ロングセラー、ベストセラーなどのカタカナは決して意味が通じない和製英語のたぐいではありませんが、英語表現としては使い方がカタカナの感覚と少し異なっています。
人気の商品、最も売れている商品を表す場合にはbest-sellerよりも、best-selling 〇〇といった表現がよく登場します。
実際にニュースに登場した話題を集めながら、〇〇-sellerと〇〇-sellingの使い方の違いを確認していきます。
この記事の目次!
best-seller(ベストセラー)
「ベストセラー」が使えないわけではなくちゃんと言葉として存在しています。best-sellerはカタカナの感覚と同じようにだいたい「本」に使われることが多いです。
しかし、その言葉自体が「最も売れている本、最も売れている商品」を指す名詞なのでbest-seller bookのような形では使いません。
ここではヒラリー・クリントンの自伝『リヴィング・ヒストリー』を例に出します。
Living History is a best-seller.
『リヴィング・ヒストリー』はベストセラーだ。
これらはどこのベストだよ? といった疑問を抱く曖昧な表現にもなりうるので「ニューヨーク・タイムズのベストセラー」「ワシントン・ポストのベストセラー」のように、どこが発表したか、どこがリサーチしたかなどを伴うケースが多いです。もちろん本以外にも使うことができます。
big-seller
big-sellerも使い方としてはbest-sellerと同じで、この単語そのものが名詞なのでそのまま使います。big-sellerは「大きく売れた商品」なので人気商品、ヒット商品と考えても問題ないと思います。
しかしbig-sellerだと人気ではあるものの1位、ベストではなく、他にさらに上回っている商品が存在していることを示唆しています。
His book is a big-seller in Japan.
彼の本は日本でビックセラーだ。
もしくは以下のようにbig-sellerという単語が主語になります。
Other big-sellers in 2017 include Mario Kart 8, The Legend of Zelda: Breath of the Wild, Splatoon 2, and Pokemon Ultra Sun and Moon.
他の2017年に多く売れた商品には『マリオカート8』『ゼルダの伝説:ブレスオブザワイルド』『スプラトゥーン2』『ポケモン:ウルトラサン・ウルトラムーン』がある。
2017年に発売されたゲームソフトとして上の例文にあげた商品達は人気で大きく売れました。しかし、1位は『スーパーマリオ・オデッセイ』だったため「best」と表現することはできません。
best-selling / top-selling
best-sellerは本によく使われるため、本以外で最もよく売れている商品を指す場合にはbest-selling 〇〇やtop-selling〇〇が使われることが多いです。こちらは形容詞です。
どちらも一緒の意味であり、本に対しても使えますが、本以外にも用いることができます。「最も売れた〇〇」といった意味になります。
Living History is the best-selling book by Hilary Clinton.
ヒラリー・クリントンの『リヴィング・ヒストリー』は最も売れている本だ。
Living History is the top-selling book by Hilary Clinton.
ヒラリー・クリントンの『リヴィング・ヒストリー』は最も売れている本だ。
Online shopping site Amazon opened a real bookstore in Seattle. The store holds many top-selling books from the website and Amazon electronics.
オンラインショッピングサイト「アマゾン」が本物の書店をシアトルにオープンした。お店には、ウェブサイトや電子版での多くの最も売れている本がおかれている。
The original Super Mario Bros. for the NES sold 40 million copies around the world, and also holds a Guinness World Record as the best-selling game ever.
ファミコン版スーパーマリオブラザーズは世界で4000万本が売れ、最も売れたソフトとしてギネスブックにも記録されている。
ヒラリー・クリントンの自伝より売れている本はたくさん存在しており、期間や状況を指定していないケースでは「全米NO.1ヒット」のように、ある集計期間、ある集計方法では1位、bestになったといった程度の解釈です。
映画の全米NO.1ヒットも集計期間が3日間などのケースも多々あり、どんな映画でも公開されてすぐは見に行く人がいるので、短い期間でいえばbestやtopになることができます。
これはオリコン1位獲得やAmazon1位獲得に通じるものがあります。
long-selling / long-running
似たような表現ではlong-runningなどがあります。どれも長く続くようなことで、たいてい商品などに使われることが多いです。
長く売られていること、長く続くことは一定の人気があるからであって「長年、愛されている〇〇が」といった意訳も可能です。
The long-running manga will end next year.
長く続く漫画が来年には終わるだろう。
McDonald’s long-running Big Mac continues to be popular.
マクドナルドの長く続いているビッグマックの人気は継続している。
The long-running Karl brand of snack will stop selling in eastern Japan.
長く続くお菓子のブランド「カール」が東日本での販売を終了するだろう。
long-sellingも同じような意味で、ほぼそのまま置き換えができます。しかし言葉の相性の問題で販売している商品(ビッグマック)などに使えます。
McDonald’s long-selling Big Mac continues to be popular.
マクドナルドの長く売られているビッグマックの人気は続いている。
漫画などの作品は続いている(long-running)とはいえるけど、売っている(long-selling)のかといわれると間違いではないものの言葉の相性の悪さがあります。
long-seller(ロングセラー)
カタカナでも聞く「ロングセラー(long-seller)」は、商品そのものを指す名詞なので使い方が異なります。これはbest-sellerと同じ構造になります。
McDonald’s long-seller continues to be popular.
マクドナルドの長く続く商品の人気は継続している。
この場合はビッグマックとは言っていないので、前後の文脈で何を指しているか判断する必要があります。逆にいえば文脈なしで使うと「何の商品だろう?」と疑問が浮かびます。
文章をシンプルにすると以下のようになります。
The Big Mac is a long-seller.
The Big Mac is long-selling.
The Big Mac is long-running.
short-lived
反対の意味ではよく「short-lived」が使われます。こちらは短命で終わってしまったもの、長く続かなかったものを意味します。
The short-lived TV show got many fans from the DVD release.
短命だったテレビ番組はDVDのリリースで多くのファンを獲得した。
McDonald’s Quarter Pounder was short-lived in Japan.
マクドナルドのクォーターパウンダーは日本では短命だった。