一般的に「last 最後の」「latest 最新の」と訳すのがわかりやすいですが、これらの細かな使い方の違い、使い分けについて解説しています。
何かの最後のものは、最新のものでもあるとも考えることができるので、かぶってくる部分もあるため少しややこしい要素があります。
動詞のlastについては『lastの動詞での意味と使い方、continueとの違い』を、比較級のlaterとlatterについては『laterとlatterの違い』にまとめてあるのであわせてご覧ください。
この記事の目次!
last(ラスト)の意味と使い方
まずlastは「一連の物事の一番最後に起きること」といった意味です。順番的に最後の、一番後のという意味で、finalと近い意味だと考えていいと思います。
日本語だと「最後の」の意味ですが、翻訳的には「最終回」「最終巻」「遺作」「遺稿」などいろんな言い方があるかもしれません。
The last episode of Lost was very disappointing.
『ロスト』の最後の回(最終回)は非常に残念だった。
The Tempest was Shakespeare’s last play.
『テンペスト』はシェイクスピアの最後の戯曲だった。
latest(レイテスト)の意味と使い方
一方でlatestは「一連の物事の最も遅いもの」であり、日本語だと「最新の」と考えてもよく、こちらはnewestと同じような意味だと考えていいと思います。
時間の流れの中で最も遅く登場したものであり、言い換えると「最新の」です。
Tom Cruise’s latest movie made over a billion dollars.
トム・クルーズの最新の映画は10億ドル以上売り上げた。
Baggy pants are the latest fad in the country.
バギーパンツはその国の最新の流行りだ。
I have the latest issue of Time.
私はTIME誌の最新号を持っている。
lastとlatestの違い、使い分け
見方によっては「順番が最後のもの(last)」は「最新のもの(latest)」と同じものを指しています。
先ほどの例文について厳密に言うと以下のように表現することも可能です。
・『テンペスト』はシェイクスピアの”最新”の作品、
・2010年放送の『ロスト』の最終回は物語の”最新”のエピソード
確かに「最後の作品、最終回」は「最新の作品、最新回」であると考えることはできます。
しかし、これらの出来事はとうの昔に起こったことなので、一番新しいことを表す「latest」を使うのは不自然です。
△ The latest episode of Lost was very disappointing.
△ The Tempest was Shakespeare’s latest play.
(最新/latestと呼ぶには古すぎる)
その反対に、物事の一番最新のものを「最後」と呼ぶことはできますが、下の例文に出てくる「映画作品」や「流行りのもの」など、その後にさらに新しいものが登場する可能性がある物に対してはlastはあまり使われません。
現時点では『トップガン マーヴェリック』がトム・クルーズの最新作ですが、それをトム・クルーズの「最後の作品(last)」と呼ぶのは奇妙です。
△ Tom Cruise’s last movie made over a billion dollars.
△ Baggy pants are the last fad in the country.
(最後/lastと呼ぶにはまだ続く可能性が高い)
このあたりの「last 最後の」「latest 最新の」は日本語の語感と同じような感じです。
lastの「1つ前の、この前の、前回の」の意味での使い方
lastは会話の中での「一連の物事のひとつ前のこと」といった意味もあります。この場合、latestは最新のこと、lastはそのひとつ前のことを表します。
A:Did you see the latest episode of Cobra Kai?
『コブラ会』の最新話を見た?
B:Yes, it was much better than the last one.
見た。ひとつ前の話よりずっとよかった。
Tom Cruise’s latest movie made over a billion dollars. His last one made about 800 million dollars.
トム・クルーズの最新の映画は10億ドル以上売り上げた。そのひとつ前の作品は約8億ドルだった。
また、繰り返される事柄での「直近の、この前の、最新の」という意味で使われることもあります。
今の時点から見てlast(最後に起こったこと)は「直近の、この前の」という意味になります。
この使い方は定期的に同じことが繰り返されるような曜日、年、季節のイベントなどに対してよく使われます。
I got a nice present for my last birthday.
私はこの前の誕生日に良いプレゼントをもらった。
What did you do last Wednesday?
この前の水曜日は何をしていた?
He struck out in the last inning.
彼は前の回で三振した。
場合によっては「先週」「去年」と訳しても意味が成立するケースもありますが、水曜日に「Last Monday」といったら一昨日の月曜日を指しますが、水曜日に「Last Friday」といったら先週の金曜日を意味することになります。必ずしも週をまたいでいるとは限らないので少し注意が必要です。
Last Christmas(ラストクリスマス)はいつのことか?
クリスマスの定番ソングになっているWham!の1984年のヒット曲『Last Christmas』は、よく「最後のクリスマス」と勘違いされますが意味としては「去年のクリスマス、1つ前のクリスマス」です。
歌いだしは以下のような歌詞です。
Last Christmas I gave you my heart.
But the very next day you gave it away.
This year. To save me from tears.
I’ll give it to someone special.
