この記事では日本で「イギリス」や「英国」と呼ばれるものが何を指しているのかを整理してみました。
英語で「イギリス」とそのまま言っても通じないからです。
カタカナの「イギリス」という言葉は元々は「イングランド」という国を指していた言葉から来ていますが、現在ではイングランドを含む他のものまで表しています。
UK、ユナイテッドキングダム、ブリテン(ブリティッシュ)など「イギリス」に関連したものは言葉が交じり合っていて混乱するので1つ1つ分類しています。
この記事の目次!
イギリスとイングランドの違い
今日の日本人が「イギリス」または「英国」と呼ぶ国の正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」です。
外務省のサイトでも「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(略してUK)」と記載されているので、直訳したものが正式名称です。
連合王国とあるように4つの国が集まって1つの国家を作っています。この感覚が日本人には馴染みがなくピンとこない部分もあります。
法律も文化も違うし、その国ごとに首都があります。みんなそれぞれの国ごとにアイデンティティがあります。
ワールドカップを見ても「イングランド」「スコットランド」のようにそれぞれの国で代表チームを作って出場しています。アメリカの「カリフォルニア州代表チーム」や日本の「関東代表チーム」ではワールドカップには出られないことを考えても「国(country)」であることがわかります。
この「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」は以下の4つ国から構成されています。
イングランド(England)
イングランド(England)の首都であるロンドンは、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(UK)」の首都でもあります。
「イングランド人、イングランドの」を表す言葉は「English」であり、今日の「英語」という単語がこの国から来ているのがわかります。
伝統的にサッカーやラグビーの強い国であり、国内にはプレミアリーグが存在しています。このイングランドの国旗そのものはスポーツの試合ではよく見かけます。
一般的に「イギリス」といえばロンドンのイメージが強く、ロンドンはイングランドの都市であるため「イギリス → ロンドン → イングランド」みたいになりがちです。
スコットランド(Scotland)
首都はエディンバラ(Edinburgh)ですが、都市の規模は中村俊輔がかつて所属したセルティックが本拠地を構えるグラスゴー(Glasgow)が大きいです。
「スコットランド人、スコットランドの」を意味する言葉は「Scottish」です。民族衣装のキルトやスコッチウイスキーなどで有名です。
近年、スコットランドはUKからの独立・離脱をするかどうかでたびたび話題になります。
ウェールズ(Wales)
首都であり最大の都市はカーディフ(Cardiff)で人口は30万人です。日本国内でウェールズが単独で話題になることはそう多くはありませんが、ラグビーの強豪国として知られています。公用語はウェールズ語と英語です。看板など2つの言語で表記されています。
ロンドン出身のダンに「イングランドの人でも、ある程度はウェールズ語を話せたりするものなの?」と聞いてみると「ぜんぜんわかってないよ」といっていました。まったく違う言葉なのでロンドンの人がウェールズ語を理解できているかといえばそうではありません。
10年ほど前になりますがUKの国旗(ユニオンジャック)にウェールズのデザイン要素が盛り込まれていないので、デザイン案を募集したところ日本からのアイデアも話題になりました。
The new face of Britain? Flag poll results(telegraph)
北アイルランド(Northern Ireland)
首都のベルファスト(Belfast)は船舶の修理を行う世界最大のドライドックがあったり、船や航空機の製造が伝統的に盛んです。タイタニック号が建造された場所でもあり、ガンダムにも「ベルファスト基地」が登場します。伝統的なスポーツはサッカーやラグビーです。
南北にわかれたうち北側だけがUKに加盟しており、統一を支持する人々もおり、これは今でも続くイギリス国内の社会問題になっています(アイルランド問題)
北アイルランドの旗は公的には存在しないので、習慣的にアルスター・バナーと呼ばれる中央に手が描かれた旗か、聖パトリック斜め十字と呼ばれる赤いラインがクロスしたものが使われています。
イギリス(英国)とはどこを指すのか?
カタカナで「イギリス」または「英国」といえば、一般的には「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(UK)」を指して使われます。
しかし「イギリス」の語源はオランダ語のEngelsch(エンゲルシュ)やポルトガル語のInglez(イングレス)にあるとされていますが、これは「イングランド(England)」を指している言葉です。
このような経緯があるので元々は「イングランド」を指していた言葉がなまって「イギリス」となり、現在ではイングランドを含むスコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4か国による連合国家全体を指して使われているので、バランスが悪い言葉です。
たまにUK、ユナイテッド・キングダム=イングランドと勘違いしている人もいて、ものすごい失礼なことを言いかねないのでご注意ください。
スコットランド人は「UKの人」であるといえ、後に紹介する「ブリティッシュ」でもあるとはいえますが、イングランドの人ではありません。
無理やり日本に例えてみる
日本に無理やり例えてみると、以下の様な意識感覚かもしれません。
UK-ブリテン(関西王国)
・イングランド(大阪)
・スコットランド(京都)
・ウェールズ(奈良)
・北アイルランド(和歌山)
感覚的にはこんな感じでしょうか。
京都の人に「関西人」といっても事実なので怒らないですが、京都の人に「大阪人なんだ」といえば、それは間違いですし、たぶん一緒にされたくないと怒る人が多いでしょう。
和歌山人は関西人であるけれど大阪人ではないように、スコットランド人はUKの人ではあるけれどイングランド人ではありません。
United Kingdom(UK)とは?
