complexとcomplicatedはともに「複雑な」といった意味で使われる言葉です。日本語すると同じになってしまいますが、ネイティブの感覚としては明確に違うそうです。
2つの単語を比較しながら取り上げてみます。
特にcomplex(コンプレックス)は日本語では和製英語ぎみに独自の使い方をされるため、英語学習を始めた頃にはとまどう単語でもあります。
カタカナでも「コンプレックス」は使われていますが、英語とは少し意味が違い、complexは様々な意味を持っています。
この記事の目次!
complex(コンプレックス)の意味と使い方
おそらく最も見かけるのが「複雑な」の意味です。カタカナ語からは想像できない意味なので、英語の勉強を始めたばかりの人は驚かれるかもしれません。
発音はコンプレックスとカタカナに近いですが、名詞が【kɑ́mplèks】で、形容詞が【kɑmpléks】なので、アクセントの位置が変わります。
名詞:【kɑ́mplèks】
形容詞:【kɑmpléks】
complexは「複雑」ではあるけど、別に悪い意味で使われているとは限らない単語です。辞書にも「多くの異なるもの、つながったもので構成されていること」の意味があり、それが特段に悪いといっている感じでもありません。
It’s a complex story.
複雑なストーリーだ。
ネイティブスピーカーが上のように文脈のない文章を読むと、登場人物が多くてストーリーが交じり合うような重厚で複雑な物語(ロード・オブ・ザ・リングなど)をイメージするそうです。
悪い意味の可能性はもちろんありますが、むしろ良い意味で使っているようにも感じるケースがあります。
Shinjuku station is so complex that almost everyone gets lost in it.
新宿駅はとても複雑で、ほとんど全員が中で迷子になる。
もちろん日本語の「複雑だ」に近い悪い意味でも使えますが、必ずしもそんなに悪い意味ではないという点には注意が必要です。
例文に使われている「get lost」は迷子になる、道に迷うの他に命令文で「うせろ!消えろ!」の意味もあります。
カタカナのコンプレックス
カタカナのコンプレックスは「負い目がある、苦手意識がある」といった感じですが、英語にもinferiority complex(劣等感)という言葉があります。
inferiority complex
ただし、ちょっと専門用語の感じもして、カタカナほど「私、◯◯がコンプレックスなんだよね」とはカジュアルには使われない単語ではあるそうです。
また身長にコンプレックスがある場合でも「height complex」などのように言ってしまうと、あらゆる言葉で作れてしまうので、ぱっと見たときに意味がわからないケースもあるそうです。
△ He has a complex about his height.
彼は身長にコンプレックスがある
だったら上のようにaboutを使ったほうがまだわかりやすくなります。
しかし、日本語のコンプレックスに近い概念を表現するならばhave issues(いろいろと問題がある、悩んでいる)などで表現できるのではないかといった意見です。英語のcomplexを劣等感・負い目の意味で使うのは、日本語ほど日常的な言葉ではないという見解でした。
He has issues about his height.
彼は自分の身長にいろいろややこしい問題を抱えている。
She has issues about not getting into Yale.
彼女はイェール大学に入れなかったことに問題を抱えている。
god complex(ゴッド・コンプレックス)
いくつか専門領域の言葉では確かに日本語に近いコンプレックスの意味が存在しています。
例えば英語ではgod complex(ゴッド・コンプレックス)といった言葉が存在しており以下のような用例があります。
Koji has a god complex.
