「〇〇以上」を表す表現はいくつか考えられます。過去に『以上、以下、未満、超えるの英語表現』を書いているので基本的な意味を知りたい方はそちらをご覧ください。
今回とりあげるのは主に「and up」「or more」の違いであり、こちらは似た表現ですが使い方や指している範囲が異なっています。表現としては細かな差なので注意深く取り上げてみます。
101 and upと101 or moreは日本語ではどれも「101」を含み、それ以上を表現しています。しかし英語では明らかな違いがあり、置き換えられる場合とそうでない場合があるので確認していきます。
and upの使い方
「~以上」を意味し、その数字を含めたすべての範囲を指します。おもちゃなどの対象年齢の表示に「for ages five and up(5歳以上)」という形でよく見かける表現です。
This club is only open to people aged 20 and up.
このクラブは20歳以上の人だけ参加できる。
The items in this store are priced $100 and up.
この店の品物は100ドル以上の値段が付いている。
or moreの使い方
「あるいはそれ以上、〜以上」でand upと同じくその数字を含めての数量に対する表現です。
There are five people or more in that room.
あの部屋には5人もしくはそれ以上いる。
I want to buy three oranges or more today.
私は今日、3個あるいはそれ以上のオレンジを買いたい。
and upとor moreの違い
日本語ではどちらも「〜以上」を意味します。
ここで違いを明確に把握するため「or(もしくは、または)」と「and(と同時に)」をまずは正確に訳してみます。
100 or more
100もしくはそれ以上
100 and up
100と同時にそれ以上
少し分かりにくく混乱するので、例文とともに確認します。
His son is 3 years old or more.
彼の息子は3歳もしくはそれ以上だ。
ここでor moreが表す意味は、3歳もしくはそれ以上の年齢のどこかであるということです。3歳かもしれないし5歳かもしれない、あるいは8歳かもしれない、しかしいずれにせよ対象となる年齢は1つだけになります。
一方で「and up」はその数字以上の範囲であれば、あらゆる年齢を同時に指すことができます。
× His son is 3 years old and up.
彼の息子は3歳と同時にそれ以上だ。
and upはその数字以上も同時に指せるため「息子は3歳でもあり4歳、5歳でもある」などを意味してしまいます。
しかし現実にそれはあり得ません。息子の年齢は1つです。この場合はand upで置き換えることはできません。
基本的な話ですが「or」を使い「指輪もしくは時計が欲しい」といえば最終的に欲しい品物は1品です。
「and」を使い「指輪と時計が欲しい」といえば最終的に欲しい品物は2品です。
2つ(複数)指して成立する文脈ならばand upが使えますが、1つしか成立しないならばor moreとなります。
言葉の意味を正確にとれば理屈はわかるかもしれません。
例文1:ドーナツの価格
ドーナツの例文をあげておきます。あるドーナツの価格についてです。
This donut costs $1 or more.
このドーナツの価格は1ドルもしくはそれ以上だ。
×This donut costs $1 and up.
このドーナツの価格は1ドルと同時にそれ以上だ。
普通、ドーナツ一品は1つの金額しか持ち得ないのでand upは使えません。
例文2:主語が複数形の場合
一方、主語が複数の場合は状況が変わりどちらも成立します。
His sons are 3 years old or more.
彼の息子たちは3歳もしくはそれ以上だ。
His sons are 3 years old and up.
彼の息子たちは3歳と同時にそれ以上だ。
息子たちは3歳もしくは4歳、5歳と複数人存在するため、and upでも表現可能になります。
またドーナツの種類がたくさんある場合にも複数の金額を表現できるand upも使えます。
These donuts cost $1 or more.
これらのドーナツは1ドルもしくはそれ以上だ。
These donuts cost $1 and up.
これらのドーナツは1ドルと同時にそれ以上だ。
例文3:金額の支払い
誰かに〇〇円・ドル以上支払わないといけないケースです。この場合はor moreです。
You have to pay him $20 or more.
上は20ドル以上なので、20ドルもしくは100ドル、または1000ドルかわかりませんがあなたは払わないといけません。
× You have to pay him $20 and up.
下がおかしいのは20ドルと同時に100ドル払い、さらに1000ドルを同時に払わないといけないのかといった話になってしまいます。
例文5:微妙なケース
実際には以下のように微妙なケースもあります。結局は解釈次第になってしまいます。
〇 This club is only open to people aged 20 and up.
▲ This club is only open to people aged 20 or more.
この場合は上が正しく、people(人々)に対して、このクラブに入れるのは20歳でもあり、21歳でも30歳でもあることになります。物事が同時に成立しています。
海外でこの手の看板や注意書きがあれば、おそらく上のand upの表記になっていると思います。
下はpeople(人々)は仮に21歳の人が入れば、25歳の人は入れなくなるのかといえば、そうではありません。この意味では文章単体で見ると変です。
しかし、実質はpeopleが指している、呼び掛けているのはYou(あなた)1人だとも解釈できるので、「あなたが20歳もしくはそれ以上であれば」と読めば、or moreでとっても間違いではないと考えることができます。
ただこのケースでor moreは文章としてはかろうじて成立するだけで、違和感があるので普通は使わない表現です。
at least
「少なくとも〜、最低でも〜」で最低限の数字を表現するのに使われます。これでも同じような意味を伝えることはできます。
At least 101 people were taken to the hospital.
少なくとも101人が病院に運ばれた。
You have to pay him $20 at least.
あなたは少なくとも20ドルを彼に払わなければならない。
最低の数字を伝えているだけで、上限については不明です。