アメリカが肥満大国になる理由

肥満大国
 

公開日: 最終更新日:2019.12.5

アメリカのマースフード社が自社の食品に「ときどき」「毎日」など摂取を推奨する表示をラベルにすると発表しました。

マース社はアメリカ合衆国の大手食品会社で、チョコレートのM&M’s、スニッカーズ、ミルキーウェイなどの菓子製品、ペットフードのペディグリー等でよく知られています。

ニュースとしては以下の文章です。

American food giant Mars Foods has announced labeling changes for their products that are high in sugar, fat and salt.
(アメリカの大手食品会社のマース・フード社が、砂糖、脂肪や塩分を多く含む商品のラベルを変更すると発表した)

The new labels will advise “occasional” or “everyday” consumption of certain foods to help consumers make healthier choices.
(新しいラベルは、消費者がより健康的な選択ができるように一定の食品を”時々”、もしくは”毎日”と忠告する)

However, the company’s popular candy and snack brands such as M&M’s and Snickers are not included in the initiative.
(しかしながら、同社の人気商品M&M’sやスニッカーズなどのキャンディー菓子類はこの取り組みに含まれていない)

今回の発表はロンドンでしたが、同社の商品が販売されている他国にも同様のラベルを導入する計画があるようで、数ヶ月以内にウェブサイトにもメッセージを掲載、今後5年間でナトリウム、砂糖や脂肪の消費量を減らすことを目標に掲げています。

米国の食品・肥満事情

米国に在住して18年近く、この国が世界の肥満大国2位(1位はメキシコ)である理由が分かるようになりました。

低所得になればなるほど肥満率が高いという調査結果がありますが、その理由は食品の流通事情にあります。

現地のスーパーでは、野菜、果物、鮮魚などの生ものより既製品の方がはるかに安いため、ほぼ1日働きづめで生活をやりくりしているような人達は、どうしても安くて作る手間もかからない既製品や冷凍食品などに頼ります。

現に、スーパーで肥満よりの客のカートを見ると冷凍のピザ、ハンバーガー、パスタ、肉、フライ物や、甘味飲料製品が多いことに気が付きます。

まとめ買いすると安いことがあり、仮にまとめ買いでなくとも1本約3.8Lのガロン売り。コスコ(コストコ)は更にそれを2本セット、米国のスーパーにおける冷凍食品や甘味飲料水の種類の多さは、需要の高さを物語っていると言えます。

何となく高収入の人は仕事で忙しいから料理する時間がないのは同じと思いがちですが、高所得になればなるほどオンとオフをきっちりわけて仕事後の時間を有効に使っています。

野菜や果物を買う人に肥満者はあまり見かけず、面白いことにそういった健康意識の高い人はオーガニック店になればなるほど多くなります。

子どもの食料事情

ジャンクフード

将来を担う子供達の食生活も問題で、保育園児を含めた多くの子供が朝食を学校で食べるのが珍しくないため、1日3食のうち朝・昼の2食を学校でとることになります。

日本の給食のように免許を持つ栄養士がついてメニューを決めるわけではなく、ただの担当者が食の大事さが分からない上層部が決めた低予算の中で食品を仕入れるため、学校食がファーストフードになってしまいます。

飲み物も然りで、子供が飲むのはチョコレートミルクや甘味が多いフルーツジュースです。ひどい場合には公立学校の食堂にマクドナルドが入っていることもあるようです。

一方で裕福層の子供が通う私立には野菜を多く出すカフェテリアがあるという話もあります。

アメリカ人全員とは言いませんが、「フライドポテトや缶詰スープに入ってるトマトが野菜扱い、野菜ピザだから大丈夫」などという観念なので、私の会社の社員が「お茶はコーラより健康に良いから」と砂糖たっぷりの緑茶ボトルを飲んでいるのを見ると、根本的に食の知識がないのだと思わざるを得ません。

遺伝的要素の肥満は除き、一般的な肥満はよく「我慢できず食べ過ぎるのは意志が弱いから、肥満は自己管理ができない証拠」と言われ自己責任と考えられていますが、フロリダ研究所に所属するポール ・ケニー博士は「ジャンクフードや人口甘味料の過剰摂取は、コカイン・ヘロインなどのドラッグが及ぼす影響と同じ」という研究結果を出しています。

ジャンクフードは麻薬中毒のように快楽中枢を麻痺させて従来の量以上に物を欲する状況にし、最後には脳を破壊してしまうという報告もあるほどです。

ジャンクで育った子供が大人になって結婚して自分の子供を同じ食生活で育てる連鎖を考えると恐ろしいことです。

アメリカ政府の方針

肥満対策の一環として、米国の一部で1オンス(=約30ml)に対して1セントの課税がかかる炭酸飲料対象の「ソーダ税」、5%の売上げに更に2%課税される「ジャンクフード税」(炭酸飲料、ファストフード、菓子、揚げ物や脂肪分が高い缶詰等が対象)が、それぞれ2015年の1月と4月から実施されています。

つまり後は税金で制御するしか方法が無いということなのでしょうか。

日本でも安い中国製品への異物混入、違法性のある添加物利用などのニュースは珍しくなくなり、最近ではカレーチェーンの賞味期限切れビーフカツの発覚がありました。

食品業界の競争が激しくなり、より安い食材・食品の流通は広がり、消費者がそれを知らずに購入するようになった日本でも、食文化の欧米化も追い討ちとなりジャンクフード税が他人事とはいえない日がくるかもしれません。

関連する話題として「デブ・太っている・肥満」などに関する表現をまとめた記事がありますのであわせてお読みください。



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