EdTech(エドテック/エデュテックとも)とはEducation(教育)とTechnology(技術)をかけ合わせた造語で、2013,4年ぐらいから「EdTechが熱い」みたいな言葉がスタートアップ界隈でもよく聞かれました。
その前はe-learningという言葉も存在していて、置き換わった感じもします。
あまり言葉の定義論争に興味はありませんが、自分の理解ではe-learningがインターネットを活用して勉強や教育を行うといった部分にフォーカスしていたのに対して、EdTechはIOT(モノのインターネット)や最近では人工知能のAIや、VR(バーチャルリアリティ)なども含めてテクノロジー全般を包括していくものだろうと思っています。
このEdTechが来る、来ると言われていましたが、この手のトレンドは次はシェアリングエコノミーだ、AIだ、IOTだ、フィンテックだ、と移り変わるのでバズワード的に扱われる感じもします。
『ざっくり英語ニュース!StudyNow』は、Education(教育)とも思っていないし、Technology(技術)でテッキーなアプリでもないのですが、それでも英語学習業界の末端にいることになっているので、運営しながら感じることを書いてみようと思います。
日本e-Learning大賞の思い出
毎年、夏から秋にかけて日本e-Learning大賞というイベントが行われており、先見性のあるサービスやアプリなどが表彰されています。
『ざっくり英語ニュース!StudyNow』も2014年に応募してみたんですが、書類選考すら通らず1次選考落選という素晴らしい結果に終わっています。
「村上春樹も芥川賞をとってないしまあいいや」と自分を納得させていますが、なんとなく政治力やバズワードが先行するイベントだなといった感じがしています。
たぶん二度と応募することはないんですが、受賞されたみなさんおめでとうございます。
EdTechだけではないんですが、全体的にキーワードが先走っている感じがして、プロダクトがまだまだ名前負けしているような感じもします。今ならとりあえず「AI」って言っとけみたいな。最先端の研究を否定するわけではないけど、まだもう少し時間がかかるのかなといった雰囲気です。「〇〇ラーニング」などが、単なる宣伝文句に成り下がっている感じはすごくしますね。
面白かった記事があったのでご紹介しておきます。
企業として教育分野に働きかけて得た5つの反省点 -KDDI退職にあたっての振り返り-
ナレッジコモンズの記事
たまたま面白い総括記事を見つけて興奮してしまいました。
【番外編】eラーニングマニアが振り返る2016年の5つの潮流
めちゃめちゃ濃い内容でびっくりしたんですが、うなずける部分も多い的確な指摘がちりばめられています。
ぜひ読んでいただきたいと思いますが、この中のエドテックは儲からないという点と無料で続けるサービスの問題については自分自身のサービスに関わる問題なので特に興味深く読んでいました。
カーン・アカデミーやDuolingoなどは無料で提供されるサービスで、途上国や格差の大きいアメリカなどの学習機会に恵まれない子ども達などに、教育格差をなくすといったサービスの設計思想があったように思います。
教育系のベンチャーは財団などの支援を受けて社会的なミッションの元に「無料」でサービスを提供しているところもあります。
日本でも地域格差、経済格差により教育を受けられない人のために安価で提供して、格差を埋め合わせるような性質のサービスは確かにあります。
リクルートが提供する『スタディサプリ(旧:受験サプリ)』などで、地方にいても都内の有名予備校の授業を受けることができます。
しかし、成人向けのサービスになると今日の日本において「お金がなくて英語が勉強できない」といった大人はそうそういなくて、いたとしても圧倒的に少数派です。
そうなるとサービスを「無料」で提供することの位置づけや文脈が、途上国向けの社会的ミッションを背負ったものと、国内成人向けのサービスでは異なった意味を持ちます。
結果として国内の普通にお金がある成人に対して良かれと思って「無料で語学サービスを提供する」ことが、実はものすごく語学学習に対しての離脱者を生み出す要因としてマイナスに働いているのではないか? といった想像も働きます。
では、どうやって儲けるのか?
