ラマダンはイスラム教徒が1か月間行う断食として知られています。
イスラム教徒ではない日本人には直接の関係はありませんが、この時期に中東に旅行に行くとお店などが閉まっているため、思ったように楽しめないケースは聞きます。
今回の記事はアメリカに在住するライターのkumiさんが、ご近所のイスラム教徒の家庭に伺った実際のアメリカでの1日の生活の模様などをご紹介しています。
ラマダンとは?
イスラム教徒が毎年1ヶ月間断食をする「ラマダン」は新月によって開始・終了日が決められ、日の出前から日没まで断食を行うことです。
自己犠牲・鍛錬を経験し、空腹の苦しみを味わうことで飢えた人への共感を育みます。
イスラム教徒同士で苦しい経験を共有することで連帯感を強め、それが多くの寄付や施しに繋がります。
またラマダン中は飲食だけでなく、人に対する憎悪感、喫煙、性交渉などの欲も断つことで自身を清めて信仰心を強めるとも言われています。
アメリカでのラマダン
私は米西海岸在住ですが、会社にいる同僚のインド人男性、子供達が同じ学校に通う近所向かいのパキスタン一家(奥さんとよくおしゃべりをする仲)がイスラム教徒なので、ラマダンの時期になるといろいろ話を聞きます。
彼らから個人的に聞いた話をご紹介します。
まずイスラム暦は太陰暦を使わないことで毎年11日ほど早まるため、毎年開始日が約1週間ずつずれていきます。
ラマダンを免除していいのは病人、妊婦、授乳中の母親、または旅行中でどうしても不可能という場合です。
パキスタンの女性には現在1歳の赤ちゃんがいるので「今年はラマダンするの?」と聞いたところ「去年出産直後でスキップしたから今年は何とかやりたい」という答えでした。
子供のラマダン
2人とも娘が2~3人いる家庭ですが、子供は大体10歳頃からラマダンを始めるそうですが、女の子は生理が始まってからというケースもあるようです。
私の住む地域はアリゾナ州などと違いそこまで暑くなることはありませんが、それでも真夏は35度くらいになることもあります。
家庭により子供の扱いは違うようですが、そんな中で日の出から日没まで水一滴すら許されないというのを10歳の幼い子供にも適用することには驚きました。
しかもこの地域は5月~9月の夏にかけて非常に日が長く、日々変わりますが今はだいたい日の出が午前5時30分、日没が午後10時です。
朝5時から夜10時まで水一滴もなしは大人でも耐えられません。
ふと北欧など白夜がある地域でのラマダンはどうなるのだろうと疑問に思い調べたところ、”日の出・日没とも最後に太陽の姿を明確に確認できた時に断食を開始・終了すれば良い”、もしくは”仕事に支障が出たり立っていられなくなったら、断食を中断していい”となっていますが、具体的な規約を模索中のようです。
そもそも彼らのようにラマダンをしていない子供がいる家庭では、生活のリズムが異なるので大変なことです。
普段から1日に5回お祈りの時間があるイスラム教ですが、ラマダン中は夜11時、午前2時にも祈りの時間があるのを踏まえて、このパキスタン女性の1日を例にします。
ラマダンの1日
夜日没を確認後、夫婦と義両親が食事をします。先に食事を済ませていた子供達を夜10時に寝かせ、夜11時に旦那さんは近所のモスクへお祈りに行き、残る家族は家でお祈りです。
旦那さんが帰宅後、少し時間があり、再び午前2時のお祈り(またモスクに行く場合もあれば自宅でやることも)が終わって軽く飲み食いして寝る頃には午前3時を過ぎています。
旦那さんは数時間後に起きて出勤、奥さんも数時間睡眠で子供達の朝食・学校送り出しを行い、日中家事(とお祈り)。もちろん何も口にしていません。
夕方子供達が帰宅、食事を作り午後7時頃に先に食べさせ、ラマダンの大人達は午後10時になるのを待ちやっとの食事、すぐに子供を寝かせて午後11時のお祈り、の繰り返しです。
自分と違うサイクルで食事する人がいるというのが料理をする人にとっては非常に辛いことでしょう。
奥さんに「食べられないのと睡眠不足、どっちが辛い?」と聞いたところ、しばらく考えてから「1歳児と一緒に昼寝するようにしてるけど、寝られないのが辛いわ」と言っていました。
ラマダンの影響
しかし1ヵ月後には2人とも口を揃えて「最初の数日間は辛いけどすぐに体が慣れて、段々身軽に感じられる。徐々にデトックス効果が出ているのが分かるし、終わるころには心身共に本当にスッキリしている」と言います。
そして数kg痩せていますが、夜中にドカ食いするため人によっては太るケースもあるそうです。
ラマダンが終了した当日にはお祭りイベントの「イド・アル=フィトル」というものがあり、豪華な料理をふるまってラマダンを終えたことを盛大に祝います。
家庭内や親戚同士で集まることもありますが、モスクが小さく大勢の教徒を収容できない所も多いため、市内のコミュニティーセンターや施設、スポーツ・多目的用スタジアムを借りきることもあるそうです。
ザカート
最後にラマダンからは少し話がそれますが、イスラム教徒の五行の1つに「ザカート」という貧困者への寄付行為があります。
高給取りか否かに関係なく、自分の資産から決められた割合を年末に寄付するのだそうです。
例えば年収・貨幣・銀・良いとされる家畜=2.5%、金=5%という具合で、埋蔵財産においては20%も差し出します。
インド人の男性に「それは自己申告?もしそうならIRS(米国税庁)のようにチェック機能があるわけじゃないから、自分から出さない限り誰も分からないということだよね?」と聞いたところ「いや、神は見てるからね」と澄んだ目で即答され、自分の愚かな質問を恥ずかしく思ったことがあります。
イスラム教徒にとって最大の聖地で、人生で一度は訪れるべきといわれているメッカにも行っている彼、さすが信仰心の深さが違うと痛感しました。