晃司はゴッド・コンプレックスがある。
god complexは自分に全能感、神のような万能の能力があると感じて、他人を見下してしまうような心理状態を指すそうです。
mother complex(マザー・コンプレックス)
mother complexも言葉として英語に存在していますが、定義を調べると「母親を基準に考えてしまい、他の女性に対しても母親のような振る舞いを求めてしまう心理」になります。
カタカナのマザコンはいい大人になっても、母親の言いなりになって自分の意志を持たない、何を決めるのにも母親に意見を求めるような人を指すので、ちょっとニュアンスが異なりますね。
ガンダム好きな人ならわかると思いますがシャア・アズナブルがララァ・スンに対して母親の代わりになることを求めていたのが英語のmother complexに近い関係かもしれません。
どちらにしろ心理的な意味でのコンプレックスの使われ方はありますが、やはり専門用語としての位置づけで、日常会話ではあまり使いません。
complex(名詞:大きな建物)
複数のスクリーンを持つ映画館をシネコン、シネマコンプレックスと表現しますが、英語では略語でcineplexといわれます。
似たような建物・機能が集まってできている施設ですが、単にcomplex=large buildingの意味でもよく使われます。
総合ビルや複合施設(大きなビル群)などに対して幅広く使われており、けっこう漠然とした感じの言葉です。
They are building a casino complex near the sea.
彼らは海の近くにカジノ・コンプレックスを建てている。
We are opening a branch in the shopping complex downtown.
私たちは繁華街のショッピング施設に支店をオープンしている。
商業施設をイメージさせがちですが、apartment complexといった言葉もあり、これはマンション群のようなものを指して使われます。
complexityの意味
名詞ではもう1つcomplexityがあり、これは「複雑さ、複雑であること」といった意味になります。そこまで見かける言葉ではありませんが以下のように使えます。
発音は【kəmpléksəti】です。
The complexity of the human brain is amazing.
人間の脳の複雑さには驚きだ。
He contrasted the simple style with Van Gogh’s complexity.
彼はシンプルなスタイルと、ゴッホの複雑さを対比させた。
complicated(コンプリケイテッド)の意味と使い方
似た意味の単語でcomplicatedがありますが、こちらは何かが過剰であって複雑であるといったややネガティブな意味を持っています。ややこしい、と考えてもいいかもしれません。あまり良い意味での複雑さには使われにくいです。
発音は【kɑ́mpləkèitəd】なので、読み方はコンプリケイテッドやカンプリケイティッドが近いです。
It’s a complicated story.
複雑なストーリーだ。
明らかに理解しにくい複雑さを持った、ネガティブなニュアンスが物語に対して感じられます。
This is a complicated situation.
これは複雑な状況だ。
The answer to your question is complicated.
あなたの質問に対する答は複雑だ。
だいたい日本語の「複雑だ、ややこしい」と同じような感覚で使うことができます。しかし、以下の例文ぐらいになるとやや具体性に欠けます。
She is a complicated person.
彼女は複雑な人だ。
少し抽象的ですが、ちょっと変わった人か理解しがたい人のように解釈される可能性が高いです。
アヴリル・ラビーンの同名のヒット曲がありますが、歌詞を読むかぎりは、事態がめんどくさくなっていく感じの恋愛を歌っています。
Why’d you have to go and make things so complicated?
(なんでものごとをそんなにややこしくするの?)
complicationの意味
complicated(複雑な、込み入った、理解しにくい)が名詞になったもので「複雑にすること、複雑化させる要因、複雑な事態」の意味があります。
発音は【kɑ̀mpləkéiʃən】です。
しかし、この名詞が使われるときはほぼ、医療用語としての「合併症」のことです。
合併症は「ある病気が原因となって起こる別の病気」や「病気の手術などの後にそれらがもとになって起こることがある病気」を指します。
He died from complications arising from a bile duct tumor which he had been battling for at least a year.
少なくとも1年は闘病していたが胆管腫瘍による合併症のため亡くなっている。
病気以外に「複雑な事態」としても使えないこともないそうです。
There was a complication with the shipment and it will be late.
(発送に複雑な事態があって、遅れるだろう)
複雑な事態ってなに? という話にもなり、他にもtrouble, problem, issue, matterあたりで済む問題ではあるので、わざわざもったいぶったこの単語を選ぶ理由がありません。