ビジネス用語でもpending(ペンディング)はよく使われ意味としては「保留」になりますが、もう少し意味が広く審査中などの使われ方をします。何かを待っている状態に近いです。
suspend(サスペンド)も近い意味ですが、こちらは日本人が思う以上に「終わっている、終了している」感覚が強い言葉だといえます。
似ている2つの言葉を比較しながら違いをご紹介します。suspend(サスペンド)については『suspend(サスペンド)とsuspension(サスペンション)の意味と使い方』で基本的な使い方を紹介しています。
pending(ペンディング)の意味と使い方
カタカナのビジネス用語でも聞かれるpending(ペンディング)も日本語にすると「保留中の、審理中の、中ぶらりんになっている」といった感じになります。
単純な動詞としての「pend」はほぼ使われない単語になっておりpendingの形でよく登場します。場合によっては「未解決の、決着のつかない、懸案中の」といった訳も考えられます。
基本的には以下のように使います。
The patent on my new device is pending.
新しい機器の特許は審査中だ。
The verdict in the trial is pending.
裁判の評決は保留中だ。
patent pendingもよくある組み合わせで「特許出願中、申請中」の意味です。
suspend(サスペンド・一時停止する)とも似ているように感じます。suspendの基本的な使い方についてはまとめた記事があるのでご覧ください。
pending(ペンディング)とsuspend(サスペンド)の違い
ネイティブスピーカーに対して「ペンディングとサスペンドはどう違うの?」と質問しても「ぜんぜん意味が違う」と日本人が類似の単語と思う感覚を理解してくれませんでした。
まず基本的な違いとしてはpending(ペンディング)は主語になるものが人間ではなく、保留になっているモノ(契約や審査など)自身が主語になります。
The contract is pending.
契約は保留中だ。
suspendの場合は「人間が契約をsuspendする」のように他動詞の使い方をします。もしくは契約や審査を主語にするならば be suspendedで形容詞として使います。
We will suspend the contract.
私たちは契約を一時中断するつもりだ。
The contract was suspended.
その契約は中断された。
まずこういった語法・文法の違いがあった上で、さらに「意味もまったく違う」という話です。それぞれの日本語の「保留」や「一時中断」で考えてしまうと英語の違いがわかりにくくなるので、いったん日本語訳をリセットしたほうがいいかもしれません。
一時中断と中断と保留の違い
日本語で考えるならば「suspend」は中断する、停止であり基本的には形はどうあれ「終わっている」と考えることができます。
一方のpendingは「保留、未解決の」であると考えることができ、あくまで大きな視点では物事は前進している中で、何かを待っているような状態です。patent pendingが「特許出願中」であることから考えてもまだ「進行中である」に寄った状態と考えることができます。
日本語だと「保留」と「一時中断・一時停止」はどちらも似た感じですが、英語だと根底にある感覚が「pendingはあくまで物事が進行しているが止まっている、待っている」であり「suspendはあくまで終わっている」です。
日本語にすると結局は同じじゃないの? と感じられる例文ができます。
The printer has five documents pending.
プリンターは5つの保留中のドキュメントがある。
The printing was suspended because there was an error.
印刷は中断された。なぜならエラーがあったからだ。
一方で明らかに意味合いが違う場合もあります。例えばsuspendは一時的に停止・中断することで学校や仕事の「停職・停学」なども意味することができます。校長や社長からの指示があり通常行われるべきことが停止されます。
He was suspended from school for smoking.
彼はタバコを吸って停学になった。
pendingは何かを待っているような状態であり、停学や停職は解除されるのを本人は待っている可能性はありますが、保留(pending)と考えると変です。
上にEメールが届いてアイコンの数字が増えていき未読メールがたまっていく状況の写真があります。あれもメールをpendingしている、読むことを保留、先送りしていると考えることができます。しかし、suspend(中断する、停止する)と考えるのはおかしいです。
再開の見込みについて
suspendは「保留する、一時中断する」のような訳があてられます。日本語の「保留する、一時中断する」は再開を前提にしているような言葉です。
ネイティブスピーカーに確認してみるとsuspendは限りなく「停止・終了・中止(stop / end / finish)」に近く、再開の可能性を日本語ほど考慮していない感じがします。結果的にそのまま再開されることもなく終わっていくケースが多いという話です。
一方のpendingは英語でいえば「wait for / depend」のように外部の要因に決定される部分を待っているような意味合いが強くなります。
日本語の「中断する」も感覚的な言葉で「この計画を中断した」といった場合に、再開の可能性をどれほど考慮しているのかは人によります。「この計画を終了した」なら再開の可能性はかなり低くなります。「この計画を一時中断した」ならば、再開の可能性は高くなりそうです。
結果的にsuspendは日本語の「中断する」に感覚的に近い言葉だと思います。「一時中断する」「保留にする」ではなく再開の可能性がより低い「中断する」です。
例えば以下の言葉を比較してみます。「殺人事件の捜査は〇〇している」の意味です。
① The murder investigation is proceeding.
② The murder investigation was suspended.
③ The murder investigation is pending.
①のproceedは進行しているので警察は証拠を探したり、犯人を追いかけたり何か捜査をしているはずです。
②のsuspendedになると限りなくendやstopに近い意味であって、もうこの捜査は終わったことになり、次の事件に取り掛かったりしているかもしれません。
③のpendingだと少し解釈に幅が生まれ具体的には曖昧ではありますが、何か待っている状態であり一時的に止まっていると考えることができます。
suspendは終わることの婉曲のように使われることも多く、契約や企画などに対しては本当は再開の見込みがないけれども、やんわり伝えるためにsuspendを使うといったケースです。ただし学校の「停学」だと復帰する可能性が高くなるのでsuspendする対象との組み合わせによって少し再開の可能性は上下します。