これも「イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランド」の4つからなる連合国家を指す名称です。日本では「イギリス」と呼ばれています。
United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandを略してUKです。
長いですが公的な場所では省略不可能で、特に北アイルランド部分を省略するのは失礼にあたります。
UKまたはUnited Kingdomと省略するのはある程度はOK、しかしGreat Britainまで言ったなら最後の北アイルランドまでいう必要が基本的にはあります。
これは日本人がこの英語をどこで区切るかといった問題を考えると北アイルランドを省略できない理由がわかります。
United Kingdom of Great Britain / and Northern Ireland
「グレートブリテンのユナイテッドキングダム(連合王国)」と「北アイルランド」
上のように区切ってしまうと「ユナイテッドキングダムと北アイルランド」みたいな区切りで、北アイルランドがユナイテッドキングダムのおまけみたいに感じられます。
そうではなくて英語としての区切り方としては以下のほうが近いです。これは区切り方の感覚の違いでもあります。
United Kingdom / of Great Britain and Northern Ireland
「グレートブリテンと北アイルランド」によるユナイテッドキングダム(連合王国)
ブリテン(ブリティッシュ)とイギリスの違い
UK、ユナイテッドキングダム(連合王国)が政治的な視点によった呼称だとすれば、ブリテン(ブリティッシュ)は地理的な観点からの呼称だといえます。
Britishといえば「ブリテンの人、ブリテンの」の意味なので、つまり「イギリス人、イギリスの」を指します。
グレートブリテン島とは?
右側の大きな島を「グレートブリテン島(Great Britain)」と呼びます。地理的な意味での名称です。
左側のアイルランド島と右のグレートブリテン島、その他の島々を含めてブリテン諸島(British Isles)といいます。
当然、このグレートブリテン島は「イングランド、スコットランド、ウェールズ」は含まれていますが、「北アイルランド」は含まれていません。
ややこしいのは国全体、UK(ユナイテッド・キングダム)と同じ意味で「Great Britain」が使われることです。
以下の写真は2012年ロンドンオリンピックの時に作成されたAdidasのCMで、イングランド代表だったベッカムが登場するサプライズ動画からです。
胸に書かれた国名を見るとわかりますがGreat Britainが国全体、UKを指して使われています。明らかに右側の島にある三か国だけを指して応援しているわけではありません。
日常会話レベルの場合の多くは地理の話ではなく、国の話をしているのであって「ブリテン、ブリティッシュ、グレートブリテン」には「北アイルランド」が含まれると考えていいと思います。
United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandはやっぱり長いので省略が起こりますが、その場合に「UK」と略す以外にも「GB(Great Britain)」「Britain」をとるケースもあり、非常にややこしいです。オリンピックのイギリス代表の「Team GB」などです。
ただし、人によっては「ブリティッシュ」と一緒にされるのを嫌ったり、この表現を政治的に正しくないとする意見もあるようです。
これは4か国すべての人がある程度傾向として感じるそうですが「ブリティッシュ」「UK」として一緒にされるよりも、それぞれ「スコットランド人」「イングランド人」「ウェールズ出身」「北アイルランドの生まれ」のように自分の国にアイデンティティを感じるので、そちらを使ったりするという話です。
このあたりは政治的、行政の呼称と、日常会話レベルでの運用、地理的な分類が交じり合っている感じもあり、人によって意見が変わったりします。
例えば日常会話レベルや上のアディダスの動画のように国について話しているならば「Great Britain」「Britain」はイギリス・UKを指しているので北アイルランドは含まれてきますが、地理の話をしている文脈で「Great Britain」といえば右側の島のみを指しています。
コモンウェルス(Commonwealth of Nations)
イギリスは世界各地に領土を持っていましたが、その中にはアメリカ合衆国のように独立戦争にまでなった国もあれば、カナダやオーストラリアのように現在も昔ながらの体制のまま良好な関係の国があります。
このような緩やかな連合をかつてはブリティッシュ・コモンウェルス(British Commonwealth)とよび、現在はCommonwealth of Nations、会話で単にthe Commonwealthと呼ばれます。日本語ではイギリス連邦と呼ばれたりします。
He played at the Commonwealth Games.
彼はイギリス連邦の大会でプレーした。
It is easier to get a visa if you choose to live in another Commonwealth countries.
他のイギリス連邦の国に住むなら、よりビザの取得が簡単だ。
「イングランド・ウェールズ・北アイルランド・スコットランド」のように政治的、経済的に強いつながりがあるわけではありませんが、あくまで独立した国々として同じエリザベス女王の元でゆるやかに連携しています。
例えばオーストラリア人やカナダ人などコモンウェルスの国の人々がイギリスに住もうとするのと、アメリカ人や日本人がイギリスに住もうとするのでは、ビザの難易度が変わったりするような影響ならば一般人にもありえます。
commonwealth
commonwealthだけでも団体、連邦、連合みたいな一緒に活動しているような状態を指して使うこともあります。allianceとも近い言葉です。
The two countries formed a commonwealth after the war.
その2つの国は戦争のあとでコモンウェルスを作った。
Our churches are a part of a Christian commonwealth.
私たちの教会はクリスチャンの協会・団体に入っている。
また公共の良い状態みたいな意味もありますが、少し古臭い使い方になっています。
A policeman’s job is to protect the commonwealth.
警察官の仕事は公共の良い状態を守ることだ。