アプリ内で「2016年に最も印象にのこった出来事」に関するアンケート調査をニュースとして配信しました。「印象に残った◯◯」を英語にする場合、その内容によって実にさまざまなケースが考えられます。
そこで論争になるのが「impactful(インパクトの強い)」の単語を使うかどうかです。例えば「impactful event」の表記をよしとするかが議論になります。
また「impressive(印象的な)」がよく使われますが、これも多少問題がある言葉だといえます。
スティーブの意見を中心にさまざまなケースを検証してみました。ちなみにこの調査「2016年に最も印象に残った出来事」の1位は「熊本地震」でした。
この記事の目次!
論争があるimpactful
この「impactful」は辞書に掲載がない場合もあり、Windowsの校正機能では赤線が引かれ「間違いでは?」と警告が出ます。
人によってはこの単語にすごくイライラして怒り、こんな英語は存在しない、下手な表現だと主張するケースもあります。
同じ意味を表すならば”powerful” や “influential”などとすべきだと、言う人もいます。
比較的、新しい言葉であって伝統的な英語を話す人からは嫌われる単語である一方、スティーブもそうですが特に問題にしておらず状況を的確に表現できる単語だと考える人も多いです。
使って良い、悪いという結論は出ませんが、最先端で非常に論争の的になる英単語です。
配信されたニュースではスティーブも慎重になって「印象に残った」をさまざまな言葉に置き換えていますが、本当はimpactfulを使いたいそうです。
なぜなら、それが適切だと思うからですね。以下、表現の比較を取り上げてみます。
impactful
The Kumamoto earthquake was an impactful event in Japan.
スティーブはこれがベストだと判断しています。人々の心や精神に対して強い印象を残すような出来事だったという点を伝えています。
What was the most impactful scene of Lord of the Rings?
(ロードオブザリングで最もインパクトフルだったシーンは?)
映画の感想などでは、まさに強く印象に残るようなシーンを指すので、適切だという判断です。
impressiveの意味と使い方
印象的なという意味では「impressive」がよく用いられますが、ちょっと文脈と言葉の相性の問題が出ます。
使い方としてimpressiveはポジティブなことや、人が何かを達成したことなどに用いられます。印象的と考えるよりも「感動的な、素晴らしい」といった意味だと思ったほうがニュアンスが近いです。
What are the most impressive events of 2016?
(2016年に最もインプレッシブだったイベントは?)
したがって上のような質問をした場合に普通は「熊本地震」といった災害は答えとしては出てこなくなります。男子体操金メダル獲得のようなことには使えます。
The men’s gymnastic team were very impressive.
(男子体操の金メダルはとても印象的だった)
ただし本当に文脈によるので以下の文章は成立しないわけではありません。
The Kumamoto earthquake was an impressive event in Japan.
この場合は例えば「日本政府の対応が迅速で死者を最小限におさえた」や、科学者が災害とはまったく別の視点で「今回の地震の大きさは科学的に見ると過去最高だった。地球の偉大なパワーを改めて知った」といった、地震の比較的ポジティブな場面を切り取ってそれを「impressive」だと答えることは可能です。
また映画の感想を聞く場合にも使えます。
What was the most impressive scene of Lord of the Rings?
(ロードオブザリングで最もインプレッシブだったシーンは?)
このように印象的と考えるより「感動的な、素晴らしい」と考えるとニュアンスが近くなります。
make/leave an impression
また「最も印象に残ったイベントは?」を英訳するときに以下のような疑問文は作成可能です。
What events made the biggest impressions in 2016?
What events left the biggest impressions in 2016?
made an impression(心に焼き付ける、強く印象付ける、注意を引く)などの意味があるので、この場合は質問の回答としては「熊本地震」のような災害も想定できます。
left an impressionを使っても同じ意味になり「impactful」などの言葉を避けることができます。
impressiveという言葉がどうしても制約を受けてしまう言葉になってしまいます。
significant
The Kumamoto earthquake was a significant event in Japan.
significant(重要な)を使ってもOKですが、人々の心の中に「印象に残った」のニュアンスが少し消える感じがします。
また未来に対して影響を与えるイベントだった、重要な転換となるポイントだった、ターニングポイントといった感じがします。
What was the most significant scene of Lord of the Rings?
(ロードオブザリングで最もシグニフィカントだったシーンは?)
映画などに対してこの形でもOKですが、なんとなくストーリー・物語で重要なシーンだと感じるそうです。
「あのシーンがあったから、主人公の運命がまったく変わった」といった物語の重要局面として受け止めがちになります。
powerful
The Kumamoto earthquake was a powerful event in Japan.
話題との相性になりますが、地震の話題で「powerful」を使うと、地震の破壊力、建物の倒壊など物理的な話題について話しているように聞こえてしまう点が問題です。
人々の心に印象に残った、というニュアンスが消え失せてしまいます。
What was the most powerful scene of Lord of the Rings?
(ロードオブザリングで最もパワフルだったシーンは?)
映画だとまだ許容範囲で、戦闘シーンや力強さを感じるようなシーンとして受け止められるようです。
何をもって「パワフル」とするかは人によるので幅がある表現になります。
influential
The Kumamoto earthquake was an influential event in Japan.
influentialは「影響力の大きい」の意味なので、言葉の理屈としてはOKです。
問題はinfluentialはポジティブなことに使うので地震との話題にあわない。また自然災害を描写するのにあまり使われない傾向がある単語です。
What was the most influential scene of Lord of the Rings?
(ロードオブザリングで最もインフルエンシャルだったシーンは?)
こう書くと「ロード・オブ・ザ・リングが他の映画に与えた影響」のように受け止められる傾向があります。あのシーンは他の映画にも影響を与えたよね、といった意味での使われ方です。
さまざまな訳語が考えられますが「impactful」がスティーブはベストだと思うので、本当は使いたいといった意見です。
最終的に結論は出ず「impactful」は使うと誰かしらから文句が出る可能性のある表現です。