アメリカの予備選挙(primary election)について

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公開日: 最終更新日:2019.12.5

アメリカは1人の大統領を決めるために非常に複雑なシステムを採用しています。2016年のドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが戦った大統領選挙は記憶に新しいですが、その前段階で「予備選挙」と呼ばれる各党の候補者を選び出す選挙がありました。

正式には「United States presidential primary」と呼ばれるもので、ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプを自分の党の代表者として選び出した選挙のことです。

この予備選挙の仕組みも複雑でニュースで配信した時に簡単に調べてみました。

この記事を書いている2017年2月からは向こう4年ぐらい使わない資料ですが、何か役に立つかもしれない人もいるのでいちおう公開しておきます。

二大政党

アメリカは2つの政党が政権を争っている二大政党制です。政治家はどちらかの政党に所属しており、国民もどちらかの政党を支持することになります。もちろん独立候補など政党に所属しない、泡沫候補に近い人もいますがここでは除外します。

どちらの政党の政治家が大統領になるかで、軍備、外交、国内の政治などアメリカという国の顔が変わります。

Democratic Party(民主党)

現在のオバマ政権は民主党で、過去にはビル・クリントン、ジミー・カーター、ジョン・F・ケネディ、フランクリン・ルーズベルトなどが民主党所属でした。

一般的には自由主義として知られ、同性愛容認・宗教多様化容認、死刑廃止などの特徴があるといわれています。

Republican(共和党)

過去にはブッシュ政権、ロナルド・レーガン、リチャード・ニクソン、エイブラハム・リンカーンなどが共和党でした。

伝統的でキリスト教的な価値観を持つ政党といわれ、死刑制度存続、不法移民反対、銃規制反対と古くからのアメリカの保守主義の政党です。

まずは党の大統領候補者を選ぶ

まずは共和党、民主党それぞれ半年以上かけて自分達の大統領候補となる人物を選び出す期間「予備選挙」が始まります。党内の候補者争いと言い換えてもいいと思います。

仲間同士の戦いといった感じで、普段は同じ政党に所属して仲間として協力している人達がライバルとなるため、政治家として違った一面が見れるかもしれません。

この戦いはアイオワ州から始まります。全米でどの他州よりも早く予備選を行うという州法があるためです。アイオワ州は決して大きな州ではありませんが、この結果が後に続く州での選挙に大きな影響を与えるため、非常に重要な開幕戦だと考えられています。

今回の2016年のアイオワでの開幕戦で、話題だったドナルド・トランプ氏は24%獲得で2位に終わりました。少しトランプ氏がクレームをつけたり、ごたごたがありましたが1位はテッド・クルーズ氏です。

全米での共和党の世論調査ではドナルド・トランプが1位で、2位がテッド・クルーズだったので、アイオワの結果は全米での調査と違いまさに「番狂わせ」と呼べるものでした。

予備選挙と党員集会

予備選の期間中、党内の候補者を選び出す方式が2種類あります。各州でどちらか、あるいは両方が行われます。

予備選挙(preliminary election)

州が管理する選挙で、イメージとしては日本の選挙に近いものです。投票所に行き、投票を行います。

党員集会(caucus)

こちらは党が主催する私的なイベントです。こちらは本当にさまざまで、地域の党員が集まって話し合いをするケースや、普通に党主催の私的投票を行ったり、今は知りませんが昔はポーカーみたいなことで決着をつけたりもあったそうです。

ちなみにワシントン州では、民主党が党員集会、共和党は予備選挙を実施します。

この予備選・党員集会を多くの州で同時開催する日があり「スーパーチューズデー(Super Tuesday)」と呼ばれます。

各候補にとっては流れが決まるとても重要な日となり、注目を集めるイベントの1つでもあります。

2月か3月初旬の火曜日に実施されることからそう呼ばれており、2016年は3月1日(火)に、計15の予備選が予定されています。

delegate(代議員)

アメリカの選挙が複雑なのは、今回アイオワの選挙でも有権者は共和党側の2位になったドナルド・トランプや1位になったテッド・クルーズ、民主党側ではヒラリー・クリントンのように、直接、本人に投票しているわけではない点です。

アイオワをはじめ、各州で行われる予定の予備選挙と党員集会で選んでいるのは「私はドナルド・トランプに投票する!」と宣言した「代理人・代議員」です。

「私はドナルド・トランプを党の大統領候補として投票するよ!」と宣言している人に投票するので間接的にドナルド・トランプに投票していることにはなります。

では、何の代理人で代理人(代議員)はどこへ行くのか?

代理人は夏に行われるそれぞれの党全国大会に出席して、そこで改めて宣言したとおりに大統領候補者に投票を行います。

このようにワンクッションの代議員を挟んでいるのが特徴的ですね。

前回の大統領選の数字ですが、民主党全国大会に出席する代議員は4049人、大統領候補の指名に必要な過半数は2025人になります。共和党は2380人の代議員が出席します。

今回のアイオワ州は民主党が52人、共和党は30人が割り当てられています。

州や政党によって違いますが、例えばヒラリー・クリントンは2000票なので代議員2人、バーニー・サンダースは1000票だったので代議員1人といった形式が「比例配分方式」です。

また、1票でも上回れば、その州に割り当てられた代議員をすべてもらえる「総取り方式」があります。

ニュースにあるように人口が大きな州には、代議員の数も多く割り当てられているので、重要な選挙戦になります。

この夏の党大会に出席できる代議員を積み上げていき民主党・共和党の大統領候補が決まります。そして、いよいよ本番の一騎打ちの大統領選挙がスタートします。

大統領選挙

各党の大統領候補者がそろうといよいよ、本当の大統領選挙です。2016年はヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの戦いでご存知のようにトランプが勝利して大統領になっています。

本戦の話はまた複雑な部分もあるのでまたどこかで書きます。選挙用語をまとめた記事もあるのであわせてご紹介しておきます。



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