すでにネットやテレビなどで散々報道されています。ブルーボトルコーヒーのオープン初日は店内に入るのに3時間以上かかったそうですね。
なぜブルーボトルコーヒーがこれほど人気になるのか?アメリカのコーヒー文化を紐解きながら、キーワードと共にまとめました。長いのでご興味ある方だけお読みください。
写真は参考イメージなので直接は関係ありませんが、本場のブルーボトルコーヒーの店舗の写真で使用可能なものを集めています。
コーヒー界のApple?
(Photo by cmichel67)
ブルーボトルコーヒーはクラリネット奏者だったジェームス・フリーマン氏(創設者/CEO)が音楽の夢を諦めた2002年、彼が35歳の時に小さなガレージから始まったと言われています。
「コーヒー界のApple」と表現される理由は諸説あるようですが、Appleと同様にガレージからはじまっている点、職人気質や独特のこだわり、これじゃなきゃダメだという熱狂的ファンの存在などが理由として考えられます。
ただしネットで調べる限りでは「Apple of coffee」のセンテンスが日本のメディアが取り上げるほど定着している様子もありません。日本向けのキャッチーな紹介文ぐらいに思っておくのが無難ではないでしょうか。
サードウェーブ(第3の波)
(Photo by johnjoh)
アメリカでのコーヒーの歴史を遡ると過去に大きな波が2つありました。
第1の波は19世紀後半で、コーヒーそのものが職場や一般家庭で飲まれ始めたころです。
第2の波は1960~70年以降のスターバックス(1971年開業)に代表されるシアトルスタイルのカフェの流行です。歩き飲みできる濃いコーヒーがアメリカでブームになりました。
そしてブルーボトルに代表されるのが2000年以降から今日の「サードウェーブ(第3の波)」です。
複数のコーヒー豆を混ぜない産地にこだわった「シングルオリジン」や、大量生産せずに1杯を丁寧に仕上げるスタイルが特徴です。コーヒー豆をブレンドしないことで、産地や栽培方法による味の違いをワインと似た感覚で楽しむようになります。
これは大量消費、マニュアル化されたスターバックスなどのチェーン店に対するカウンターとしての側面も持ちあわせています。
焙煎(ばいせん/ロースト)
(Photo by sanfranannie)
コーヒーに詳しい方なら当然の知識だとは思いますが、生のコーヒー豆は味も香りもほとんどなく飲むことができません。生のコーヒー豆に熱を加えることでコーヒー独特の味や香りを生み出します。
このコーヒー豆を炒る行為を「焙煎(ばいせん/ロースト)」といいます。焙煎は専用の機械がありますが、家庭用のフライパンでも可能です。
ステーキの焼き具合に「レア」「ミディアム」「ウエルダン」があるように、焙煎の段階によって名称がつけられています。
浅煎り(あさいり)、中煎り(ちゅういり)、深煎り(ふかいり)。英語では最も浅い「ライトロースト」から、最も深い「イタリアンロースト」まで8~9段階に分かれています。
浅く炒ったのものほど「酸味」が強く、深く炒るほど「苦み」が強く感じられるようになります。
先に説明した「第1の波」の時には「浅煎り」が主流で、私達が喫茶店やカフェで飲む薄いコーヒー「アメリカン」の由来になっています。
「第2の波」のスターバックス、タリーズのシアトル系に代表されるのは「深煎り」です。濃いエスプレッソにミルクを入れたカフェラテなどがブームになりました。
「第3の波」は再び「浅煎り」になります。混ぜあわせない豆を浅煎りし、香りが際立つように新鮮なうちに、焙煎後はすみやかに提供するのが特徴です。ブルーボトルは焙煎後48時間以内という規定があります。
ブルーボトルも最初は焙煎所としてスタートしています。近所のスーパーマーケットに焙煎した豆を卸す仕事でしたが、少しずつ拡大する中でコーヒーを提供するカフェを展開していくことになります。清澄白河の店舗もカフェだけではなく、焙煎所としての役割も担っています。
今後、都内に出店した店舗にはここから自家焙煎されたコーヒー豆が供給されるのではないでしょうか。
著名なIT関係者からの出資
(Photo by cmichel67)
ブルーボトルが注目される理由の1つにIT業界とのつながりがあります。
ブルーボトルに資金を出資した面々は、Twitter創業者のエヴァン・ウィリアムズや、検索大手Google傘下のグーグル・ベンチャーズなどIT業界の有名人が多数います。ビル・ゲイツをはじめITで名を馳せた経営者達が「健康」や「食」に注目する近年のトレンドもありました。
結果的に「最新のIT企業経営者が目をつけるコーヒー店」という話題作りにつながっています。事実としてシリコンバレー周辺ではコーヒーが生活に溶け込んでおり、ミーティングや仕事中にアメリカ人が飲むコーヒーは日本人が思う以上に重要に考えられていた側面があったのかもしれません。
ブルーボトルが創業したサンフランシスコ湾オークランドはITの聖地シリコンバレーにも近く、同時に物流拠点としてアメリカでも最大規模のコーヒー豆の陸揚げ量があったことなど、いくつかの地理的な要因が今日のブルーボトルコーヒーに影響を与えています。
まとめ
(Photo by johnjoh)
駆け足でしたが、なぜブルーボトルがこれほど騒がれているのかをアメリカのコーヒー文化を交えながら追ってみましたがいかがだったでしょうか。
創業者のジェームス・フリーマン氏は日本の喫茶店文化に影響を受けていることを公言しています。1杯を丁寧に仕上げていくコーヒーに対する真剣さ、洗練された日本製コーヒー器具について語っている記事も多く見られます。
特に渋谷、茶亭羽當や銀座のカフェ・ド・ランブルをお気に入りの喫茶店として名前をあげていました。日本、東京を海外1号店に選んだ理由も喫茶店文化との関わりがあったからだそうです。
今後は青山、代官山をはじめ国内に出店予定があるようです。ブルーボトルのコーヒーを口にする時は、アメリカのコーヒー文化に思いを馳せながら飲むと、より美味しく感じられるかもしれませんね。
【Main photo】(Photo by cmichel67)
【参考資料】
Blue Bottle Coffee/ブルーボトルコーヒー(コーヒーショップ)総合83点
西海岸のコーヒー焙煎所「ブルーボトル」日本上陸、変化するサンフランシスコのスタートアップ文化
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