スパイの活躍を描いたミッション・インポッシブル(Mission:Impossible)シリーズに登場する有名なセリフがあります。
Your mission, should you choose to accept it
日本語訳は「そこで君の使命だが」「今回の君の使命だが」といった字幕が表示され、この後に具体的なスパイとしての指令(○○の計画を阻止しろ、○○を奪えなど)が続きます。
この有名な文章には仮定法のifの省略が行われているので文法的な観点から取り上げてみます。
この記事の目次!
ifの省略と語順の倒置
お約束みたいなセリフなので、絶対になんらかの形で登場していると思います。
仮定法の中の「ifの省略」にあたる文法が使われているので取り上げてみます。IFを省略して「もし~だったら」という意味になります。省略せずに書くと以下の文章になります。
Should you choose to accept it.
If you should choose to accept it.
日本語訳をあてると「もし君が(この指令を)受け入れることを選ぶならば」といった感じになります。
IFが省略されるとShouldとyouの位置が入れ替わる(疑問文の形になる)のが特徴です。IFが使われていないように読めるため「もし~だったら」という意味に見えにくい点があります。
これらはフォーマルな格調ある文章に使われる傾向がありwere、had、shouldなどで起こります。
If I were to take over my father’s business, I would make a drastic reform.
Were I to take over my father’s business, I would make a drastic reform.
上はロイヤル英文法からの引用です。ロイヤル英文法には以下の注意書きがあります。
ifが省略されて語順が倒置されている形は、本来は願望を表す独立文に由来するものなので、どのような場合にでも倒置できるというわけではない。この形をとるのはwere、had、およびshouldの場合で、まれにその他の助動詞(could、mightなど)が前に出ることもある。助動詞がないのにIf we knew it…をDid we know it…とするのは今では非標準。
shouldの雰囲気
「~すべき」の意味(義務)で一般的には知られていますが他にも多くの意味があります。
可能性の低いこと、控えめな提案、アドバイス、遠慮した言い回し、断定を避けた表現としてもよく使われますね。mustやhave to, had betterといった「~すべき」と訳される言葉と比較しても、主張や強制力が弱く感じられます。
ミッション・インポッシブルのような場面だと「組織の上部からの指令」という点を意識してしまい、部下に対して高圧的に「君はこの指令を受けるべきだ」と言っているように誤解してしまいますが意味としては真逆になります。
ここでshouldが意味するのは「遠慮した丁寧な言い回し」「断定を避けた表現」と考えるのが妥当ではないかと思います。「指令を受けろとは言ってないが受けてほしいなぁ…」という感じでしょうか。
全体的な雰囲気
IFの省略とshouldを使った文章は総合すると「格調の高い断定を避けた丁寧な表現」になります。お客様への案内文などで見られるかもしれません。
ネイティブにも確認しましたがやっぱりshouldが使われていることが大きく丁寧さを演出しているそうです。
should you accept it(受けてもらえるなら)で意味は伝わるところをshould you choose to accept it(受けることを選んでもらえるなら)と相手に選択権を与えている言い回しも丁寧さを演出しています。
ネイティブスピーカーに言わせるとchooseを入れたセリフのほうがカッコよく聞こえるそうです。
指令のシーンを和訳するならば「もし、君にこの指令を受けることを選んでもらえるならば…」といった遠慮+丁寧の表現が近いのではないでしょうか。
英語本来のニュアンスとしては、指令を受け取るシーンでの厳重で緊張感のある空気、謎の上部組織の必要以上に丁寧で紳士的な言い回しの指令、これらがプロフェッショナルな組織の冷静な態度を表現していると言えます。
全体としてスパイ映画としてのミステリアスな雰囲気みたいなものを演出していると解釈してもいいのではないでしょうか。
仮定法については以下の記事も参考にしてください。
choose関連は以下の記事にまとめています。