウの効いたステーキを昼食に食べた。
ドクターペッパー(Dr. Pepper)
ドクターペッパーは1885年から発売されている定番の炭酸飲料です。日本でもコカ・コーラがドクターペッパーを販売しており、ちょっと変わった商品を販売するスーパーなどに行けばわりと見かけます。
けっこう好みがわかれる味ですが、「Dr. Pepper」と呼ばれる理由ははっきりしません。公式のドクターペッパー博物館のサイトでも由来ははっきりしないと書かれています。
ペッパー氏という人名に由来するという説や、pepが「活気、元気」といった意味があること、かつては炭酸飲料が薬とみなされていたこと、などからドクターペッパー(Dr. Pepper)の名前になったとされています。
商品の製法は謎なので、ペッパー(コショウ)が使われているのかどうかは不明です。たぶんコショウは関係ないと思います。