辞書の英辞郎にも注意事項として記載がありますが「parenting(ペアレンティング)」を「子育て」「育児」と訳すのは語弊があるそうです。「しつけ」は近いかもしれません。
parentingは子育ての中でも、親としての役割、子どもをどのように教育し成長させていくかといった「親業」みたいなものです。
お風呂にいれたり、食事を食べさせたり、あやしたりといった、より作業的なものは「childcare(チャイルドケア)」や「child-rearing」といった言葉になります。
しかし「child-rearing」は英語圏でもそんなに使われる言葉ではないそうなので「childcare(チャイルドケア)」を使えば間違いないと思います。
あらためて個々の言葉の意味から考えてみます。
この記事の目次!
childcare(チャイルドケア)
チャイルドケアは「子どものケア」なので「保育」「子育て」「育児」と考えるのが近いかもしれませんが、英語でも非常に漠然とした曖昧な言葉で、作業的にどこまでといった境界線はありません。
多くの場合は「産業・職種」としてのチャイルドケアと、「作業・概念」としてのチャイルドケアのように、少しわけて使われます。
She works in childcare.
(彼女はチャイルドケアで働いている)
この場合は彼女は保育園、幼稚園などの育児産業で働いているといった意味になります。
Childcare is an important thing to teach in schools.
(チャイルドケアは学校で教える重要なことだ)
この場合は、チャイルドケアは重要な概念なので、学校で科目・授業として教えましょう、といった意味になります。
parenting(ペアレンティング)
名詞のparentingは「親の子に対するしつけ、親業」として使われます。
子どもの人格をどう形成していくのか? といったレベルの話なので、作業としてのお風呂にいれる、食事を食べさせるといった「育児」を越えたレベルの話です。
childcareとは別物なので以下のような例文も成立します。
She has a job taking care of children but she says she isn’t good at parenting.
(彼女は保育の仕事についているが、親業は苦手だと言う)
保育園や幼稚園で働いていて、子どもの扱いがうまいすごくいい先生かもしれないけど、親としての役割は苦手だという意味になります。
北海道の置き去り事件
先日、北海道の山に置き去りにされた子どものニュースが海外で報道された際には頻繁に登場していました。
That is bad parenting.
(あれは悪いしつけだ)
北海道のおきざり事件でparenting(しつけ)とは何かという観点から、日本を分析している記事もいくつかあります。
BBCの記事が面白かったのでご紹介しておきます。
The lost boy and Japan’s parenting debate(BBC)
この事件は2016年5月28日に北海道七飯町の山林で小学2年生、田野岡大和くんが両親に「しつけ」の名目で置き去りにされました。
両親が連れに戻った際にはすでに姿がなく、そのまま6日間、行方不明になっており大規模な捜索が行われました。最終的には無事に保護されています。
両親が最初に虐待を疑われたりすることを恐れたりするのを「Sekentei(世間体)」といった言葉を使って分析しています。
アメリカ在住のライターKumiさんに聞いてみると、見つかったので不起訴になると思うけどアメリカだった両親は逮捕されているのではないか、といった意見もありました。
外に置き去りにするといっても、日本と海外では治安も違うので、海外にはまた別の印象で伝わっている可能性も否定できません。
アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットの離婚
ハリウッドスターのアンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットの離婚問題でも、離婚の原因は噂レベルではブラッド・ピットの「parenting」が原因だと報道されています。
Details are unclear, but rumors are suggesting Brad Pitt’s parenting is a cause.
(詳細は不明、しかし噂が示すところでは、ブラッド・ピットの親業が原因だという)
ニュースから読み取れるのはブラッド・ピットが子どもと遊ばない、育児を手伝ってくれない、といった「childcare」や「child-rearing」つまり作業レベルの話をしているのではないことが感じられます。
より全体としての「育児方針=ペアレンティング」の違いのようなものが、2人の離婚につながっている様子が伺えます。
parent(名詞)
親を指す言葉で当たり前の話ですが単数形がparent、複数形がparentsです。
He is a parent.
(彼は親だ)
They are parents.
(彼らは両親だ)
映画『スター・ウォーズ』でダース・ベイダーの有名なセリフ『I am your father』がありますが、これも『I am your parent』と言っても間違いではありません。言わないと思いますが。
parent(動詞)
動詞では「養育する」の意味もありますが、あまり日常会話で動詞としては見かけない表現ではあるそうです。
They are parenting a small child.
They are parenting a dog.
あまり動詞では使わない前提ですが、人間以外の家族のような犬などを育てていることにも使うことは可能です。
使わない理由は日本語でも同じ感覚で、たいていは「have」などで表現可能なのでわざわざparentを動詞で使う理由がないからです。
「子どもが2人いるんですよ」と言うことはあっても、日常会話で「子どもを2人、養育してるんですよ」と言う必要があまりありません。
逆に犬などに使うと何か特殊な事情があるのかなと思われる可能性もあります。
parental
「親の、親にふさわしい、親が与える」などの少し漠然とした意味で使われることがあります。
Punishment is a parental problem.
(おしおきは親の問題だ)
洋楽のCDのジャケットなどにはよく「parental advisory」の黒いラベルが貼られているのを見ることができます。
未成年に相応しくない歌詞・表現(暴力・性・麻薬)などが含まれている場合に貼られます。