歌詞は「去年のクリスマスにあなたに想いを届けた。けど翌日にはあなたは捨ててしまったよね。今年は、泣きたくはないから、誰か他の特別の人に想いを届けるよ」みたいな恨み節になっています。
Last Christmasは「1つ前のクリスマス、現時点から見て最後に起こったクリスマス」であって、仮にこれが12月26日から12月31日の間に歌われていたら「Last Christmas」は数日前に終わった今年のクリスマスを指すことになります。
しかし、歌詞の3行目で「This year(今年は)」は誰か他の人に想いをあげるといっているので、年が明けていることは明確です。したがってここでの「Last Christmas」とは去年のクリスマスを指しています。
last(ラスト)はこの前か? 最後か?
ネイティブが「last 〇〇」と聞いた場合に「この前の? 最後の?」のどちらで解釈するかは、結局は文脈や言葉の組み合わせ次第だそうです。
まず定期的に訪れる曜日や年、季節、イベント(クリスマスや誕生日など)は、日常生活において「最後の」を意味するケースはあまりないので、普通は「この前」で解釈します。
しかし「concert(コンサート)」のように「前回の」と「最後の」のどっちでもありそうなイベントもあります。
例えば亡くなった「マイケル・ジャクソンの」と言われたら最後だと判断するし、現役で活動中の「Official髭男dism」だったら「この前の」と判断します。活動しているのか活動をやめたのか不明なアーティストの場合は、どっちとも判断つきません。
I was at Michael Jackson’s last concert.
(最後のコンサート)
I was at Official Hige Dandism’s last concert.
(この前のコンサート)
I was at Kiss’ last concert.
(判断がつかないケースもある)
「最後の」で使う場合には、基本的には「(その人にとっての)最後の」になることが多いので、his / her / our などの所有格をつけた形で以下のように表現します。
This will be my last drink for the night.
これが今夜の最後の飲み物になるだろう。
If this is my last trip to the USA, I want to eat a hamburger.
もしこれが最後のアメリカ旅行なら、ハンバーガーを食べたい。
Christmasのような定期的におこるイベントであっても文脈を作れば「(父親にとっての)最後のクリスマス」の意味になります。
My father’s last Christmas was spent in the hospital.
私の父親の最後のクリスマスは病院で過ごされた。
My father spent last Christmas in the hospital.
私の父親はこの前のクリスマスを病院で過ごした。
latestは2通りの解釈ができる
またlatestの意味は複雑で混乱を招くため、変わった解釈をされたり、誤解を生むケースがあります。
What was the latest song you heard?
あなたが聞いた最新の曲はなに?
(2通りの解釈ができてしまう)
上の例文は以下の解釈が成立します。
= ① What song did you hear most recently?
あなたが最も最近に聞いた曲はなんでしたか?
= ② What is the newest song that you heard?
あなたが聞いた最新曲はなんですか?
①だったら「今朝にラジオでモーツァルトを聞いたよ」といった答えが成立します。
②の解釈だったら「1週間前に発表された米津玄師の新曲が、自分が聞いた中では最も新譜だね」となります。
「あなたが最も最近に聞いた曲はなんですか?」の質問をするならば通常は次に紹介する「last」を使います。
lastも2通りの解釈ができる
lastも強引に2通りの解釈は可能です。
What was the last song you heard?
あなたが最後に聞いた曲はなに?
(2通りの解釈ができてしまう)
= ① What song did you hear most recently?
あなたが最も最近に聞いた曲はなんですか?
= ②△ What is the final song that you heard?
あなたが聞いた最後の曲はなんですか?
②「あなたが聞いた最後の曲はなんですか?」はもう今後音楽を聞かないといった感じになってしまいます。文脈があれば成立しないこともありませんが、とても不自然なのでそもそもこの解釈は除外されると思います。
よって、ネイティブスピーカーは「What was the latest song you heard?」と言われると大抵「あなたが聞いた最新曲はなんですか?」と解釈して、「What was the last song you heard?」と言われたら「一番最近聞いた曲はなんですか?」というニュアンスだと解釈します。
また答えとしてlatestとlastを使うと以下のように解釈されます。『Sukiyaki(邦題:上を向いて歩こう)』は1962年の坂本九のヒット曲です。
△ Sukiyaki was the latest song I heard.
上のように答えると、1962年以降に作られた音楽は聞いていないことになるので、普通はありえない状況です。
○ Sukiyaki was the last song I heard.
上の答えだと、昨日にたまたまラジオで聞いたから直近で聞いた曲としては成立します。
latestとlastのどちらでも可能な例外
最後になりますが、latestとlastを置き換えても問題ない例外的な言葉もあります。
例えばウェブサイトの「update(アップデート、更新)」は「last update」「latest update」の両方が見られます。
Our last update was on June 11th.
Our latest update was on June 11th.
(同じ意味で、どちらの表記も見られる)
おそらくこれ以外にもlatestとlastを入れ替えても同じ意味で成立する例外的な言葉はけっこうあると思います。