それは私が教えてほしいところではあります。
結局は儲からないエドテックで、どうやって儲けるのか? という問題に行き着いてしまいます。shcooとかすごくがんばっている感じがするんですが、あれだけのコストと手間暇かけてB2Cだと980円(月額)にしかならないのかといった見てて近寄りたくない難しさがありますね。結局のところBtoBに寄りながら、学校教育などに食い込んで税金の奪い合いをしていくのでしょうか。
それと最終的な課題としては「学習者のモチベーションをどうするか?」みたいな昔からあるような問題に行き着く感じもします。
カセットテープからCD、スマホ、動画になり、ネットで気軽に質問をできる環境が整い、各人にあわせた課題を提供するアダプティブみたいなことが発展しても、抱えている課題の大部分は昔から変わらないような部分も多いです。
テクノロジーの発展によって従来なら脱落していた人々が救われる可能性は確かにありますが、そこって物事が抱える割合としてはけっこう小さいのかもしれません。
平安時代から恋する想いを伝えるのに和歌を詠んだりしていましたが、それが電話になろうがポケベルになろうがメールでもLINEでも、振られる時は振られます。1000年ぐらいたってもあまり変わっていません。
エドテックもテクノロジーの力で振られないようにすることに挑んでいるのと似ている感じはしますね。本当にそこなのか? という疑問は残ります。
2016年のエドテックな出来事
今年の春にエドテック関係のセミナーがあってわざわざ東京まで行ってきました。主催はアスキー、KADOKAWAでレアジョブの斎藤さん、恵学社の岡さん、ポリグロッツの山口さんが登壇していました。
続かない英語学習はテクノロジーで解決できるか?【4/25開催セミナー】
内容のレポート記事も出ています。私も後ろ姿が映っています。
レアジョブはこの中では大きいのでサービスのノウハウ的な蓄積が一番ある感じですかね。
岡さんは英語学習のライザップ的なパーソナルジムで話題になっていましたが元々学習塾系の人で、人前で喋り慣れているのはひと目でわかるし、学習・教育論的な土台としてはいちばんしっかりしています。
山口さんはエンジニアらしく、テッキーな話をさせるとさすがにいろいろ知っているなって感じですね。
質問コーナーがあったので「エドテックって儲かりますか?」とド直球な質問をしたんですが、どうなんでしょうね。レアジョブは上場していますが後発のオンライン英会話も多いし、特にDMMなど敵にしたくないところです。最近、NewsPicksでDMMの亀山会長とレアジョブの中村さんの対談が話題になっていて面白い記事でした。
岡さんはTOEICに特化したパーソナルジムをやっていますが「エドテック儲からない」といっていました。おそらく儲けるには少人数、高単価の傾向しかなくて、ネットよりもリアルの場に寄せていくのではといった私の予想ですが、それは従来の英会話スクールのモデルの延長で、よりパーソナライズ、アダプティプといっていいようなものを想定されているんじゃないでしょうか。
ポリグロッツの山口さんとは少し話をして、このセミナーは4月でしたが冬に六本木で昼飯をおごってもらって、ポリグロッツの事務所にも遊びにいかせてもらいました。大阪であまりエドテック系の知り合いがいないというか皆無な状態なのでいろいろ話ができて楽しかったです。
それから2016年の思い出として渋谷にあったベネッセのエドテックラボというコワーキングスペースが閉鎖しています。
2014年にStudyNowをリリースしたんですが、その頃から情報を知って数回おじゃまさせてもらいました。ちょっとしたことですが東京に行ったときには、アプリを見てもらったり、話をさせてもらったり、手探りでやっていたので随分とああいう場所があるのはありがたかったです。
おそらく原田社長の頃からゴタゴタがあったので、ベネッセもいろいろと事情もあったんだと思います。
こういう世の中の動向を見守りながら、『ざっくり英語ニュース!StudyNow』は自分達のやり方でやっていきたいと思います。