カタカナでのドーピング(doping)はスポーツの成績向上のために自分自身に興奮系の薬物を投与すること、といった説明が可能です。英語でもこの使い方はできますが現代的な意味です。
しかし、もともとの意味としては「馬や犬のレースでの対戦相手」に「眠くなったり倦怠感がするような薬物を」「与えること」といった分類が可能です。
dope周辺の言葉には眠気や倦怠感に関係する言葉が多いのも本来の意味から来ているのではないかといった話です。あらためてdopeという言葉を整理してみました。
dope(名詞)での意味と使い方
まず名詞で「dope」といった場合は「narcotic drugs(麻薬・麻酔薬)」と呼ばれるもの、全般的に眠くなるような心地よい倦怠感のする感じの薬物を指して使われます。
通常はマリファナをイメージさせることが多かったんですが、dopeでマリファナを表すのが古臭い感じの表現になりつつあります。
dope【dóup】
この名詞で使った場合には楽しみでやるような薬物であって、スポーツの成績向上とは関係がありません。
He did a lot of dope when he was young.
彼は若いころに薬物をたくさんやった。
She was doing dope at the party.
彼女はドープ(マリファナ等)をパーティーでやっていた。
He did a lot of dope during his MLB career.
彼はMLBキャリアの中で多くのドープ(マリファナ等)をやった。
上の場合にはメジャーリーグに所属中にマリファナ等の薬物をやっていたというだけで、成績やパフォーマンスの向上とは関係ありません。
dopeの動詞での使い方
動詞で使った場合は基本的には「(成績をあげるために)~に麻薬・薬物を与える」「~に薬物を与える」の意味になりますが「自分にドーピングする」の使い方も見られます。
あくまでdopeの本来の意味は「薬物を与える」「薬物を与えること」だと考えるのが妥当です。これは競走馬のドーピング問題など顕著ですが、馬がドーピングしたいといったわけではなく、与える側の責任だといえます。
The coach doped him.
コーチは彼に麻薬を与えた。
He was accused of doping during his MLB career.
彼はMLBのキャリアの中で、ドーピングで非難された。
ただし、これももっと具体的に言えるケースもあります。
The coach gave him steroids before every game.
コーチは彼に試合前にステロイドを渡した。
dopeは眠気や倦怠感に関連した言葉
英語で動詞としてdopeを使い「(自分の身体に)スポーツの成績向上のために薬物を使う」とするのは現代的で新しい意味での使い方です。すでに説明したように本来は「薬物を誰かに与える」行為だと言えます。
また薬物を与える相手が誰か? という問題があります。
現代的なドーピングは自分自身や味方の所属選手に興奮系の薬物を投与しますが、もともとは競争相手に睡眠を誘発する薬物を盛るような行為を指していたのではないかという推測があります。
犬や馬のレースで対戦相手の動物に薬を飲ませて「眠くさせる、やる気をなくさせる」といった意味が本来の意味でのdopeだったのではないかという話です。
こういった「相手を眠らせる」といった意味での使い方もいくつか存在しています。
The rapist doped his victims by putting powder in their drinks.
強姦犯は被害者に、飲み物に粉を入れることで薬物を与えた。
ほかにも「doped up」「dopey」など眠気・倦怠感の意味を持った言葉がdope周辺に多いのも、もともとが「対戦相手に薬を盛り込んで眠くさせる」といった意味があるからという推測です。
doped up / dopey
doped upは形容詞の扱いで「薬のせいでボーっとする」「薬が原因で眠くて何も考えられない」といった意味です。
ただし、このあたりスラングの範疇になるので運用や意味は細かい部分では異なるかもしれません。
I feel all doped up from the allergy medicine.
私はアレルギーの薬でボーっとしている。
She was all doped up at the party.
彼女はパーティーでボーっとしていた。
dopeyも同じような意味ですが、必ずしも薬が原因だとは限らず、単なる寝不足でも使えます。
I feel dopey because I haven’t eaten anything all day.
1日何も食べていないせいで、眠い・ぼんやりする。
I get a little dopey after 9 pm.
夜の9時以降はちょっと眠くなる。
dope(スラング)
また俗語っぽい使い方ですがdopeには「バカ」みたいな意味があります。日本語の「バカ」に近い感覚で、そこまで表現としてはきつくない言い方だそうです。
The guy is a dope.
あの男はバカだ。
さらにヒップホップ用語になると「すごいいい、いかしてる」といった意味になります。頭がおかしくなるぐらいすごいといったようなニュアンスでしょうか。
スラング使いで「ダメ・ひどい」と「最高」が同じ言葉になるケースはけっこう英語で見かけます。
The new Jay-Z album is dope.
ジェイZの新しいアルバムはいかしてるぜ。