カタカナでもよく「ロマンティック(romantic)」が使われますが、実際のところ英語本来の意味はよくわからないまま使っている感じもします。「ロマンティックあげるよ」と言われても何をくれるのかよくわかりません。
カタカナでは恋愛的にうっとりするような情景や場面に対して使いますが、ここでは英単語としての使い方を見ていきます。
英語でもほぼおなじ意味ですが、少し幅広くとれます。
romance(名詞)
カタカナで「ロマンス」といえば恋愛ものをイメージします。英語でもこれは近い感覚で「romance」といえば恋愛的なものを指します。
ただし、古い言葉のニュアンス、古い使い方として「romance」には冒険譚、伝奇、空想物語といった意味があります。
物語が理想化、空想化されて、現実離れしたヒーローが活躍するような、作られたような世界観を表す言葉です。
例文は下のromanticの部分を参照してください。
romantic(形容詞)
現代の英語では「romance」は恋愛ものを指しますが、昔ながらの用法が形容詞の「romantic」に残されています。
Titanic is a romantic view of the Titanic sinking.
(映画タイタニックはタイタニック号沈没の空想的な光景だ)
Titanic movie is a romance set during the Titanic sinking.
(映画タイタニックはタイタニック号沈没の間の恋愛ものだ)
映画タイタニックは映画のジャンルとしては「ロマンス(恋愛)」だと思っても問題ありません。
同時にromantic viewとは、恋愛を描いているわけではなく、空想的に美化されたような視点、情景を指しています。
おそらく実際の沈没の場面は修羅場だったとは思いますが、そこにフォーカスするのではなく、空想的で美化されたような部分を映画にしています。
24 is a romantic view of fighting terrorism.
(24はテロとの戦いの理想的、空想的な光景だ)
24 is not a romance.
(24は恋愛ものではない)
テロとの戦いを描いた『24』も緊迫した雰囲気がありますが、本当のテロ対策の現場は映画・ドラマのように都合良くはなく、もっと泥臭いことをやっていると思います。
romanticのほうが、もうちょっと幅が広いので、わくわくするような美化された、物語化されたような、胸がときめく、理想化されたものを指すので、必ずしも恋愛のみではないという解釈です。
2つの三国志
日本でも人気の三国志は、西暦200年前後の中国で起こった歴史的な事実に基づいています。
この物語の根拠となっているものが大きく2つあります。
1つは陳寿によって書かれた歴史書『三国志』で、一般的には「正史三国志」として知られる書物です。歴史書なので淡々と事実が書かれています。
事実を記録しているだけなので、歴史書としての価値はあっても、物語としてはあまりおもしろくありません。
英語ではこちらを『Records of the Three Kingdoms(3つの王朝の記録)』と表記しています。
もう1つは1000年以上後になって編集された『三国志演義』と呼ばれる物語です。
登場人物が善人、悪人と書き分けられ、理想化、脚色された英雄としてのエピソードなどを交え面白い物語として民衆に親しまれました。
英語ではこちらを『Romance of the Three Kingdoms(3つの王朝のロマンス)』と表記しています。
今年で30周年を迎えるコーエーが発売したゲーム『三国志』シリーズの英語タイトルは、そのまま『Romance of the Three Kingdoms』を拝借する形になっています。
この場合は空想的、脚色された物語を指しているのであって、別に3つの王朝(魏呉蜀)の恋愛を描いているわけではありません。
語源の話
語源を調べると、文芸や美術の「ロマン主義(Romanticism)」にたどり着きます。
Romanticism
18世紀頃に盛んになったスタイルで、従来の古臭く堅苦しい古典に反対する形で、恋愛の賛美などを謳ったものを、芸術に投影したスタイルです。
ロマンとは元々はギリシャのローマのことだそうです。ローマ帝国時代に、偉い人達は古典のラテン語を読み書きしましたが、民衆はよくわからないのでロマンス語とよばれる口語を話すようになります。
このロマンス語で書かれた文学がロマンスと呼ばれるようになった、つまり、ローマ帝国時代の大衆文学、ラノベを指すようなイメージでしょう。
民衆が喜び楽しめるわかりやすい話(恋愛や冒険譚)が書かれた言語だったので、ロマンティックという言葉につながっていきます。
日本のロマン主義文学(浪漫主義)でわかりやすいのは『みだれ髪』で有名な情熱的な詩を書いた与謝野晶子などでしょうか。