レッド・ツェッペリン『天国への階段』の盗作疑惑を晴らす

レッドツェッペリン
 

公開日: 最終更新日:2019.01.14

レッド・ツェッペリンによるロックの名曲『天国への階段(Stairway to Heaven)』が部分的にでもカリフォルニアのグループ「スピリット」からの剽窃ではないかという裁判に決着がつきました。

1971年発売の『レッド・ツェッペリン4』に『天国の階段』は登場し歴代4位の売上記録、600万ドルの印税を生み出したといわれています。

スピリットのギタリスト故ランディ・ウォルフの遺産管財人は印税の一部と、有名な『天国への階段』の出だしの音楽の作曲にスピリットの曲『タウロス』の名義を入れるよう主張しました。

ロサンゼルスで行われた裁判の陪審員団は2016年6月23日に「パクリではない」という判決を下しています。

実はこれは、ファンや関係者の間では以前から噂になっていました。

またスピリットとツェッペリンが一緒にアメリカ・ツアーを行った1年後に『天国への階段』が執筆されたとも言われていて、疑惑を呼んだようです。

問題のパート

争点になっているのは『Stairway To Heaven』の有名なイントロと、『Taurus』の1:35ぐらいの部分からです。

アメリカのバンド「スピリット」の言い分では、『天国への階段』のイントロが彼らの 『Taurus(タウルス)』という曲の一部に似ているということでした。

Led Zeppelin – Stairway To Heaven

Spirit – Taurus

裁判の様子

ウォルフの遺産管財側、裁判で弁護を担当した活気あふれる弁護士のフランシス・マロフィは、陪審員による裁判にかけるほど楽曲が十分に似ていると裁判官を納得させました。審議には値するといった感じです。

しかし、弁護士のフランシス・マロフィはちょっと変わった人で有名なようです。このニュースの案件ではありませんが、別の事件が原因で後に弁護士資格の停止をくらっていました。

裁判が進行中の間、マロフィの攻撃的なマナーは100回を超える異議を弁護団からおこさせ、裁判長からからかわれるほどだったそうです。

この裁判の間、マロフィはレッド・ツェッペリンを「他人の曲を演奏するセッション・ミュージシャン」のグループであると言い放っています。

ジミー・ペイジとロバート・プラントの証言

一方でギターのジミー・ペイジとボーカルのロバート・プラントも共に証言台に立っていますがマロフィの質問にも平然としていたようです。

While admitting to owning some Spirit albums Page testified he couldn’t remember them because his collection consists of several thousand albums.
(スピリットのアルバムをいくつか所持していることを認める一方で、ペイジはそれが思い出せないという。なぜなら彼のコレクションは数千枚のアルバムにもなっていたからだ)

1970年の2つのバンドの出会い、飲んだりビリヤードをした時のことを質問されても、プラントは落ち着いて答えたそうです。

I don’t have a recollection of mostly anyone I’ve hung out with… How are you going to remember one guy when you haven’t seen him for 40 years?
(その時にたむろしていたほとんどの人の記憶はありません。40年も会ってない男をどうやって思い出せばいいんですか?)

ジミー・ペイジについては握手会の話も書いているのであわせてご覧ください。


実際に似ているのか?

自分も聞き比べてみましたが、うーん、確かに似ているといわれればそうかも…という感じでしょうか。

裁判でツェッペリン側は、共通点は「マイナーコードの進行のみ」で、しかもそれは古くから使われてきた古典的なものだと証言しています。

友人にペイジのファンがいるので聞いてみたところ「結局、先に目立ったのが勝ちなんじゃないかな」とのこと。

ツェッペリンはこれまでにも、いくつかの作品で盗作問題が起きています。

『幻惑されて(Dazed and Confused)』という曲もそのうちのひとつです。

その友人いわく「『幻惑されて』のDVDを見て鳥肌が立った。あのバイオリン奏法は誰にもまねできない…いや、誰にでもできるかもしれないけど、それを商業路線に乗せてメディアを媒介に発信した第一人者はペイジなんだ」

バイオリン奏法というのは、ギターをバイオリンの弓で弾く奏法(3:40~)で、当時斬新なものでした。

これも元をただせばペイジのオリジナルではないのですが、そうした弾き方で「最初に目立たせた」ことで、世の中的にこの曲はペイジ、もしくはツェッペリンのものになっています。

ツェッペリンの名曲として世界的な名声を博している『天国への階段』も同じだろうというわけです。確かにそうなのかもしれません。

ちなみにこの『幻惑されて』はフォークシンガーから盗作だと訴えられ、後にツェッペリンのアルバムのクレジットに「inspired by Jake Holmes」と記載されるようになったそうです。

『天国への階段』の話に戻ると、スピリッツのギタリスト、ランディ・カリフォルニアはもう亡くなっていて、訴えたのは遺産管財人です。

カリフォルニアは生前から自分の曲だと主張していたようですが、当時は裁判の費用がなかったとかで訴えられなかったようです。

故人の名誉を守るために始められた裁判で、結局は「盗作ではない」ことが“事実”となってしまった…この成り行きを、草葉の陰からどんなふうに見ているのでしょうか。

「Heart」によるカバー

2012年にレッドツェッペリンはアメリカ文化に貢献した人物に贈られるケネディ・センター名誉賞を受賞しています。

その際に『天国への階段』をトリビュートの形で、アメリカのロックバンド「Heart」のアン・ウィルソンとナンシー・ウィルソンが本人達の目の前で演奏しました。

またドラムを担当したのは1980年に亡くなったレッド・ツェッペリンのドラマー、ジョン・ボーナムの長男であるジェイソン・ボーナムでした。

感動的で圧巻のステージなのでぜひ御覧ください。

レッドツェッペリンもインスパイアされる側

ツェッペリンも世界的に多くの有名バンドに影響を与えています。言い換えるとパクられる、コピーされる側でもあります。

Trampled Under Foot-Led Zeppelin

このあたりも有名な話ですが、この曲などB’zのBAD COMMUNICATIONのギターリフがそのままです。

SPAの記事が面白く楽曲の盗作問題、インスパイアをまとめてくれているのでご紹介しておきます。

ツェッペリン「天国への階段」パクリ裁判勝訴で考える“その曲は誰のものか”(SPA)

Top image: Dina Regine



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